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ピュタゴラスの旅 みんなのレビュー

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みんなのレビュー1件

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電子書籍

強烈な皮肉

2018/12/03 01:35

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

どの作品もアイロニーが聴いてますが、なかでも「籤引き」が一番強烈で、痛快でした。驕り高ぶり、自分の価値観でしか物事を測らず、違う価値観を受け入れないばかりか侮蔑し否定することしかしなかった人にはいいお仕置きですね!
「そしてすべて目に見えないもの」は推理小説の約束事に挑戦するような作品で、警察内の取調室で「自然死」を遂げた18歳くらいの少女を巡って話が展開していきますが、うまい進行役が見つからず模索するという妙な展開で、結局「殺すのはいつも作者だ!」という結論に至ります。

「ピュタゴラスの旅」はタイトル通り数理学者にして教団の指導者でもある哲人ピュタゴラスの魂の浄化を求めて果てのない旅を描いています。彼の後継者として育成中のテュモスが旅の段取りをしてお伴しながら、師ピュタゴラスに疑問をぶつけて議論するという話ですが、古代ギリシャですから、そこには師弟関係だけではなく同性愛的な絆も当然のごとくあり、テュモスの死後、ピュタゴラスが代わりの者を認めずに一人で旅を求道の続けるというなかなか感動的なストーリーです。

「虐待者たち」はどちらかというとファンタジーで、飼い猫がある日ひどい虐待を受けて命からがら帰宅したので、飼い主が会社を休職してまで(本当は辞職するつもりだった)復讐をしようとする話です。猫に惚れられた男の因果みたいな?なんとも不思議な話です。

「エピクテトス」はストア派の哲学者である奴隷のエピクテトスの伝記のような話です。自分の力の及ばないことに対しては全て諦めて受け入れるという哲学とかなりの忍耐力を持ったエピクテトスは嗜虐趣味のある者たちに一種の恐怖を与える存在となっていく過程の描写が非常に興味深いです。

最初に収録されている作品「そしてすべて目に見えないもの」は推理小説の約束事に挑戦するような小説ですが、これは他の作品に比べてたいして面白くは感じませんでした。

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