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なんとも言えない読後感だった。
今後日本では、介護の問題はより深刻になっていくだろうし、この物語が物語ですまなくなるんじゃないかと思う。
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自分の身にそう遠くない未来にやってくる介護の現実。する側、される側のどちらか、又は両方。ほんのひと握りの人しか行くことが出来ない『安全地帯』には自分は無理だと思う。ならばその現実を受け止めていくしかない。それこそ絆でしかないかもしれない。
ミステリー小説ではあるが、他人事ではない内容で現実問題として、いろいろ考えさせられました。
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これは、えぐられた。序盤から丁寧な描写で一気読み。最後のちょいどんでん返しもバランス感がよかった。すごい。
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ちょっと前に読んだ「廃用身」とテーマは同じく老人介護なのかな、と思います。
なかなか面白い作品でしたが、テーマを考えるなら「どんでん返し」は要らなかったんじゃないかな、という点が唯一の不満。テーマ性を考えるなら、このどんでん返しでそれ——読者である私たちに、本作を読んで何を、どのように感じてほしかったのか——がボケてしまったように思いました。
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高齢化社会、介護問題の闇をリアルに描いた社会派ミステリ。
普通にミステリとしても面白くて唸る。
ミステリ読むのほんとに下手だから、ネタバレしたシーンで誤植かと思ってしまった。てへ。
一番のテーマは現代介護の闇、なんだけど、他にもドラッグやら詐欺やら地震やら放射能やら官僚やらが盛り込まれてて読み応えがあった。
性善説やキリスト教の話もちらほら出てきてよいアクセントになってる。
盛りだくさんだけど、そんなに散逸的でもなく読みやすい。
私はやっぱりメインの介護問題の所が気になった。
一見豊かなこの社会では、そこに穴が開いていることになかなか気づかない。
フリーターでもそれなりに生活していける。
でもそれは穴の縁ギリギリを歩いていたようなもので、父が倒れ、介護という一押しが親子を穴に落としてしまった。
一度落ちてしまえば、その穴からは容易に抜け出せない。
一度家を失ってしまえば生活保護すら申請できないようなこの社会。
その穴がどこかに存在するらしいということはなんとなく知っている。
でも私はその穴に落ちてしまった人々がもがき苦しんでいるということを実感として捉えることができていただろうか。
その絶望は私たちの想像をはるかに超えている。
「検事さん、あなたがそう言えるのは、絶対穴に落ちない安全地帯にいると思っているからですよ。あの穴の底での絶望は、落ちてみないと分からない。」(p339)
「もしも死が救いでなく諦めだとしたら、諦めた方がましだという状況を作っているのはこの世界だ!
もしも僕が本当は父を殺したくなんかなかったとしたら、殺した方がましだという状況を作ったのは、この世界だ!」(p347)
穴が開いていない世界に少しでも近づけるために。
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介護、推理、聖書、性善説、どれをとっても、最高のストーリー展開、作者の意思、思想を感じ、共感できる。
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ミステリー小説としての枠組みを超えた小説。
2015年8月から介護保険制度が変わる。
その直前に読んだのもあり、物語の面白さも相まって、のめり込んで読んだ。
介護については、制度含めて決して他人事ではなく、一人一人が真摯に考えなければいけないと改めて、思わされる作品。
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葉真中顕『ロスト・ケア』(光文社文庫)読了。
読了といってもすでに3週間ほど前に読み終わってました。しかし紹介できませんでした。
なぜか。
あまりに圧倒されすぎて、うかつに感想が書けませんでした。
小生にとっては、『ジェノサイド』(高野和明)以降に読んだ本の中で一番面白かった一冊です。もしかすると今年の最高の一冊になると思います。
ロスト・ケア。意味深な言葉です。社会派ミステリーとしては、あまりに重い、身につまされる内容でした。
題材は介護ビジネス。
介護ビジネスといえば、コムスン事件を思い浮かべますが、この小説でもそれを題材にしています。しかも、大量殺人事件(何と43人!)に発展します。それを暴く熱血検事。圧巻は殺人が起きた時間帯から犯人を特定する推理。
実は犯人は冒頭から想像が付くので、推理は結果論でしか過ぎないのですが、登場人物の人間関係に引きずられて『あれ?』と訝しみながら読むことになります。
主人公は熱血検事でクリスチャンです(とはいえ敬虔というほどではありませんが)。ですので、検事の独白では聖書が引用されます。
冒頭で引用されるマタイによる福音書7章12節。
「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。」
これは小生の勤務先でもしばしば語られる聖句ですし、性善説的に用いられます。しかし『ロスト・ケア』では、もしこれを逆説的に捉えるとすれば、という発想で使われています。
心に残ったモチーフは、今の高齢社会が訪れることが予見可能であったにもかかわらず介護という言葉を作り出し、何とか理屈を付けて「介護」と「ビジネス」を結び付けてしのぎながら根本的な対策を先送りしてきた役人と、介護をビジネスと割り切って高齢者を抱える家族を食い物にしてきた事業家という構図です。
現実には、それに乗ったコムスン(事業者)は一時は介護業界の救世主とみられていたにもかかわらず、あっという間に役人(厚生労働省)とマスコミに粛正され市場から退場させられてしまいます。『ロスト・ケア』を読みながら「介護」と「ビジネス」を結び付けることが果たして正しかったのかを改めて考えさせられました。つまりは介護を市場として捉えることは間違いではなかったのかと。
親を殺された家族にとって犯人はもっとも憎い存在のはずなのに、この小説では犯人を憎むという感情とは別にホッとしたという感情も描かれます。実に残酷です。
しかしこれが現実なのかと思わずにもおれません。
犯人はいいます。
「そうです、殺すことで彼らと彼らの家族を救いました。僕がやっていたことは介護です。喪失の介護、『ロスト・ケア』です」[p.316]
幸せとは何なのか。とりわけ高齢者を持つ家族にとって幸せとは何なのか。
介護に関する制度的な問題とは別に、家族のあり方に一石を投じる小説でした。
この小説は、もちろん、小生のゼミ生にも推薦しますし、大学で会計やビジネスを学ぶ学生さん、社会福祉とりわけ老人介護を学ぶ学生さん、現在介護施設で働く皆さん、人を裁く法律を学ぶ学生さん、そして年老いた親がいるすべての人々に推薦します。
きれいごとでは済まされない時代に直面した我々はどうすべきなのでしょうか。
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介護現場をテーマにしたミステリーを何気なく探したときに、どこでもすぐに目に入ったのが本書。社会派の肩書きにそぐわない圧倒的な現実味が持ち味で、具体的な数字がぽんぽんと出てくるのもその特徴。とにかくリアルを描くことに突出して秀でているのがよくわかる。登場人物も個性がありすぎるほど豊かで、共感できる者も少なく無い。
介護現場についてイメージが湧いていない方には、具体的な事例があるのでとても参考になるはず。介護の世界を目指し学んでいる方や、今直近でそれに直面してる方、身内が介護をしないなんてとあからさまな批難をする人には是非とも読んでみてほしい。
ただし、完全に好みの問題で、私にはあまり合わなかった。ミステリーとしてはオススメできない。謎が殆ど無いのだ。
本編で人物の視点が一周すればことの全貌がわかってしまうので、犯人が追い詰められていく様を眺めるつもりでいたらサスペンス性も無い。トリックやら殺害方法よりも、動悸やその事件にまつわるストーリー性が重要視されるのが最近のミステリーの特徴なのかもしれないとしみじみした。だいたいのことが科学の力でわかってしまう今、新規の謎を製作するにも限界があるのかも。
あと一点、単純な誤植なのか。探偵役と思しき人物が、友人が死んだ事を電話口で知らされた時に、友人とは異なる名前の人物が「被害者」と報告され、さらにその「被害者」の身柄を拘束したとまで言われ、かなり混乱してしまった。ここで何故加害者と思しき人物が被害者と言われていたのかがとにかく気がかりでならない。私の読解力の問題なのだろうか…。
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う~む。イマイチ入っていけなかった・・・。犯人は最後までわかりませんでした。犯人あての推理したい人にはいいかも。
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これは他人事じゃない・・・
いくら大好きな親でもつらい。
ミステリー慣れしてる人は犯人はすぐ予想がつくかと・・・
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老人介護問題をテーマに、現代社会の矛盾や人間の善悪を鋭く突く衝撃作。日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
読み終わっても心の整理が未だに出来ない。それほど深くえぐられたように考えさせられる。自分自身だけでなく、妻と子供、両親の数年後を想像してしまう。そして、決して明るい展望が見えてこない現実に気が滅入る。
また、『絆』という言葉のもうひとつの意味を初めて知った。これにも身震いする。何もかもが衝撃的で文句なしの見事な傑作。
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老人介護の問題とミステリがいい感じに組み合わさっている。
安全地帯の人がつくった、自宅介護を前提とした今のシステムには無理があると思う。
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「身内の介護というのは、多くの人が直面する問題だ。極めてプライベートなのに、社会問題でもある。」(解説文)
「人間ならば、守られるべき尊厳がある。生きながらえるだけで尊厳が損なわれる状況に陥っているなら死を与えるべきだ」との信念を持ち、「犯罪を犯したことは認めたとしても、罪は背負わない」と宣言する犯人。
「たとえどれほど立派な信念に基づいていようとも、救いのための殺人など認めるわけにはいかない」と、検事は対決する。
彼の殺人という行為は、救済と言えるのか。
そして、繰り返し語られるイエスの言葉。
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」
少子高齢化と人口減少が進展し、介護問題が我々に重くのしかかる、そんな現代に一石を投じる日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。
3.11.以降、流行語とさえなった”絆”、この言葉には、手枷足枷、人の自由を縛るものという意味もあると、著者は記している。
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(15.10.26)
現代の日本における介護や終末医療に関する問題を提起するような、限りなくノンフィクションに近い話。自分も祖母の介護を目の当たりにしていた経験から、とても考えさせられる一冊だった。被介護者にとって、また家族を介護する者にとって、本当の幸せとは一体何なのだろうか。そして日本の社会福祉制度は、高齢化の加速する今後の社会においても本当に機能するのだろうか…うーむ。