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コンパクトにまとまってはいるが…
2011/07/24 15:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ココちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
定跡伝道師の異名を持つ所司七段による新しいタイプの定跡書が登場しました。
どうやら「新・東大将棋 定跡道場」シリーズは中途半端に終わってしまったようで、残念です。
「早分かり中飛車定跡ガイド」というタイトルですが、▲居飛車VS△ゴキゲン中飛車の解説です。
「東大将棋」シリーズよりも易しく、1冊で主要なゴキゲン対策を扱おうという意欲的な本ですが、
その代わりに変化手順や終盤までの解説はほぼなくなっています。
第1章は「超速▲3七銀」です。
玉を囲う前に▲4六銀とするのが肝なので、個人的には超速▲4六銀が正しいと思うのですが(笑)。
本書では後手3二銀型を中心に3二金型、4二銀型も扱われます。
型の違いごとに後手の方針が変わる点の解説はなされていますが、変化は少なく、
中盤の入り口辺りで手順が打ち切られていますので、指すには他の棋書で補う必要があります。
第2章は「角交換型」、丸山ワクチンの名が一般的です。
▲居飛車が持久戦を目指していることもあり、本書では一例の紹介に留まっています。
主流の後手が向かい飛車に転換する以外の型も載っている点は○です。
第3章は「超急戦▲5八金型」です。
本筋としてタイトル戦で指された最新の将棋も載ってはいますが、
この章だけで超急戦回避型までも扱っていることもあり内容はかなり薄めです。
また▲7五角型は「遠山流中飛車急戦ガイド」よりも浅い変化量で解説が終了しているのに、
結論は逆になっているので、研究の精度に少々疑問が残るところです。
第4章は「▲2四歩早突き型」、ほとんど消えた変化ですが再確認に使えそうです。
第5章は「▲7八金型」です。
今までの棋書と違い△3二金型だけでなく最近流行の馬を作らせる指し方も載っています。
これは後手の勝率がかなり良いのですが、本書では先手十分になっているのが面白いところです。
第6章は「▲4八銀型」で、相穴熊や居飛車側のみ穴熊、さらに急戦などが扱われます。
穴熊関連は「遠山流中飛車持久戦ガイド」が本書よりもずっと詳しいです。
第7章は「▲2五歩保留型」で、二枚銀戦法など解説されます。
後手は歩損甘受で銀交換に出る作戦が主流だったと思いますが、
掲載戦型は多い本書なのに何故かこの変化はノータッチで、
もやもや感が残ることになってしまいました(笑)。
基本中の基本から最新形、さらには珍しい型まで扱っているのに、
1冊でまとめるのは無理があったようで、どういった棋力の持ち主を対象にしているのか疑問に感じました。
変化が浅く解説は少なめで有段者には物足りず、
方針がわかりにくいため級位者はこの後どう指すの?となるでしょう。
残念ながら本書は中途半端な1冊だな、というのが正直な感想です。
これなら「定跡道場」シリーズの構成でゴキゲン中飛車を出してほしかったですね…。
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