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「バーナード嬢」で結構印象に残っていたので、本屋で見かけて思い出して購入。
多重人格が発覚する流れは面白かった。ホテルで主人公とタイラーが会話するとことか、ホテルをクビになる時タイラーの代わりに主人公が面談に行くのとか、引っかかるところはあったんだよな。一緒にバイトしてるのかな?とか思ってたんだけど。
閉塞感や無力感から逃げたくてファイトにのめり込む男たちの切実さや純粋さはちょっと切なくなるものがあった。「バーナード嬢」で「中二感迸ってる」と表現されていたので、そういう目線で読んでしまったというのもある。
食品汚染だけはやばすぎて共感できなかった。作者あとがきで実話エピソードが出てきて本気で引いた。暴力を伴うテロと比較しても、社会システムを根底から破壊するという意味でよりやばい気がする(外食産業どころか食糧供給システム全般が信頼できなくなってしまいかねない)。
組織がシステマティックに作られていくのは爽快感があった。組織の暴走・崩壊まで描かれていたらよりそれっぽいかなと思ったが、作中で語られている範囲では目的意識も統一されているし、システムもしっかりしているし、むしろ今後も際限なく拡大していくという方向性かな。それはそれでバッドエンド感があって良い。
作者が言及していたロマンス要素は、マーラの存在感が薄すぎていまいち伝わらなかったかな…。
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読前の予想は『漢(おとこ)同士で殴りあい、友情を育む』本。
読後の感想は『雄(おす)同士で殴り合い、生と存在を実感する』本。
『排除』・『崩壊』・『死』を身近に感じることで、『生』を確認する。
最初は置いてきぼりになるかと思いきや、そんな内容に共感できてしまう自分に気づく。
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少し心の病気。「欲しいものがわからないと、本当には欲しくないものに包囲されて暮らすことになる」。ロングセラー
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読んでいる途中は、非常に痛くてこわくなるシーンが幾度かあって挫けそうになりつつ、何故だか読了はさわやかであった。よい。
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えっっっも!
とにかくその一言に尽きる。あまりに繊細な文体、エモーショナルな展開、新奇性のある言葉選びに驚いた。カルト的人気があるというのは知っていたけどこれは納得。
一見視点があちこちに映っているような主人公の言葉選びは、でも読み進めていくうちに主人公のキャラクターに没入させられる。
繰り返す退屈な昼間と刺激的な夜。でもやがて昼間は夜に引き摺られるように不穏さを増して加速していく。夜の加速はそれ以上で、物語後半でも加速は止まるどころか増していき、ラストはそのまま窓の外に勢いよく飛び出していくような疾走感が残る。
ラストの数行に選ばれた言葉のエモさ。
繰り返される「ファイトクラブ規則第一条」のキャッチーさ。
最高の本だった。
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銀座に用事があったときに、ふらりと入った本屋さんで購入した『ファイト・クラブ』。以前に映画を見た記憶があるが、映像の断片すら覚えていない。しかしながら、最後のオチは覚えている状態で本書を読み始めた。
頭がおかしくなりそうだ。二重人格であるというオチを映画で知っているのでついていけた気がする。前知識もなく読み始めていたら、最後までついていけたか自信がない。とても混乱して話についていけないのだと感じた。
読了後、改めてアマゾンプライムビデオで映画『ファイト・クラブ』を鑑賞してみたら、ほぼほぼ原作通りに物語が展開される。途中から趣が変わってくるが本書が語りたいイズムは貫かれているのだと思う。
この世に生を受け、生きることの意味を問われる。
人間って本当に面倒くさい生き物である。そんな生き物にガツンと一括入れてくれる本書。読みにくかったが、数年後に再読したくなる作品だ。
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初パラニューク。少し期待したが、イマイチ…。頭のおかしいサイコ野郎の妄想話(?)のようだった…。星二つ。
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文学のジャンル分けとして「爆破文学」なんてカテゴライズが有り得るのではないかと思っているのだが、本作は爆破文学の現代有望株、といえるのではないか。読ませる爆破シーン多数。
他人と明らかに違う行動論理を持つ人、というものは文学にとっての栄養。本作はその外れた人たちが組織化されていき、カルトに近づいていく様が、独特なテイストで語られていく。
翻訳家の都甲氏が「現代アメリカ文学の新しい古典」と評しており、それは持ち上げすぎだが、現代アメリカの風味を知る上では損のない一冊。
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映画がもともとめちゃくちゃに好き。
本1回目→映画→本2回目と進めた。
本は1回目は場面が飛びすぎる文体についていけずで、最初からそれが狙いだとわかって読めばよかった。
それを踏まえて改めて映画を改めて観ると納得の構成だし、そのあとで本を読むと小気味よくスッと入ってきて良い体験だった。
本と映画で場面にいろいろ違いはあるけれど、その本質はズレてないのも良い。
どちらも終わり方の解釈が死んだ死んでないで分かれるけれど、わたしは本も映画も死んでいないな〜と思う。
死んでしまうとそれは本質ではない気がするし、場面もそう描かれているのでは(特に本)、と思うから。
やはり映画はタイラーのカリスマ性がすごくて、本だとそれが薄いというか、カリスマよりミステリアスな印象が強かったな。
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文章に独特のリズムがあって、比喩とか表現が面白い。
資本主義、消費社会に対するアンチテーゼが効いていて、自分の生活を見直さなくちゃな…という気にさせられる。
映画を見てからこの本を読んだので、勝手に頭の中でエドワードノートンとブラピに変換されて読んでしまう。
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タイラーダーデンのカリスマ性凄まじい
言葉のセンスもおしゃれでかっこいい
でも、映画の方が分かりやすかったかも
これは当時の若者が読んだら痺れるでしょう
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チャック・パラニューク著『ファイト・クラブ』
デヴィッド・フィンチャー監督の映画版が良すぎて原作小説は全くケアしていなかったのですが、これがどうも米国文学の「新しい古典」と評されているらしいことを聞き及び、ブレット・イーストン・エリス著『アメリカン・サイコ』と同じタイミングで購入しておりました。
あららら・・・天才ですね、チャック・パラニューク。
テーマやメッセージもさることながら、散文小説の枠を奥歯をペンチで掴んでグラグラさせるみたいに揺さぶってくるその破壊力たるや。訳者 池田真紀子氏の仕事が良いと思います。改行、句読点、カッコの使い方が本当に上手い。2つの人格のせめぎ合いを記号的にも非常に良く表現できている。
"ちょっと愉快な爆薬は、過マンガン酸カリウムに粉砂糖を混ぜたものだ。要するに、燃焼速度の速い成分に、その燃焼を加速するための酸素を供給できる成分を混ぜるわけだ。すると瞬時に燃焼する。その現象は爆発と呼ばれる。
過酸化バリウムと亜鉛末。
硝酸アンモ ニウムとアルミニウム末。
アナーキズ ムのヌーベルキュイジーヌ。
硝酸バリウムの硫黄ソースがけ木炭添え。これが初歩的な火薬だ。
どうぞ召し上がれ。"(P266)
こういったテキストが散りばめられた本作だけども、実際のところは厨二病患者がガンオタ、ミリオタの欲求をマスターベーション的に満たすようには書かれてはいない。本質的には厨二病患者向けの作品であるにも関わらず。なぜならフィジカルにまつわる卓越した表現をぶつけてくるからだ。その苛烈さや文字から読み取れる痛みは電脳空間で誰かに石を投げつけて溜飲を下げている人間には受け入れがたいと思われる。格闘ゲームを傍観しているような冷静さではそれは読み下せない。我が事として突きつけられるからだ。この小説を読んでいるあいだずっと問われ続ける。「お前はいま、ファイト・クラブに参加している」
" 痩せた連中はどこまでも持ちこたえる。挽肉みたいになるまで闘う。黄色い蠟に浸したタトゥつきの骸骨みたいな白人、ビーフジャーキーみたいな黒人、そういった連中は、麻薬依存症患者更正会にいる骸骨そっくりにしぶとい。降参したとは絶対に言わない。まるでエネルギーの塊で、ものすごい速さで震えるおかげで輪郭さえぼやけている。彼らはみんな、何かから立ち直ろうとしている。自分で決められるのは死に方くらいだから、それならファイトで死んでやろうと思っているとでもいうみたいだ。"(P198)
ピンピンに研ぎ澄まされた言語感覚でアナーキズムと消費社会批判と信仰と父性喪失と2つの人格の主導権の奪い合いを描く。言葉の切り方と重ね方は非常に詩的。とはいえこの作品の中核は自己決定不能に陥った資本主義への無自覚な過剰適応への闘争であり逃走だ。
"「若く強い男や女がいる。彼らは何かに人生を捧げたいと望んでいる。企業広告は、本当は必要のない自動車や衣服をむやみに欲しがらせた。人は何世代にもわたり、好きでもない仕事に就いて働いてきた。本当は必要のない物品を買うためだ」
「我々の世代には大戦も大不況もない。しかし、現実にはある。我々は魂の大戦のさなかにある。文化に対し、革命を挑んでいる。我々の生活そのものが不況だ。我々は精神的大恐慌のただなかにいる」
「男や女を奴隷化することによって彼らに自由を教え、怯えさせることによって勇気を教えなくてはならない」
「ナポレオンは、自分が訓練すれば、ちっぽけな勲章のために命を投げ出す軍人を作ることができると自慢した」
「想像するがいい。我々がストライキを宣言し、世界の富の再配分が完了するまで、すべての人々が労働を拒否する日を」"(P213)
商業的、経済的システムを徹底して搾取的だと糾弾しながらそのカウンターとして悪ノリと自己破壊的暴力と左翼的階級破壊衝動を提示する。
次に引用する2つのパラグラフが自分にとっては本作の真髄だと思っている。知的でジョークが効いていて、既得権益層がふだん想像だにしない社会生活の要素を人質に世の中に対して闘争を仕掛けている。「なめんなよ、俺らを」と。その準備を睡眠なのか無意識なのか曖昧な状況の中で徹底したリアリズムと知性と暴力的思考をもって着々と進めているところが、全てが描かれていないだけに読者が悶絶するほど興奮するところではないだろうか。
" あいにく、自動フィルム繰り出し・自動巻き取り機能付き映写機を使う劇場が増えるにつれ、組合はタイラーをさほど必要としなくなった。というわけで支部長閣下はタイラーと話し合いを持つ必要に迫られた。
仕事は単調だし、給料は雀の涙ほどだから、全米連合および映写技師映写フリーランス技師組合地方支部の支部長閣下は、巧みな言葉使いを用いて、支部の判断はタイラー・ダ ーデンの今後を思ってのことだと言った。
排斥とは考えないでくれ。ダウン サイジングだと思ってくれ。
支部長閣下は臆面もなく言った。「組合は、組合の成功におけるきみの貢献を評価している」
いや、おれは恨んだりしないよ、とタイラーは愛想よく笑った。給料支払小切手が組合から送られてきているあいだは他言しない。
タイラーは言った。「早期退職だと思ってくれ。年金つきの早期退職」
タイラーが扱ったフィルムは数百本にのぼる。
フィルムはすでに配給元に返されている。フィルムはすでに配給会社に返却されている。 コメディ。ドラマ。ミュージカル。 ロマンス。アクション。
タイラーの一コマポルノが挿入されたまま。
同性愛行為。フェラチオ。クンニリングス。SM。
失うものは何もない。 おれは世界の捨て駒、世の全員の廃棄物だ。"(P158)
"「忘れるなよ」とタイラーは言った。「あんたが踏みつけようとしてる人間は、我々は、おまえが依存するまさにその相手なんだ。我々は、おまえの汚れ物を洗い、食事を作り、給仕をする。おまえのベッドを整える。睡眠中のおまえを警護する。救急車を運転する。電話をつなぐ。我々はコックでタクシー運転手で、おまえのことなら何でも承知している。おまえの保険申請やクレジットカードの支払いを処理している。おまえの生活を隅から隅まで支配している。
おれたちは、テレビに育てられ、いつか百万長者や映画スターやロックスターになれると教えこまれた、歴史の真ん中の子供だ。だが、現実にはそうはなれない。そして我々はその現実をようやく悟ろうとしている」とタイラーは言った。「だからおれたちを挑発するな」
本部長は激しくしゃくり上げ、スペース・モンキーはしかたなくエーテルの布を強く押しつけて完全に失神させた。"(P238)
おまけに、この作品世界ではタイラー・ダーデンのカリスマ性を非常に現代的な思想で否定してみせる。それを「ぼく(眠っていない時の主人公)」との綱引きと同じくらいのウェイトで、みずから組織したファイト・クラブとのマウントの取り合いをやってみせるのである。
" 今後、新たなリーダーがファイト・クラブを開設し、地下室の真ん中の明かりを男たちが囲んで待っているとき、リーダーは男たちの周囲の暗闇を歩き回ることとする。
ぼくは訊く。その新しい規則を作ったのは誰だ? タイラーか?
メカニックはにやりとする。「規則を作るのが誰か、わかってるだろうに」
新しい規則では、何者もファイト・クラブの中央に立つことは許されない、とメカニッ クは言う。中央に立つのは、ファイトする二人の男だけだ。リーダーの大きな声は、男たちの周囲をゆっくりと歩きながら、暗闇の奥から聞こえてくる。集まった男たちは、誰もいない中央をはさんで正面に立つ者を見つめることになる。
すべてのファイト・クラブがそのようになる。"(P203)
チャック・パラニュークはこの時点で自ら創作した魅力的な主人公を押さえつけファイト・クラブを「プラットフォーム」化させている。いくら働き者のタイラー・ダーデンでも仕組み化無しにカリスマ性だけで米国中のおにーちゃん達を組織化できない。カリスマ的中央集権を引用の部分では驚くべき明朗さで否定している。
経済学的にも政治思想的にも組織論的にも非常に示唆に富んだ小説だ。
消費経済の暴走にカウンターを当てながら、主題となるアナーキズムの暴走を突き放したように客観視する。
"騒乱プロジェクト強襲コミッティの今週のミーティングで、銃について必要な知識をざっと説明したとタイラーは言う。銃がすることは一つ、爆風や爆圧を一方向に集中させることだけだ。"(P168)
幾重にも張り巡らされた冷めたメタ認知が描く暴力=自己破壊による自己決定権の回復。文章を訓練しただけじゃ書けない小説です。
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昔映画を見たときと全く印象が違う。
めちゃくちゃ胸熱で面白さ倍増。最後の1行も凄くてゾクゾクした。
私は何にでもなれるからこそ私の中にいるタイラー・ダーデンと上手く共存していきたい。
頭の中にいる想像の自分がかっこいいのは世界共通なんやな。
頭が冴えてて大胆でカリスマで突然学校を占拠したテロリスト集団も隠し武器で1人で倒せちゃうんだもんなあ。
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読みにくかったが、ためになった。あなたは、心の底からこの世界に満足できているのかと問いかける本。
なんとなく生きるのはなんとも愚かな行為だと再認識させられた。
チキンレースをしている場面は読んでる方まで恐ろしい気持ちになったが、追い詰められた時に本音が出てくるのは納得できた。
生きる目的を失わないように、常に焦りを持ちながら毎日を過ごしたいと思った。
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幻想的で現実的な物語だった。カルトな人気があるのも頷ける。 ただ生きていた主人公がタイラーという男と出会い、現実を変えていく。 ファイトクラブについて口にしてはならない。 合間に挟まれる条文や俳句は印象的。俳句は原文ではないだろうけども。 暴力というだけでなく規律を重んじ、クラブは加速していく。 タイラーに関しては察するものはあったけれど、ラストに至るまでの怒涛の過程は一気に読んでしまった。