紙の本
驚嘆すべき死の奇跡
2019/12/04 23:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
私たちは、幼少期から学校へ行き「良い子」であることが何よりも求められる。
その後は「良い成績」を取り「良い会社」へと就職することが求められ、これを達成した人が送る人生が世間一般の「良い人生」だ。
ところで、この「良い」とは誰にとっての良いなのか。
人生とはそもそも自分だけのものであり、誰かに「良い」、「悪い」と判断されるものではないはずだ。
自分の外側ばかりを気にしすぎるあまり、自分の内側が全く分からない状態に陥る。
これを本末転倒と言わずして何と言おう。
本書は、自分の内側の声に従うことこそが人生であると目を覚ましてくれる作品だ。
主人公のように本当に欲しいのか分からない物を手に入れ、逆にそれらに所有される状態に陥ってる人たちはごまんといるだろう。
本書の魅力は何といってもそのメッセージ性だが、それ以外にもテンポの良さや魅力的なキャラクター、ハッとさせられるセリフなど面白い小説に必要不可欠な要素が詰まっている。
タイラー・ダーデンというキャラクターは小説史に残るほどの魅力に満ちた人物だ。
利口で度胸があり、大胆不敵で自信に満ち溢れている彼には畏敬の念を抱かずにはいられない。
個人的に非常に気に入っている場面が二つある。
一つ目は、メカニックが運転する車が対向車に衝突する寸前に主人公が後悔していることを言う場面だ。
二つ目は、主人公がレイモンド・ハッセルという青年を銃で脅す場面だ。
どちらの場面も、本当に自分がやりたいことをやらない人生に意味はあるのかと問うている。
私たちはもっと死を意識して人生を生きなければならないと認識させてくれる場面だ。
本書読了後、果たして本当に自分の人生を歩んでいるのかと自問自答してしまった。
もっと死を意識して人生を歩んでいこうと思わせてくれた強烈な作品だった。
紙の本
不眠症から終わりなき戦いへ
2020/02/22 18:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファイト・クラブのリーダー・タイラー・ダーデンの、大胆不敵な挑戦に引き込まれていきます。彼に魅せられた主人公が、殴り合い以上に大切なことに気付く瞬間が圧巻でした。
紙の本
目の覚めるような作品です。
2015/05/02 00:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は長らく絶版になっていたようですが、早川文庫のフェアで復刊しました。
繰り返しの毎日を送り「死んだように生きている」若者が、ファイト・クラブにおける過激な暴力や非行を通して生を実感し、破滅していく…とあらすじだけ書いてみるとなんだかチープに見えますが決してチープではありません。まずはとにかく読んでみてください。
主人公の「完璧で完全な人生からぼくを救ってくれ」という一文が身に沁みる良作です。
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映像化された時、自分20歳やったんか。ただただかっこよかったけど、やっぱり活字は深いわ、捉え方が変わった。
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映画「ファイト・クラブ」は家にDVDBOXとBlu-ray両方有るほど好きなのに、実はこれを買うまで原作があることを意識したことが無かった。しかもこの原作が、非常に映画的というか映像的というか、格好良い。今までフィンチャーだけの手柄だと思っていてすみませんでした……。
一番好きなシーンは主人公が青年を銃で脅しながら、死にたくなかったらなりたかったものになるように勉強しろと迫るところ。「さあ、行けよ、きみの短い人生を生きろ」今の自分の胸に刺さる。
「チーズを買ってテレビの前で暮らすのに最低限必要な金を稼ぐためだけにつまらない仕事をしてるきみを目にするくらいなら、殺すよ」
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中二病男子にとっては強烈アッパーパンチになるのかな。私も十代で読んでいたらかなり影響を受けたかも。今や年も食い、その上難病患者(自助会参加してます 笑)時代の空気も9 11以降かなり変化していると思うし、震災後だし。平和で退屈な消費社会の虚しさ、終わりなき日常を生きる絶望感のようなものからは遠く離れているので只々物語として楽しんだ。祭礼や徴兵等々、男子が男になるには通過儀礼は不可欠なのか。現代社会ではそれも自己責任に委ねられているのは辛いところだ。石鹸作りのエピソードはナチスを思い出してしまった。
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一言で表すなら、「男ならやれ!やったらんかい!」って小説。レールに乗っかるだけの人生で、「生きている」実感をどう得ればいいんだろう、という問いに対する、ある程度の普遍性を持った一つの答え。
ただし、破壊衝動が行き着く先は……。少し違うかもしれないけど、デュラララを思い出した。
映画的な小説だな、と感じたら案の定。あるいは西尾維新的と言ってもいいかもしれない。
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「トレインスポッティング」と同じく、映画では過剰な表現を使っているんだろうなあ・・・と思っていたら原作の方が数段下品で野蛮だったパターンの作品(翻訳者も同じだった)。
オチに関しては映画ではさりげない演出だったのが、小説という媒体では過剰に見えてしまった。
ラストも映画と小説とでは異なるが、映画の方が救いの無さと新しい始まり、破壊と再生の表裏一体さを感じられて個人的には好みだ。
小説の中で印象に残った台詞はマーラの「コンドームはあたしたち世代のガラスの靴ね。初対面の相手にはまず履かせてみる。朝まで踊ったら捨てる」
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物的には満たされながら、生きている実感もなく人生に飽き飽きしている主人公。
不眠症に苦しむ中、難病互助グループに参加してみると眠れたために、毎日様々な疾患の互助グループに参加をするようになった。
そんな折タイラーに出会う。
タイラーに誘われるままファイト・クラブに行くと、闘いによって壮絶な暴力を受ける。ようやく生きている実感を得ることが出来た。
映画化もされた本作は、映画も観ていないし原作があることも最近知った。
映画が有名になり、アメリカでは熱狂的な支持を得た作品らしい。
読んでみて、確かにアメリカで人気になりそうな作品だと感じた。日本人にはそれ程は共感を得られないかもしれない。
タイラーが主人公を様々なことに誘うのだが、どれもが子供のイタズラのようなタチは悪いがくだらない内容でおかしい。
タイラーの働くホテルで客に届けるスープにこっそり排尿するとか唾を吐くだとかいったようなこと。
日本のOLが嫌いな上司の飲むコーヒーに雑巾の絞り汁を入れて喜ぶようなもの。
くだらない。このくだらなさがアメリカではスカッとするのかもしれない。
わざとだとは思うけれど、文章がやや口説い。
また、主人公とタイラーの会話の書き方などで、予想がついてしまうところも残念。
ラストがわたしには何故か恐ろしかった。
一読ではすんなり入ってこず、もう一度読んで唸る感じだった。
また、タイラーの作ったルールでタイラー自身が苦しむことになるところも焦燥が伝わり面白い。
毎日に特に不満もなく、何が足りないというものもなく生活していると、生きている実感が薄くなり、何か強い刺激によって生きていることを感じたくなるというのはそうかもしれない。
毎日同じことの繰り返し。
朝起きて、パンをコーヒーで流し込んで電車に揺られて会社に向かい、いつもと同じ仕事をしてまた電車に揺られて帰る。
退屈だ。何かないか。ヒリヒリするようなスリルが欲しい。
何となくではあるけれど、わからなくもない。
ファイト・クラブでの暴力描写が痛々しい作品だった。
映画でこの作品をどのように描くのか一度観てみたいと思う。
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映画と同じく小説もかなりアクが強い。
場面が次々と変わっていくスピーディーな展開や独特な文体は読み進んでくうちにクセになる。
映画とは違うラストも秀逸、そして衝撃的。
読み手によって様々な解釈ができる哲学的な側面 がある作品。
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映画を観てよかったので原作を読んだ。
ラノベのような文体で最初少し拒絶反応が出たけど、しばらく読むと慣れてきて独白体の格好良さに魅せられた。欲しい物質は全て手に入れても精神が満たされない主人公の破壊的な告白には同感で痺れた、162ページすばらしい
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タイラーの色褪せぬ魅力。本書の解説にあるように、この物語は、暴力ではなく生きることの意味を問うものだと思う。
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有名な映画の原作。
著者あとがきでも述べられているが、原作小説があったのだ。
一読して驚いたのは、映画のプロットが小説にかなり忠実なことだ。映画版ファイト・クラブは間違いなく非凡な作品だが、物語とそれを盛り上げるディティールの大部分は小説ですでに語られている。
その一方で、小説のラストは映画とは明確に異なる。ラスト、タイラーに向かって引き金を引いたあとの場面が描かれている。主人公は「天国」と呼ぶ場所にいる。おそらくは医療刑務所。そこで「ぼく」に食事を運んでくる人々は、青あざを作っていたり縫合痕があったり、鼻骨が折れている。そして「ぼく」に向かってタイラーの帰還を待っているとささやくのだ。
自分が映画ファイト・クラブで好きなシーンは、ファイト・クラブにのめり込み仕事をおろそかにする主人公に上司が説諭するシーンだ。上司との面談中、主人公は自分で自分をボコボコに殴る。血を流しながら悲鳴をあげ、集まった人々を前に「許してくれ、もう殴らないで」と上司に向かって懇願するのだ。その結果、主人公はフルフレックス、お咎めなしの労働環境を手に入れる。
このシーンは小説とは異なる。小説では、タイラーの勤務先の1つであるホテルの支配人を前に主人公がこの行動を取る。これは主人公とタイラーの関係の伏線にもなっている。
また、映画では、人間の油から石鹸を作るシーンでは医療廃棄物置き場から盗んでいたが、小説ではマーラの母親が吸引した脂肪を使っている。これは持ち主が特定されている分、小説の方がグロテスク。
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大分前に映画を観て、いつか原作を読もうと思っていたが、満を持してやっと読んだ。映画を見ていたらマッチョな漢臭い感じかと思っていたが、実際はそうじゃない。心を麻痺させるな、最期まで熱く生き抜けみたいなメッセージなのかな。
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ブラピの映画の原作ぐらいの気持ちで手に取ったが、この本は凄い。自分の人生の価値観を揺さぶられるような作品には、なかなか出会えないと思う。この作品にはそんな力があります。