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三年前に失踪した夫がある夜帰ってきて、実は死んでいるのだという。その死んだはずの夫と旅をする話。
文章表現がきれいな作品ではあるものの、おわりかたが私にとっては消化不良感を感じました。
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ラスト直前になって、もう終わりなんだ、という気に知らず知らずになって、知らず知らずに心が動かされている。そんなさりげなさがある物語。
「夏の庭」を書いた作者ということで読んでみたけれど、繊細な文章を書く人だなぁとあらためて思った。繊細すぎて、説明しすぎな気もするが。
ラストがやや唐突で、突然ぶつっと終了する感じなのが、いただけない。
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ある夜しらたまを作る瑞樹のもとに三年間行方不明だった夫、優介がふいに帰ってくる。
そして翌朝、2人は優介が帰ってきた道を辿り始める。
永遠に最期の地に着かなければいいのにと願うように読んだ。
瑞樹と優介は近づいているようでゆっくりと離れていたのだろうか。
自分以外の誰かと生きるということは、なんて怖いことなんだろう。
その人を失う瞬間を思うと怖ろしくて、笑ってなんていられないのでは‥?
優介には瑞樹が知らない顔がいくつもあった。
もちろんそんなのは当然のことだ。誰かのことを全て知るなんてあり得ない。
それでも瑞樹のように二人の間の距離を大切に出来たらいいなと思う。
相手が自分から離れていくこともあるかもしれないけど、それを怖れて無闇に距離を縮めようとすることはきっと何にもならない。
ゆっくりと語られる二人の旅はどのくらいの長さだったのか。
時間はあっという間に流れてしまったのではないかと想像する。
日々をどんなに大切にしていても、振り返れば過ぎ去った時間はいつも一瞬のような短さだ。
寂しくないなんて嘘。後悔しないなんて無理。
でも、楽しかった、大好きだったと思いたい。
なんて幸せな時間だったのだろうと感謝したい。
そう思う。
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主人公夫婦と共に水の音を聞き、まぶたの裏では水の中にたゆたっている。水を含んでぶよぶよ鈍いような、だけど水中を揺らめき浮力を感じるような…。もしかしたら彼らのような人々にすれ違ったことがあるのかもしれないと思ってしまうくらい物語と自分の日常とが溶け合い、歪な自然さの中でうっとりした。
…ディズニーランドの水系アトラクションの匂いの中で読みたいとか思っちゃう。
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ある日主人公がしらたまを作っていると、不意に夫が帰ってくる。夫は死に、肉体は蟹に食われてしまったという。
ふたりは、水音の聞こえるところに沿って、旅をしていく。
新聞配配達の営業所、中華料理店、たばこの栽培農家...。
不確かなものをなんとなく受け入れたような、よくわからないような形のまま、話が漸化式に進んでいく。
登場人物はみんな穏やかで、落ち着いて取り乱すようにさえ見える。
歯科医の夫、浮気をする夫、父親を許せない夫。
知っている姿、知らない姿が、水彩画のように薄く重なって塗られていく。
死んだ夫が、いよいよ本当に消えてなくなってしまうが、夢からは覚めない。
不思議な物語でした。
夫婦の形も私が想像しているものとはまた別のもので、妻が夫という生き物と暮らす風景が、ひとつひとつ印象的でした。
最後、夫が消えてなくなってしまうのに伴って物語は終わっていくと思っていましたが、主人公はふたり分の荷物を持ってまた歩き始めます。
残された生きているものは前に進むしかない、という、孤独の決意が感じられました。
湯本香樹実さんは、やはり死者を描く人なんですね。
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「しらたま」をつくっていたある夜、突然3年前に失踪した夫が帰ってくる。なんでも自分は海の底で身体の一部を蟹に食われたと言う。
そこから夫に連れられるまま旅をする。
物語は静かに進むけれど何も起こらない訳ではない。けれど淡々と進む。物語のそこここにぐっとくる箇所があったのは最近父がなくなったからかもしれない。
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死生観をテーマにした本は数多くあれど、本作は全く新しい視点。死とは?生とは?ではなく、死と生が融合していてハッキリとした区別が無い。死んだ夫と生きている妻の旅、という設定でありながら、どちらが死をどちらが生を象徴してるのか至極曖昧。ふたりに共通するのは懺悔や赦しの追求であり、終始それ一貫していた気がする。生も死も本来それらのテーマと切っても切り離せないものなのかもしれない。
著者は音大出身であるせいか流れるような文章が大変繊細で美しい。それだけでも読む価値アリと思います。
尚、本著氏で有名な四季シリーズとは全くタイプの違う作品だと付記して置きます。
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死んだ人間が目の前に出てきたら、何を話そうか。
二度目のお別れがあるだろうから、そんなことは起きてほしくない、と思うか。
ふと顔をあげると、三年前に死んだ夫が立っていた。妻は夫と共に、三年の間に夫が辿ってきた道程を旅する。
岸辺とは、彼岸と此岸の間のこと。
幽玄にはいくつか意味があるが、
幽;かすか・はかない
玄;奥深い道理
という意味で受け取ると、この小説のイメージに近いか。
『夏の庭ーThe Friends』・『ポプラの秋』の湯本氏らしい、死と生をテーマとした作品。
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失踪していた夫が
水底で蟹に食われたと
帰ってくる。
もうこれ、読むしかないでしょ!
こういうゆらゆらしたストーリーは大好き。
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夏の庭の印象が強いだけに、こういうお話も書かれるんだなぁ、と感じるに留まりました。
亡くなった旦那さんと不思議な旅をする話で、とても綺麗な話なのですが、江國香織さんとか、小川洋子さんとか、川上弘美さんとか、他の作家のお話がどうしても連想されてしまう…。
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夏の庭とは違う印象を受けながら読んでみる。
クラムボン的な静かな流れだがしっかりと物語に入ってしまった。
不思議な感覚で楽しめました。
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キレイで静かでふらふらしていて、せつなくて、はっきりしなくて、全部が全部あいまいで、話らしい話もなく、ただただ時間と空気が流れゆくだけなのに、そこに魂だとか再生だとか、そういうことばをくっつけて背表紙の解説にしてあるのだけれども、正直に言って、趣味ではない。
どうでもいい、どうだっていい。
こう言う甘ったるい灰色の話しには、無理してまで付いてゆく気にはなれない。
写経だとかヤコブの梯子だとか妙に宗教と絡めてあるのもおまけみたい。
なんの宗教もなく、哲学もなく、生きる実感さえもなく、感性だけで過ぎてゆく人間を淡々と語られても、現実に生きる私には無縁の世界。
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淡々としたきれいな話だった
きれい過ぎて残念ながら腑に落ちないというか共感できない
オトナのファンタジーかな
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夫が失踪して3年あまりの時間は何も書かれていない。「どうして、一体何があったの?」という妻の答えのみつからない苦しみがベースに、この物語は突如現れた夫(しかもすでに死者だという)との二人の旅路を、水の流れる方向へ身を委ねるが如く、やがて本当の永久の別れるその時が来るまでを、淡々と刻々と、時を刻み妻と夫の心を刻みながら、進んでいくストーリーです。
本の帯には「身を引き裂かれたのち、現在を生きる者がみずから魂の再生をなす物語。理不尽な痛みや過去…死さえも受け入れる強さをひとが獲得していくひとつの過程がここにある」と書かれてあります。
でも、自分が実感してない痛みはどんなに主人公の心情に寄り添おうとしても、読めば読むほどに混沌とした気持ちになるのです。少なくても私は再生できるところまでは行きつかなかった。まだ切なくて悲しくて、残されたわが身を呪うことは出来ても。。
愛する人の喪失は想像もしたくないけれど、必ず誰の身にも起きること。
その時が来たら、再びこの本をもう一度、間違いなく手にするでしょう。それまでは、分からないままこの本に抱かれています。
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本屋さんでぷらぷら本を探していて、冒頭を読んだ時、すぐに心を攫われた
しらたま
夜の台所で作るしらたま
ずっと聞こえてた水音 最後は風の音
15センチのドアの隙間から洩れる光
思ってたよりも複雑な人の心
今自分で思ってることが全てじゃない。今自分が喋ってることとは全然違う自分が居たりする。どれが本当でどれが嘘でとかじゃなくて、出会った人の分だけ、その人の中で、自分の中で、自分が生まれ消えていく
それで良いんだと思った