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角田光代さんの文体が、肌に合う感じがする。
ふつうがどこにあるのか掴めないまま、漂っているのは、彼らだけではない気がする。
どこに出口があるわけではなくても、みんな今日をひたすら生きて行く。
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直子が怖いなー。
泰子や智が、「直子はいつから直子なのか」と思いたくなる気持ちもわかる。
見た目普通のおばさんなのに、助けてあげたくなるってどんな人だろう。想像つかない。
自分の生き方が、間接的に他の誰かに影響してるって、少なからずあるかも。
私の人生も、影響してるかしら……。
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我が家の常識は世間の非常識ということは往々にしてあると思う。みんなが思う普通がすべて当てはまる家庭というのも、ないよね、きっと。
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逃げ果せたと思っても、身勝手な都合で現れる智と直子に絶望を覚えた。飲み込まれてしまう恐怖。
それでも、最後には一筋の光が見えた。人は、生き抜く図太さを持っている。
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浮き草のような智の母親、直子。
家事もやらない、
カレーもまともに作れない。
アル中。
放浪しても必ず男が助けてくれる。
ただの年くったくたびれたおばさんなのに。
「逃げようが追いかけようがはじまったらあとはどんなふうにしてもそこを切り抜けなきゃなんないってこと。どんなふうにしたって切り抜けられるものなんだよ。なんとでもなるもんだよ。」
このセリフが唯一、直子のまともな言葉であり
私の胸に突き刺さった。
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ダメだ、智は道ですれ違っても目を合わせたくない、嫌いなタイプのチャラ男。
もう、一刻も早く読み終わってしまうしかない。
しかし、そこに泰子の視点が加わると、やはり興味をひかれてしまう。
一番すごいのは智の母の直子。
子ども一人とボストンバッグ一つを携え、日本列島どこともかまわず、男の元を転々として歩く。
そうして、どこまでも直子を貫き、直子を完成させて生涯を終わった。
ワイドショーの再現ドラマを見ているようなストーリーである。
しかし、再現ドラマが「なんて悲惨な」「可哀そう」「やりきれない」という感想を視聴者から引きだそうと目論んでいるのとは違い、智には悲劇を感じない。
直子はもちろん、泰子も図太い限りである。
世の中には常識という名のルールが存在し、そこに当てはまらない人たちに対して、私たちのような凡人は、「ルールから外れた人」というレッテルを貼る。
しかし泰子は、ルールが一つなら混乱もないのにねと思いつつも、『世の中にはいくつものルールがあり、もしくはまるきりそんなものはない』と心の中で確信する。
…そういう物語だ。
ここに書かれていることは真実で、世の中からルールは消えかかっているのかもしれない、と戦慄した。
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何とも気持ちの悪い本だった。
人生に何の希望も、夢も見いだせなくて、ただ流されるように生きている人たち。
読んでいて気持ちがすさんでくるような。
だからといって、ページをめくる手はとまらず、あっという間に読み進めてしまった。
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常識的に言えば、酷い家庭で育った二人。「家庭」と言えるのかすらわからない。そんな二人が大人になり、再会して一緒に暮らし始める。親と子の関係も、男女の関係も、始まればいつかは終わるもの。そしてその相手との関係が無かったら今の自分は無い。そんなことを淡々と語りかけてくるような小説でした。
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人は美しいものに心引かれるが、同様に醜いものにも心引かれる。
つい見てしまう。
気になって仕方がない。
見たあとに、嫌な顔をして、そして目をそらす。
生活における醜さは怠惰と近しいところにあるかもしれないが、それは受け入れてしまえばなんとなく安心感がある。
ふつうとかきちんとしてる人も、きっとそういうの理解できるはず。
不思議な話だけど、
読み始めたら、終わりなんかない。
着実に少しずつ、進めていくこと。
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角田氏の描写はいつも鮮明なのですが特に終盤の病院でのやりとりがすばらしかったです。小池昌代の解説も秀逸でした。
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読後気分が高揚するわけでもなく、希望が見出せるわけでもない。けれどページをめくる手が止まらなかった。
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普通ってぬるま湯なのかもしれない。当たり前にぬるま湯に浸かればいいものを、あえて、なんの引力かルールによらないものに引き寄せられてしまう。物語は、過去ある母子が自分の家に転がり込んできたことから、家庭が壊されてしまったと感じる奏子の話。突然現れた過去の同居人に心は許さないも、自ら過去の淡い体験を重ねてしまった(この時点で心も許してしまっていたのかもしれない)。自分自身、この著作の様な行動はとれないんだけど、刺激を求めてしまう気持ちも分からなくもない。うーん、吸い込まれる様に一気に読んでしまった。
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母親に連れられて出会った人たちのところを転々としながら育った息子が、大きくなって結婚を考えたり母親と暮らしたりする話。
うーん、読み終わっても全然なにも残ってないかも。。
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これを読んでしっくりくる人、こない人、それだけでもかなりの価値観バロメーターになりそうなお話だった。角田さんの人間スペクトルの広さ光る非常に面白い作品でした。映画化とかするのかなぁ〜。
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普通とは、より多くあること って聞いたことがある。
多いものが普通になっていく、ということだ。
普通から外れれば不幸なのか。いや、それはイコールでない。多数に属するのか、少数に属するのか。それらは幸、不幸とは 本来は 関係ない。
関係ないはずなのに、普通を維持し、時には追い求め、不幸(になるかどうかなんて誰もわからないのに、さも不幸になるかのようになぜか私たちは思いこんでしまう)に陥らないように、時に必死になってしまう。
それは、普通であること が 人生の幸・不幸と分かち難く結び付けられていると 薄くしかし長く刷り込まれ続けているからなのだと思う。
あるいはそれは、多数派から少数派への、目に見える・見えない諸々の圧力という形を取ることもあるだろう。その圧力を内在化して自らを縛りつけていることもあるだろう。
直子は、普通でない ことが 不幸 に結びつくわけではないを体現した存在なのだと思った。もしかしたら、不幸とか幸せとか、その価値基準すら彼女の中にはないのかもしれないけれど…。
泰子と智を中心とした 普通じゃない人 に人生狂わされた男女の物語として成立させることもできたのだろうけど、直子という存在を、後半でドーンと出しているっていうのが一味違う。