紙の本
もう手遅れ?
2015/10/25 00:33
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アストンマーチン - この投稿者のレビュー一覧を見る
老人をターゲットにした詐欺、犯罪はこれでは永久になくならない。犯罪者の準備や組織は強力無比であるのに対し、被害者は弱者で手の打ちようがない。老人は増えるばかりだし対策はもう不可能なのか。
紙の本
自業自得、因果応報なのか?
2019/05/02 14:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とも - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKで放送された「ドラマ詐欺の子」の基となり、著者が取材協力した番組である。
「老人喰い」・・・なんと衝撃的なタイトルだろう。とはいえ、食い物としている輩が居ることは確かである。
騙す方が悪いのか・・・詐欺である以上、騙す方が悪い・・・全くではある。
しかしそこに至るまでの周到な準備は、まるで企業の様にも窺える。
電話を掛ける「かけ子」、現金を受けとる「うけ子」などなど、チームワークと役割分担は単に捕まらないためだけでない。寧ろ、作業効率や同僚との競争のため、搾取という目的のためにはノルマを課し、収益力を向上させるためにあるように思った。今でも同じような事がされているのかどうかは不明だが、保険の営業や銀行の融資の競争と似ている。
違うのは「犯罪」であることと、分業故に本体(文中に出てくるオーナー)まで捕まるような事は難しい。
個人情報が人から人へというのは今は昔である。情報はネットワークを介し人の手へと渡る。悪意のあるなしに関わらず、個人情報が漏れたとき「悪用された形跡はない」と他人事のようにいう。
しかしこれらの情報が集約され、紐付けされているとしたらどうだろうか?
話は戻るが、これを生業としている人達は、身内が同じように搾取されたらどう思うのだろう?搾取される方が悪い?信じた方が悪い?
因果応報という言葉がある。いつかは自分に還る。他人を騙し搾取した金など身に付くはずもない。必ずいつかは報いをうけるのだ。
如何に犯罪者が犯罪という意識を棄て、洗脳されて行くのか。何故その様な事になるのか?答えは至って簡単で、報酬(金だけに非ず)があるからである。即ち「歓び」でもある。目の前に成功者(いわばチームリーダー)が居れば、それに対しての憧れが芽吹くのも無理はない。
それを見た搾取者たちは「カッコイイ」と思うのだ。
用意周到された問答集(スクリプト)と、名簿という情報源。これらはまるで訪問販売や電話勧誘のやり方を模倣する。
挙げ句、参加するものたちに「如何に高齢者から金を巻き上げるか?」を自然と考えさせ、タンス預金を奪う方法を模索する。最近この手の事件がマスコミを賑わせているが、書いてあることと近いやり方なのはただの偶然であろうか?
最近では拠点を海外に移し、日本に向けての同様の犯罪が増えているようだ。今はインターネットさえ繋がれば、どこでも可能なビジネスだとも言える。しかし一方で同業者が増え、優秀な人材の引抜き合いもあるようで、実際のところ「人を育てる難しさ」も窺える。
いわゆる反社会の人間がプレイヤーを派遣し、金を稼がせる。資金繰りには困らないという。
如何にして『老人喰い』を無くせるか。
最後に著者は、若い人に「与え育てること」と締めくくる。
本著が刊行された2015年から数年が経ち、働き方改革や総活躍社会といわれ、年号も平成から令和へと変わった。この新しい時代に、金のある人々が将来を未来を背負う若い人に投資をし、育てることに真剣に向き合うべきではないかと思うのだ。
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マンガ「ギャングース」の作者なので内容は重複している所が多い。活字版ギャングースと言った感じで、オレオレ詐欺の現場を詳細にレポートしながら、物語風にしてエンターテイメント性も兼ね備えている。
「再貧困女子」ほど、その背景に対する考察が深くなかったのが惜しいところ。
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「詐欺と疑われていても金は取れる」の理屈。見事。相手の手口を知らないと、まず太刀打ちできない。「騙される方が愚か」という人は、後年ブーメランが刺さる可能性、大。ブラック研修の描写、過去を思い出し、読みながら笑ってしまいました。ブラック研修を経てきた人生だったんだ、と。(「㈱詐欺本舗」にいたことはありません) 彼らを現代の義賊。あるいは好漢、と評するのは持ちあげすぎでしょうか。現れるべくして現れた組織だな、と。いろいろな意味で「梁山泊」とダブって見えます。
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偶然にも先回読んだ最貧困女子と同じ作者。他の著作を見ると、こういった社会から見え辛い層に焦点をあててルポしてる方みたいですね。
で、この本では特殊詐欺(おれおれ詐欺とか)をやっている側の人物像、経歴、商売?の実態、なぜやっているか、その仕事についてどう考えているか等々について書いている。人物像とか経歴に関しては大凡想定してた範囲におさまっていたけど、びっくりしたのは高度に組織化・専門化されたグループの実態、やっているメンバーのモチベーションの高さと法を犯している(悪いことをしている)という認識の低さ。文中に出てくる実行者のセリフ「扱っているものが現物か架空かだけ」まさにこんな感じ。初心者はトレーニングを受け、現場デビューし、売れるシナリオをさらに磨きあげ、実力のある者はマネジメントをまかされと中身は普通の営業主体と全く変わらなく、そして得られる収入は桁違い。
これじゃひっかかる人は減らないなぁ、やる側にまわる側も減らないなぁと思った。
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平成27年5月12日読了。当書を読むまでは老人狙いの特殊詐欺犯など、タコ殴りにして半殺しにあわせれば良い、という認識であった。現場プレイヤーの育成研修の件を読んでいて、何となく韓国映画『シルミド』で描かれていた、犯罪者集団を徹底したスパルタ教育で屈指の殺人マシーンに育成する件を思い出した。現代の鼠小僧か、石川五右衛門かといったところだが、確かに老人が富み、若者が幾ら努力しても報われないこの国の失政が全ての元凶であると思わずにはいられない。
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詐欺師を要請する講座の話、凄いテンションを感じた.貧困層に属する若者をそこまでアクティブにできることは、正直に言ってとても素晴らしい.目的がやや逸脱していることは承知しているが、そこまで成長する若者も立派だ.不要な金を持っている老人からあぶく銭を取り上げることは理にかなっているのではないかと、ふと考えてみた.私にはこのようn電話は来ないだろうが...
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オレオレ詐欺に代表される、高齢者を標的にした詐欺のルポ。そのあまりに考えられたシステムに驚愕するとともに、それが産まれる背景を分析。
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老人喰いを正当化する説得力に、納得させられてしまう若者が多くいるのは分る気がする。老人喰いに対するモチベーションの高さを、別の方向に向かわせる事ができないことが残念。
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貧困から風俗とかAVに流れる人たちを書いてた人が振り込め詐欺?と思ったら、年寄りが金を貯め込んでるから、貧乏な若者世代がその金を狙わなくちゃならない、という論点だった。全くそう思う。うちの親ですらそう言うもんな。大金を持ってる奴から取っても構わない、昔ならモーレツ社員としてやっていけた人間がこんなことをするしかない、もったいない、と言うのが筆者の結論。ほんとブラック企業で私はやっていけないし、この自己啓発セミナーみたいな研修にも耐えられない。でも昔はこのセミナーも流行ってたんだもんな。同じような人材が今もいるってことだ。しかし、そんなに稼いでどうする気?とも思う。最後にも書かれてたけど、結局身持ちを崩すのが関の山じゃね。しかしどういう人が金主なんだろうな。そして筆者はどうやって番頭やプレイヤーの人と知り合うんだろう。
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高資産の高齢者から、社員や上層部が逮捕されずに、できるだけ効率的に多くの現金を騙し取る。高いモチベーションとテクニックで組織的に行動。被害額より、優秀な若者たちを追いやったことが、日本社会にとっての損失。
ネズミ小僧やルバン三世や仕掛け人。土壌はあるわけだ。
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● P.10
大きな誤解を解いておきたい。高齢者を狙う犯罪とは、高齢者が弱者だからそこにつけ込むというものではない。圧倒的経済弱者である若者たちが、圧倒的経済強者である高齢者に向ける反逆の刃(やいば)なのだ。
● p.13
どんなに防犯対策を施そうとも、この「階層化社会」がある限り、老人喰いはなくならない。特殊詐欺犯罪がなくなったとしても、彼らは別の手段で高齢者に牙を剥き続けるだけだ。
● p.40
詐欺の現場プレイヤーは下見屋で擦った(情報強化した)名簿を使うことで、「相手が半分詐欺だと気づいても、詐欺だと確信していても、金を取れるようになった」というのだ。(略)
強化された名簿に「暴力耐性なし」と記されたターゲットにとって、キレ役の言葉はまさにその暴力を予感させるものであり、詐欺と断定して電話を切った後の暴力による報復をも予感させてしまうのだ。(略)
被害者も落ち着いて考えれば分かろうものだが、不安にさいなまれた結果「でも1%でも報復の可能性があるなら、お金を払って二度と電話がかかってこないようにしたい」という気持ちの方が大きく働いてしまう。
● p.45
詐欺の加害者側の取材の中でとにかく痛感したのは、「詐欺に遭う者は愚かだ」という言説がいかに愚かかだ。そうではない。騙す側が、圧倒的に洗練されているのである。詐欺組織は徹底的に管理された高度な集団で、プレイヤーたちがこうした役回りの技術を徹底的に磨き上げ、それを支える名簿の精度が急速に進化したから、被害は減らない。
● p.48
詐欺系名簿業者の男は「単に高齢者というだけの名簿で詐欺をかけた場合の成功率は0.25%程度だが、情報強化した名簿では成功率40%もありうる」と言う。
● p.150
共通して詐欺研修者に植え付けられるのは、以下の「大義名分」だ
・詐欺は立派な「仕事」である。
・店舗に編入されるプレイヤーは、編入されるだけでも選ばれた人間である。
・詐欺は犯罪だが、「最悪の犯罪」ではない。なぜなら、「払える人間から払える金を奪う」商法であり、詐欺被害者が受けるダメージは小さなもので、もっと悪質な合法の商売はたくさんあるからだ。
・詐欺で高齢者から金を奪うことは犯罪だが、そこには「正義」がある。金を抱え込み消費しない高齢者は「若い世代の敵」「日本のガン」である。
・ここで稼ぎぬくことで、その後の人生が確実に変わる。
● p.159
日本の高齢者に富が集中し若者が食えないのは、厳然たる事実。そんな現代日本で、彼らはその高齢者を喰らうことの大義名分を洗脳され、むしろ自らそれを信じ込む。そしてブラック企業以上に厳しい選抜に勝ち残ることの自己肯定感。身近な成功者像であり圧倒的な「男の求心力」「再配分の美学」を持つ上層部に心酔し、そこに属することに強い選民意識を得る。
これではやはり、老人喰いがなくなるはずはないのだ。
p.237
高齢化社会とは「生産力を失った多くの高齢者を、少数の若者が支える社会」。そして、かつてないほどに拡大した若者と高齢者の経済格差��、努力しても報われることがあまりに少ない現代の若者の世界観から、必然的に「支えることより奪うこと」を選ぶ者は生まれた。これが老人喰いだ。(略)
ただひとつ言えることは「奪われる前に与えていれば、こんなことにはならなかった」ということだ。
本来、富める高齢者がやっておくべきだったのは、みずからの子供や孫に教育費や労力を費やすことのみならず、将来的に自らの世代を支えてくれる「若い世代全体」に金と手間をかけて育て、支えてくれるだけの環境と活力と希望を与えることだった。だが現実は、まったく逆だった。
今後の老人喰いを収束に導く方法は、防犯対策でも彼らの手口を啓蒙することでもない。ただ、これからの世代に「与え、育てること」しかないように思われてならないのだ。
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平成27年度、特殊詐欺の被害総額は476億円、これは2017年度の電子雑誌の市場規模予測(430億円)より少し大きく、2014年度のアダルトビデオの市場規模(512億円)より少し小さい。
要するに真っ当な市場なら楽天がコボっちゃおっかな、と食指が動き、あるいはそこから他産業に進出するDMMみたいのが現れるかもしれないくらいの産業規模なわけだ。
著者は何度か畏怖を込めて産業と呼ぶ。それはここに集まる人材がいかに必死で真剣に「業務」に取り組んでいるかということを目の当たりにしているからだ。それらが彼らの中で正当化されるためのロジックの紹介もあるが、もちろん著者はそれにならうわけではない。著者はただただため息を吐く。なんだって僕らの社会は彼らをほっといているのか。もったいない。
中身は物語風なところもあって、ちょっと面白く読める工夫があるわけだが、これ著者が原作してるギャングースのプロットの一部なのよね。マンガも読んでた人間としては星3つで。
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2016年3月8日読了。振り込め詐欺の手口と対策を知りたくて軽い気持ちで読み始めたのだけれど、その手の込んだ巧妙なやり口と組織化された内情に驚いた。劇場型詐欺は知ってたけど高齢者の個人状況を下調べした名簿まで作られてるなんて…そりゃ騙されるわ。詐欺だと分かっていても被害者の恐怖心を煽ってお金を払わせる自信があるなんて恐怖でしかない。しかしこういった詐欺現場の詳細な状況以上に、金を持った高齢者はもはや人とも思えないとまで思わしめる若者達の心の内にある停滞感・閉塞感・失望・諦観の強さに慄いた。老人喰いは決してなくならないのは確かだと思う。明日は我が身、心して備えようと思った。ただ、プレイヤーである彼らの圧倒的なモチベーションの高さは見習いたいところもあるなと正直思ってしまった。
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老人喰いというのは、振り込め詐欺に代表される高齢者をターゲットとした詐欺のこと。
本書は、騙される側ではく騙す側の事情を取材したルポ。
驚いたのは、詐欺をしている若者たちの素性である。
彼らは不良とばかり思っていたが、実は大卒の普通の若者もいる。
そんな彼らが何故詐欺に手を染めるのだろうか。
一つには現場の洗脳がある。
いかにも詐欺は大した犯罪ではないかのように言いくるめられる。
お金を持っている人から搾取することと、貧乏人から搾取することどちらが悪いかとか、富の再分配とか、「貯金ゼロの人間を騙して200万円のローンを組ませるやつがいる。テレビを見てみろ、効くかどうかも分からねえ怪しげな健康食品がすげー値段で売られてる」(p136)これらの詐欺まがいの商品を引き合いに出して、彼らの理論をぶちまける。
そうすることにより、若者たちの罪悪感は薄れていく。
そのやり方や、組織の構成、詐欺のテクニック、どれもすごくよく考えられており、これでは高齢者が騙されるのも頷ける。
そしてそれ以上に、若者のお金に対する執着、お金を得ようとする執念、お金を持っている高齢者に対する反発がなければ、このような甚大な被害を及ぼすまでにはなっていなかったかもしれない。
今の高齢者は努力すれば報われる時代を経てきたが、若者たちは努力しても報われることもないという絶望的な現実を実感しているのだろう。
真っ当な道では、今の生活を抜け出し、余裕のある生活を営むことは出来ないと考えている。
本書に登場する詐欺グループの話を知り、愕然とした。
昨今言われている貧困は、実は私自身が思っているよりもかなり進行しているのかもしれない。
その貧困の様に驚いた。
夢も希望も持てなくなるほどの生活苦に、努力しても切り開けない未来。
それらは、大人や国がしっかりとケアしてこなかった代償でもある。
日本は、人材が唯一の資源といわれているのに、人材を育てる努力を怠っているとしか思えない。
だが、どんな理由があれ、詐欺は立派な犯罪であり、他人のお金を搾取することはしてはならない。
著者は裏社会の少年少女をテーマとした著書が多く、若者寄りの目線で、詐欺を働く彼らを若干擁護しているように感じたことと、ノンフィクションとはいえ脚色されたと感じられる部分があり、その辺が気になった。
とはいえ、「老人喰い」とは単なる詐欺ではなく、もっと根深い問題が潜んでいることを知ることができ、今までと別の角度から見ることができた。