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【大海原を越え、黄金の新大陸に轟く大冒険活劇!】小笠原生まれの兄弟が一攫千金を夢見て向かったのは、ゴールドラッシュに沸く西海岸。新天地で待ち受けるのは大悪党との対決だった!
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桑港特急 山本一力著 若き兄弟の冒険と成長 爽快に
2015/3/1付日本経済新聞 朝刊
山本一力の新作は、平和な父島と、ゴールド・ラッシュに湧くアメリカを主な舞台に、日本人の若き兄弟の冒険と成長を描いた、爽快な物語である。従来の山本作品を知る人には、異色作に見えるかもしれない。だが、読んでいるうちに違和感はなくなっていく。いつものように、人の心を細やかに描きながら、多数の登場人物を躍動させているのだから。
江戸末期の文政年間、小笠原の父島に漂着した日本人女性のみすずは、アメリカ人の元航海士ジム・ガーナーと結ばれた。そのふたりの間に生まれた、丈二と子温の兄弟は、楽園のような父島で、すくすくと成長する。だが、数奇な運命からアメリカの捕鯨船に乗り込んでいた日本人ジョン・マンジロウと出会ったことで、外の世界に憧れるようになる。
しかし、彼らの目指した新天地は、ゴールド・ラッシュで、騒然としていた。アメリカへの事業進出を考えている中国人チャンタオの配下のルーパンが開いた、桑港(サンフランシスコ)の洋品店で働き始めた兄弟は、創意工夫と誠実な仕事で、周囲に認められていく。ところが、そこに殺された妻の仇(かたき)を狙う腕利きガンマンのリバティ・ジョーが現れたことで、彼らは大きな騒動に巻き込まれていくのだった。
未知の世界に憧れ、そこに踏み出していくのは、いつの時代にも変わらぬ、若者の特権である。心を躍らせながらアメリカに向かう丈二と子温の姿は、若い読者には共感を、年配の読者には郷愁を呼び起こすであろう。
しかも彼らが関係することになる、リバティ・ジョーの復讐(ふくしゅう)劇が痛快だ。元賞金稼ぎのジョーは、悪逆無道な仇に滾(たぎ)るような憎しみを抱きながら、冷徹に策を練り、必勝のフィールドを作り出す。クライマックスの激しい争闘は、西部劇そのもの。映画を観(み)ているかのように、ありありと場面が浮かび上がってくるのである。
さらに、壮絶な戦いを見聞した果てに、兄弟がたどり着く境地も見逃せない。幾つもの生々しい現実により、世の中の良い面と悪い面を知ったふたりは、あらためて父島を楽園にした父母に思いを馳(は)せ、その凄(すご)さを実感するのだ。地道な営為の積み重ねこそが偉大である。言葉にしてしまえば、よくある人生訓だろう。でも、波瀾(はらん)万丈の物語を経たからこそ、前半で丁寧に綴(つづ)られてきた、父島の描写が光彩を放つ。ここに作者の小説が持つ、何物にも代えがたい力が、表現されているのだ。
(文芸春秋・1650円)
やまもと・いちりき 48年高知県生まれ。作家。著書に『あかね空』(直木賞)など。
《評》文芸評論家 細谷 正充
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続編が読みたいと思った。
江戸時代末期、小笠原に移り住んだ元米国人捕鯨船員と、駿河から漂着した女性の間に生まれた兄弟が、ゴールドラッシュに沸く桑港(サンフランシスコ)に渡り、成長してゆく物語。
海、冒険、貿易、金、開拓、大陸横断鉄道、ならず者、ガンマン、そして正義の復讐劇といろいろなエピソードがテンポよく繰り広げられ、わりと厚い本なのに一気に読んでしまいます。
そして、なお、続編が読みたい、この、兄弟はどうなるのか?そして、ジョン・マンはどうなっているのか?桑港の発展と登場人物たちの将来がとっても気になる。
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旅をする少年の成長譚に加え、それを見守る大人たちと悪者という、十五少年漂流記以来の冒険小説の王道の設定と期待を裏切らない展開なのだが、やや素直過ぎる感あり。
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江戸末期、小笠原出身の兄弟の夢とロマンの冒険活劇。著者らしいノリとテンポでページをめくる手が止まりません。あの「ジョン・マン」が重要な役どころで登場しているのには思わずニヤリとさせられました。
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これってジョンマンの取材のなかから、追加に書かれたのかなぁ。後半復讐場面がメインになってくるが、前半の冒険物語からの流れにちょっと違和感を感じた。
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2017.06.04
久々の山本一力さんの本。ジョンマンと被るけど、同じ時代を生きた人として面白かったわ。
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長いなぁ!と思いつつもそこは一力さんだからと信頼して読んで行くわけだが…600ページ近くも読んで残ったのが「桑港」の意味だけとは。
ペーパーバック調の想定と雰囲気ある表紙イラスト、そしてこのタイトルときたら否が応でも期待が膨らむのだが小笠原移民二世の兄弟の冒険物語と思い込んで読み進めるもストーリーはあれよあれよと違う展開に。
鯨油ラッシュからゴールドラッシュへエルドラドは海から陸へと変遷しただけにとどまらずメインは西部劇ばりの復習劇とてんこ盛りの内容に食傷気味は否めなかった。
冒頭のコンセプトのままで読みたかった、残念