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司馬遼太さんと言えば、どうしても壮大な歴史物、例えば「竜馬が行く」などが思い浮かびますが、一方で「果心居士の幻術」などに代表される伝奇小説もたくさん有ります。これは伝奇小説の系譜です。
解説には高橋克彦さんが「圧倒的な傑作」と評していますが、そこまでは。。
確かに面白いのです。でも主人公の仙八が、あまりに状況に流され、どうにも頼りなさ過ぎますね。その分、こうした物語に必要な活力が弱すぎるように思います。ただ、流石に司馬さんだけあって他の登場人物は魅力的です。特に男女さえもはっきりしない蘇一官は魅力的です。
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鄭成功について読みたいと思っていたが、由井正雪と同時代とは言え結びつけるのは虚構と解説にある。初に「この小説は由井正雪が主人公」と言うが、真のヒーローは鄭成功。主人公・浦安仙八は流されているようでもあり、仙将軍と称えられるほど勇猛狡智でもある。彼でも蘇一官という女体かもしれない不思議なキャラに惑わされた。人物の大きさが魔術を為す。若書きであるだけ性戯の魔術性を信じてるような。「倭国人は義によって命を捨てて名を遺すことを知らない」と言われても国外戦争は懲り懲り。
大名坊主・松平能登守は所領を返上して支配階級の規律に異様な警告
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登場人物がみな胡散臭く、誰にも好感が持てなかったのが低評価の原因。
話は、一応目的はあるものの、フワフワしていてよくわからない。
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鄭成功や由井正雪が生きた時代、徳川幕府が完全に安定する前の微妙な時代を描く。
馴染みの薄い時代なので新鮮なのと、幻術渦巻くファンタジー全開の世界観が楽しくて一気読み。
「浪人は生きていること自体が悪いのだ」「小役人ですら傲慢な政権は勢いがある」というセリフが印象に残りました。
尻切れトンボの結末は、まぁしょうがないか…
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雑誌連載は1968年。文庫は初版2003年。全集にも未収録。道理で読んだことないわけだ。
内容は「韃靼疾風録」の意匠に「妖怪」の幻術味をプラスしたような構成。大坂牢人の子•浦安仙八は、妖しい妖術を操る"大濤禅師"の手によって軍学者•由比正雪の元に送り込まれる。幕府転覆を画策する正雪は、仙八を中国に派遣し、大明帝国復活を掲げて戦う国姓爺•鄭成功を支援する。鄭成功勝利の暁には、大艦隊をもって一挙に徳川幕府を倒す。その密約を取り持つのが大濤禅師その人である…。
司馬遼太郎がデビューから書き続けていた"幻想的な歴史ロマン"は、「妖怪」やこの「大濤禅師」辺りで打ち止めになる。実際、この作品連載中には「坂の上の雲」の連載が始まっている。その後の"調べて書く"スタイルへの過渡期の作品だったのだろう。それだけに内容は痛快。歴史的事実を豊かな想像力で変幻自在に物語を紡いでいる。その分、後から書かれた「韃靼疾風録」の習作的な立ち位置にも見える。全集に収録しなかったのは、案外、その辺に理由があるような気がした。