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紙の本

死に行く妻を支える遥かな道のり

2008/11/25 23:53

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

幼い我が子を白血病で失い、妻は失踪する。そして数年後に再会したとき、妻は末期癌に冒され、残り数ヶ月の命となっていた。病院を出て故郷での静かな死を望む妻のために、夫は仕事を辞め、強盗して得た金と退職金をつぎ込んでモルヒネを買い、妻と最期の旅に出る。発端だけ見るとサナトリウム系私小説みたいになりそうなのだが、いきなり警察に追われる立場を選んでいるのが寿行流なのは言うまでもない。旅というより逃避行、それも相当過酷な、だ。
つまり個人に降りかかる不合理とは戦うというのが基本姿勢にあって、現代(執筆当時80年代)医療の矛盾を告発するのも必然の生き様なのだ。その訴えは市井の人々には理解され、逃亡先のそこここで支援を受ける。警察に追われている主人公たちを助けるのはそれなりの覚悟が必要なことで、ここにはヒューマニズムへの信頼を感じることができる。さらに追いつめられた主人公たちは、山間の孤立部落に住む老女たちに助けられ、また自然に深く関わって生きる彼女らから安らかに死ぬことの意味も教えられ、やみくもに突っ走ってきた二人の行動に芯が与えられる。しかし運命の手によって主人公と妻はさらに暴力事件の渦中に投げ込まれ、過酷な生死の境界を潜り抜けながら、教えられた死に臨む姿勢を確かめていく。
死を巡るドラマをバイオレンス小説の体裁で描くことで、死へ向かうための思考の実験、実践を繰り返し、深化していく。それらは主人公夫婦の他に、彼らを見守る人々、追求する警察など、読者も様々な視点で確かめることを求められる。つまり主人公たちが自分たちの生き方を社会に向かって訴えることによって、思いもよらないような幅広い幾つもの相を生じていくのだ。
息つく暇もない意外な展開の連続の中で、死に立ち向かう精神は鍛えられて厳しさを増していく。夫婦に与えられる苦難はまさに人智を絶する無惨なものだ。しかしそれが死に向かう精神に狂的な色彩さえ帯びることにも合理的な説得力を生み、正面から立ち向かっていく姿勢に共感を生む。そうして人物の心象が内向だけでなく、外に向かって開かれているからこそ、新しい脈流が入り込み、世の中もまた変わっていこうというダイナミズムとなる。彼ら自身は、「自然」の中に生きて死んでいくということを受け入れながら、同時に夫婦にとっての核の部分は揺るぐこと無く守り通した。そしてラストでは滂沱の涙と言いたいところなのだけど、展開の早さに眼がギンギンに乾いてそれどこじゃないくらい、作品の世界に持ってかれてしまいました。ただしあまりに激しい展開に、途中で本を伏せてしまう人がいるかもしれないのはゴメンナサイ。

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2021/07/16 10:52

投稿元:ブクログ

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