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薄明るい西日に照らされた
幻影のような思い出語り。
まだ敗戦国だということを
引きずっていた時代の男と
その家族の話。
風来坊は
他人なら魅力的だけど
家族は大変だなあと。
死にむかっていくてこじい自身より
母幸子の
父親の死をうけいれるための
時間をもうすこしくれと
願うところ、
母がみせた
死をうけいれていく変化。
鮮やかでした。
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人物描写、風景描写が上手い。うならせられる。色々書きたいが、ありきたりすぎる言葉だが、この作品は「文学」だと思う。
“てこじい”の強烈なキャラクター。芯のあるキャラクターだ。こゆい。
親子、老人と子ども。その両方の有り様と可能性を静かな文体で語りかけてくれる。
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斜陽の停滞した町。歩みを止めた時間のその終焉。息を潜めた子供時代。
終わってもなお続くもの、終わってやっと始まるもの。おしまいの時。
見届けたから歩き出せた。
舞台が北九州市のKで、Kを知ってると風景の空気が生々しく胸に突き刺さるけど、知らないとどう読めるのだろうか。
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生徒に借りた。児童文学??
情景豊かとはこのこと。
主人公の子供の頃を居酒屋とかで聞かせてもらってる感じ。
てこじいもきっと一生懸命生きたんだろうなぁ。
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西日の町での「てこじい」と母との思い出。大人になった僕が振り返る。
てこじいと母親のやり取りは決して愉快なことではないが、心にしんみりと来る。西日という言葉がピッタリくる。
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『夏の庭』は童話の様な綺麗さで、こちらは全体的に人間臭い。 てこじいに対する主人公の母親のわだかまり。アカガイを採ってきたてこじいの不器用な愛情。家族って難しいなぁ。
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あの一年、
時間は安物の和風の壁に染み付いた、てこじいの汗だった。
黒く、ぼんやりとした輪郭を描いて、
それは今も僕の中にとどまっている。
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著者の一貫したテーマ化と思われる子供と老人と死が子供の目を通して静かに描かれている。
親は子を守り、子は親を頼って生きていくという図式が、ある時期から混沌となり最後には逆転する。悲しいけれど見方によれば当然やってくるそんな運命をどのように受け止めるかはそれぞれの考え方とそれまでの人生の歩き方による。
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ロクデナシの祖父が転がり込んできて、母と自分との三人暮らしに。恨みと愛情を同時に味わいながら静かに最後のときを迎える母と祖父。しんとした味わいのある話でした。盛り上がりはなかったけど。
我が父もかれこれ30年会ってない。このまま会わなくて良い気もするし、会っても今ならば許せるような気がする。人間色々間違いもあるよなと思えるようになりました。
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僕と母の暮らすアパートに、ある日、転がり込んできた祖父の「てこじい」。それ以来、部屋のすみでじっとうずくまったままのてこじいは、夜になっても決して横になることもない。てこじいを邪険に扱う一方で、食卓に好物を並べたりと、戸惑いを見せる母。かつて、北海道で馬喰(ばくろう)として働き、朝鮮戦争時は米兵の遺体を繕う仕事をしていたなどと語るてこじいに、10歳の僕は次第にひかれていく…。
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家族の為を思うけど、不器用な父親と娘と孫の物語。
この3人の関係性だからこそ成り立つ物語だと思う。
ひどい父親と思いつつも、いい思い出を思い出したり
娘だって心から憎んでいるわけじゃないけど、
納得いかないもどかしい思い。
その間を埋める孫の存在がとてもよかったです。
卑屈にならず、いい子でほっとしました。
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芥川賞候補作。僕のアパートに「てこじい」という母の父が突然現れて居つく。母はてこじいに冷たい態度だし、てこじいもほとんど話もせずただ居るだけだった。てこじいの秘密もだが、母の秘密、母の秘密ためにてこじいのとった行動。とにかくこれで良かったのだと、読み終わって涙がでる最後でした。
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定期的に読みたくなる、ほんわかしたような、でも突き刺して来るような、なんとも表現しがたいジャンルの作品。普段は思い出さない(僕は思い出しまくっているが)自分の素になっている思いに繋がるからかも。
後書きの佐藤渓の詩もかなり気になる。
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母とてこじいの確執が淡々と、そしてしっとりと語られます。
てこじいを邪険に扱いながらも、どこかに子としての優しい心遣いを見せる母。そしてだんまりを決めつつも、母のために行動に出るてこじい。
心情が直接語られる訳では有りません。10歳の僕の目を通して描かれる母とてこじいの矛盾した行動が、二人の精神の揺れのようなものを描き出して行きます。このあたりの描き方はとても上手さを感じさせます。
湯本さんは初めてです。2冊目のつもりだったのですが、梨木香歩さんと混乱してたようです。「夏の庭」と「裏庭」そのあたりが混乱の原因かも知れません。この作品はなかなか気に入ったのですが、他の人の書評を見る限り「夏の庭」の方が代表作のようですね。これもそのうち読んでみましょう。
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2015.4/24 『夏の庭』と同様、老人と少年が織りなす物語。でもそれが突然転がり込んできた今はやつれた放蕩者の祖父っていうのが...言葉は多くないのにリアルで読み進めてまう。祖父の関係にハラハラする少年や、恨みつらみを抱えながら放り出せない母親の気持ちが手に取るように分かる。静かに涙した。