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きれいな描写で読みやすく、はじめから抵抗なく読み進められた。死者と生者が旅をするというファンタジーだけど、所々にびっくりする展開があったり、共感したりして楽しく読めました。哀しい物語ですが。みっちゃんも優介も好きです。夫婦でさえ生きてる時に分かり合えることは、一部なんだろうなあと思いました。
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私の夫は、死んでも何を食べたがるだろう?そんな事を考えた。「泣きながらでもちゃんとご飯食べそう」っていう一文と「死者は断絶している、生者が断絶しているように。死者は繋がっている、生者と。生者と死者が繋がっているように」という一文が心に残った。なんだか白玉食べたい。
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蟹に食われたという夫が3年ぶりに帰宅。その帰ってきた道のりを逆にたどる旅。その旅で色々な人と出会い、知らない夫の一面を知ることになる。風景と会話が見事に溶け合っている。波の音、月の満ち欠け、この心地良いリズムは不可思議な設定に違和感を感じさせない。何回か読みたくなる魅力をもっている作品です。
カンヌ映画祭で黒沢清氏が監督賞を受賞。
電線が風に揺れているみたいな音「ひょーん、ひょおぉーん」という表現が繰り返しでてくる。映画では場面転換で使われると予想。どんな音が鳴るのか?楽しみです。
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不思議な空間に身を置いて、静かな時間を感じながら読んでいました。
物語とともに流れる水の音、後半は風の音
死者と共に旅をするなんて、想像もつかないけれど、きっと誰もが後悔という戻せない時間を抱えているのだと
最期の彼の言葉から、そんな事を想っていました。
お別れする事に納得出来る、こんな時間が持てたら良いなと思った素敵な物語でした。
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夏の庭がとても好きだったので、書店で平積みされて販売されていたのもあり、本書を購入した。
此岸と彼岸に引き離された2人の夫婦の物語。そこに哀しみはあまりなく、突如現れた亡夫との再会により、2人が曖昧な両岸を旅していく。
ふわふわ、ゆらゆらした物語。曖昧な話や感覚的な話が好きな方にはオススメかもしれないが、刺激や感動は特にない。
個人的には、作中であまり深く言及されていない蟹の描写が、もう少し欲しかった。
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瑞希はその後どうしたのかなぁ。
力強さを感じたから、たぶん生きていくんだろうと思うけど。
哀しかったなぁ。
沁みるよ。
冒頭のしらたま、おいしそう。
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湯本香樹美さんの作品を読むのは夏の庭以来です。
此方の作品は境界が不明瞭で不確かのものを積み上げるような物語でした。
三年前に失踪した夫(優介)が妻(瑞希)のもとに帰ってくる。
優介は自分が死んだ事を伝え、それを受け入れた瑞希は優介と供に、優介の軌跡を辿る旅に出る!?
その旅で新聞屋の老人、中華料理屋の夫婦、タバコを栽培する老人達と出逢う。
優介が何故、瑞希の前に現れたのか?
優介はどんな人だったのか?
この旅は何なのか?
彼岸と此岸を行き来するかのような幻想的な旅が今始まります。
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死者と生者。不思議な世界に引き込まれるストーリー。でも面白い。人と寄り添って生きるっていうのも、楽しい分、失うと辛さも倍増するけど良い事だなって思える。
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3年前に行方知れずになり、この世の人でないのに戻ってきた夫。まるで生きているような彼と、長い旅をする。
最近身近に、死や、精神を病んだ人がいないので、それほど惹かれる内容ではなかったけれど、やはりこの作者の文章が好きだなと思いました。自分の状況次第では、もっと身に沁みたのではないかと思います。
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初めましての湯本さん。
お話の最初からずっと確かなものが何一つなくて。地に足が着いてない。
ふわふわ、ふわふわ。
いつまでも、いつまでも、ずっとふわふわしてる。
最後の最後。
最後の一文だけが、このお話の中の、確かなものだったと思う。
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自分が普段考える常識って、案外ユラユラしてるものかもしれないと思う。
一見あり得ない話が、こんなに静かに心に沁みてくるのだから
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静かでゆっくりと時間の流れる世界。
穏やかであるのに生と死が対立項ではなく、
隣り合って繋がっている。
悲壮感では決してなく、不思議と優しい世界。
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ファンタジーであり不条理であり寓話でありロードムービーでありコメディでありハートウォーミングものでありホラーでもある。
浅野忠信はもとから魂の抜けているような顔。なのにチャーミングという。
ばっちりの演技。(空も風も痛いという凄まじい台詞は、そこらへんの役者には言えないだろう。)
深津絵里は静かに悲しみを持続しているような顔。
だからこそ笑顔や笑い声が嬉しい。
怒った手つきで白玉団子を作るとか、いい。
なにやかやと手仕事をする所作も素敵だ。
蒼井優の自信たっぷりのしたたか悪女。
ほか、小松政夫をはじめとして「いいツラ構え」のおっさんたち。
旅は4つに分割できると思うが、「自分の死に気づかない人」と生者のそれぞれの在り方を見届けることで、自分たち夫婦の在り方も決着をつけようと決意する。
死者の未練、生者の執着、それぞれがお互いを引き止めたり引っ張ったりする。
この均衡不均衡は、生者死者だけでなく夫婦の関係性でもあるのだ。
死後でも「愛の確認」をしなければならないとは。(恨みの幽霊は存在しない。)
そして普段の生活では自分に見せてくれなかった「別の顔」を見て、理解を深めていく。
生死の境界や通り道は、黒ではなく白や霧や湯気のイメージ。
全編仰々しいとともに美しく幸福なオーケストラ。
これも清節と思えてしまえるくらいには盲目的信者である。
しかし、ここまで不穏なのに幸せな感動に浸れるのは、もう清でしかありえないのではないか。
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と、映画版で書いた。
抒情的な怖さを醸し出す設定や小道具や人物や背景やは清の工夫なのだろうとてっきり思っていたが、
実は原作をかなり忠実になぞっていた。
ということは「湯本香樹実の黒沢清性」。変な表現だが。
「死者は断絶している、生者が断絶しているように。死者は繋がっている、生者と。生者が死者と繋がっているように」
という台詞なんて、「回路」に出てきてもおかしくない。
死者が自分の死に気づいていなかったり、生者に交じっていたりするところも。
むしろ映画のほうが、ピアノ勝手に触らないで! や、今度結婚するんです、ふふふ不敵な笑み、や、殴り合い、などなど、エモーショナルな場面が多くなっているほど。
つまり原作は相当に淡々としている。それでいての叙情だから、良作なのだ。
また小説で気づいたのは、決して夫婦の話に限定していない、むしろ親と子という軸が盛り込まれた作品なのだということ。
あとは全編を通じて水の気配。これは小説ならではの巧みな技巧だ。
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白玉を食べたくなりました。
人が出来なかったこと、そしてやりたかったことが、
その人の魂を形作ってゆくということ。
心象風景のような、普遍的なような小説だと思いました。
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不思議な不可思議な出来事から始まるのに
自然にすっと小説の中に入っていく
生と死が隣り合わせのようで
絶望と希望をいったりきたりする
海の底にいるような静けさの中で
忘れてしまえば楽になるのに
これからも続くひとりの時間を想像して
余韻にひたり、いつまでも小説の世界から
抜けきれず、眠れず、夢をみる時間
苦しいけど、とても好きな小説
映画化されるので、文庫の表紙が主人公たち
映画『岸辺の旅』は
浅野忠信さんと深津絵里さんのイメージで読んでしまったけど
きっと、ぴったりなんだなと思う
湯本香樹実さんの小説は
『夏の庭』、『ポプラの秋』、『西日の町』、『春のオルガン』と
全部とても好きな本ばかりだけど、
今回の『岸辺の旅』はいつもよりさらに静かで
胸に残ったものが尾をひくような感じだった