前半のほうが面白かった
2016/09/25 17:16
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投稿者:プロビデンス - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本語と英語の言葉あそびのようなアヤかけが面白い。過疎化が進みすぎて荒涼とした世界なのに、残された者たちの温かいやりとりが、小さな灯りのよう。ただし、後半はちょっと強引に感じた。
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いわゆる限界集落の小学校に通うたった一人の児童と女性教師。ふたりを中心に限られた生活圏であまりにも近い関係におかれた人たちのファンタジックなお話。不便な環境であるはずなのに登場人物がみな善人で幸せそうだ。
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読み終えて、「え・・なんで?」って思う。そして何とも表現しがたい何色ともわからない渦がもやもやと広がってくる。そのもやもやの広がりに抵抗したくて、何かを掴みたい思いで後戻りしページをめくる。
外の世界と遮断されてしまったかのような小さな小さな集落で、そこに居るのは村最後の生き残りとも言える校長先生、村でただ一人の子ども かおる、肌の色が違う兄 純、兄妹の父であるトビタカ先生、そしてかおるを教えている杏奈先生。
みんな血が繋がっていないし年代もバラバラで、肌の色さえ違っていたりするのだけれど、それぞれ心に何か暗いものを抱えていて、それ故に善良で優しく明るい。
かおるが連れてきたガイコツジンのお友だちエトーくんだってそうだ。
カタコトの日本語しか話せず、意思疎通が完全ではないと本人にもわかっているのだ。だけど彼の疑問形になってしまうカタコトの日本語は大人をあたたかく包み込む。
ハッキリさせないことで、相手を優しく包み込み癒している。同時にそれは、得体のしれない何かへの不安を増長させることにもなる。
それが大人には理解できることでも、子どもには説明がつかない。
時におばあちゃんになり、時に宇宙船になり、説明のつかないそれは形を変える。
子どもには大人が思っている以上に世界が見えていて、しかし彼らにとって説明のつかないそれは、時に深刻な事態を引き起こすことになるのだ。
小さく静かなこの集落で子どもたちの存在はどれほどの光を放っていただろうか。
一人二人と村の友たちを見送ってきたであろう校長先生の混乱と恐怖は想像して余りある。杏奈にしても、純にしても、トビタカ先生にしても、かおるの存在そのものが希望のようなものだったに違いない。
彼らの健やかな成長がただひとつの楽しみとも思えるほど、この集落は生の息吹から遠いところにあった。
子どもたちの素直で無垢な様子が鮮やかな光を放ち、読者を含めた大人たちの不安により濃い影を落とす。
1回読んだだけではハッキリとさせない結末の喪失感は大きい。けれども、ただそれだけではない。
2回読めば残された者たちには強い祈りと希望が湧き、3回読めばそれが明るい未来に続いているようにも思えてくるのだ。
優しさも後悔も祈りも飲み込んで同化していく、まるで宇宙の銀河ように糢糊とした光と闇の間を行き来しながら。
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限界集落の話で、人口も少なく寂しさを感じさせたり、子供の秘密基地ーー夢を感じたり、隣の村のガイコツジンことエトー君って一体……。
物語、云々、情景を感じさせてくれる小説で景色が浮かんできた。
ただ少し読み手に想像させるようなことが多かった気がした。
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過疎化と高齢化によって限界集落となった地域に住んでいる5人の登場人物による奇妙な交流物語。
ユーモラスなキャラクターははっきりしているものの、ファンタジーっぽいちょっと揺蕩うような心地よさのある物語。
詳細に書かれた風景や心象の描写が美しい。
繰り返し読んでみなければ理解しにくい小説かも。
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登場人物が皆、それぞれの役割をきっちりと演じているような感じがして、それでもその役割の中でどうにかして幸せであると言い聞かせているみたいだ。
2018/10/14
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登場人物も少なく、場面もあまりないが、今ひとつ理解できなかった。
結局、エトーくんとは?校長先生とは?
もうあの二人は戻ってこない?
エトーくんのように、全てが疑問形になってしまう…
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小野正嗣さんの書く物語の温度感が好き。
海沿いの限界集落に住む者たちの物語。自分の好きな登場人物は「校長先生」。杏奈先生と純の生々しい関係は苦手。
何かしら事情を抱えている者ばかりが登場して、その者たちの世界にどんどんのまれてしまうのだけど、現実世界の人間も皆、何かしら事情を抱えているもので、小野正嗣さんの物語を読むときに感じる不思議な感覚や、(私の苦手な)生々しさは、もうすでにここに在るものなのかもしれない。だからその温度感が私は好きなのかもしれない。
かおるとエトーくんがどうなったのかは、読者の想像力に委ねられる。もし映画E.T.ならば…
ハッピーエンドだといいな。
以下、お気に入りの箇所 引用
手入れされないまま放置された墓地は荒れ果て、一面に雑草が生い茂っていた。誰も訪れる者のなくなったこの墓地で、寄り添うように墓石を取り囲む丈の高い草の葉だけが、死者たちに手を合わせて深々と頭を垂れ、風のそよぎに乗せて何かをささやいていた。風雨にさらされ、苔とかびに覆われて、墓石の上に刻み込まれた文字はほとんど読めなくなっていた。倒れた墓石も少なくなかった。後に残してきた子孫たちの暮らしを見守るべく、背筋をぴんと伸ばして、この山から集落を見下ろしていた墓も、子孫たちのほとんどが自分らに合流してしまったいまでは、ある種の責任感からようやく解放されて、かつて何の気兼ねもいらないそれぞれの我が家の中でそうしていたように、片肘ついてのんびりくつろいでいる。あるいは横になってうたた寝していた。だから、かりに墓地を見知らぬ者が通ったとしても、もはや警戒することもなければ注意することすらなかった。