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【この本がどうやって作られたのかは、私は知らない。だけど、この本がどうやって売られたのかを私は知っている】
少し前振りが長くなります。この本を購入するに当たって、とても重要なことなので記載しています。
11月4日の12時。この本の秘密が明かされた。この本は2015年11月4日11時59分まで糸井重里秘本という名前だった。言わずもがな、この本の名前は糸井重里秘本という名前が付く前の名前がある。しかし、大変失礼だと思うが糸井重里秘本という名前を付けられるまで、誰もこの本の事を知らなかった。その秘密が明かされた現時点でさえブクログ登録数は2桁、レビューは1件という状況である。
しかしこの本はある本屋でたった30時間で1000冊売れ、最終的に1600人近くの人が購入したにも関わらず、その名前が著者にさえ伝わらないほど、今日までひっそりと読まれていたのである。みな秘本の共犯者となって、共有を封じていたのだ。
その密本を販売した本屋の名前は天狼院書店。私は糸井重里密本企画までその存在を知らなかった。この書店、もともと型破りが過ぎるほど独自のセンスを持った新しい形の本屋である。そして秘本とは、著者タイトルを隠したまま、書籍を販売するという、ありそうでなかった、あったら面白いが正直売る側も買う側も怖くてできなかったであろう販売方法なのだ。もともと天狼院書店では独自の秘本という形で様々な本が企画され販売されていた。そこに糸井重里氏がこの骨風を委託するような形になったという。そしてその面白そうな企画の共犯者の一人として、私はこの糸井重里秘本を購入した。
この企画について大いに語りたい所ではあるが、ここは本のレビューを書く場なので、詳しくはhttp://tenro-in.com/hihon/14234こちらを読んでいただきたい。
そして前代未聞の販売方法で手に入れた本【骨風】
【私は死ぬということに意味があるのかと問い続けてきた】
わたしがもしもこのまま特になにも変わらず生きていたら、この先この本を読むことはなかったと思う。重々しいタイトルと表紙、そして帯のコピー。誰かの出した人生の答えを私は読んでしまうのが怖くて、そういう匂いのする本を敬遠していた。
だからこの本がどんな本か黒いカバーを外して知ったとき、なるべく丁寧に読むことを心に決めた。書き手の雰囲気に飲まれず、言うならばテストの答えあわせをするような気持ちで、この本と向き合おうと思ったのだ。結果、わたしは次の日寝不足のまま会社へ出勤することになったのだけど。
この本には、とにかく次を読ませるパワーがある。もちろん、楽しい話でも、ためになる話でもない、もしかしたら読み終わってもなにも残らなかったと評価する人も居るかもしれない。だけど、この本には強いパワーがあるのだ。生きることよりも、死ぬことのほうがパワーが必要なように。
この物語の人物は皆、人であり人間だった。御伽噺の住人ではなく、現代を生きる人間という生き物そのものである。飯を食べ、便を排出する。夢を買い、現実で埋める。人と人の気薄な関係と奇妙と呼べる程の縁。そして、沢山の生き物の死。死を頂いて生きている日常。私は時々考える。この地球上に綺麗なものと汚いものを並べたら、どちらが多いのだろうって。骨風はその答えを少しだけ匂わせていた。
著者の人柄を私は知らない。この物語の主人公が誰を指すのか僕は考えなかった。幸せだとか不幸だとか、そういう尺度で読まなかった。そしてこの本を読んでなにかが変わったりはしなかった。だけれど、読み終わった時に、よかったと一つそう思った。読んでよかった。でもあるし、物語が終わりってよかったという意味でもあった。
この本を誰かに薦めるとしたら、私は誰に薦められるだろうと考えた。一番に浮かんだのは父。鼻で笑い飛ばすだろうか? 母。きっと母とは感想を語り合えない。もっと未来が遠くて、昔が短い人。そうだ、これから出会う私の伴侶となる人。その人にこの本を薦め、語り合いたいとそう思った。
本を読んでなにかを得るという体験は、実は少ない。否、そういう体験は私自身少なくて良いと思っている。でも、心に釘を刺す一行。それに出会える時、私は良い読書体験ができたと感動する。この本が貴方の心を動かす、そんな予感が確かにしている。
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鉄と戯れ、ゲージツする日々。
父親に殴り続けられた日々。
蜂に刺され、シカが迷い込む山での生活。
生と死を見つめる私的短編集。
死んだらみんなおんなじだもの。
みんな仏さんだから。
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この本をもっと世の中に広めたいと糸井重里さんが
天狼院書店にもちかけ 本のタイトルを伏せ
「糸井重里秘本」として販売。
買った人が守るべきルールは 以下の3点
・タイトル秘密です。
・返品はできません。
・他の人には秘本のタイトルを教えないでください。
この大人の遊びにとびつき 即 予約!
そして 昨日 本のタイトルが公表されました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151104-00000098-spnannex-ent
http://tenro-in.com/hihon/14234
鉄のアーティストとしてしか知らなかったクマさんが
こんな人間臭い小説を書かれていたとは…
過酷な人生を歩んでこられたのに それを淡々と描写し
暖かみさえ感じる語り口に さわやかな読後感に満たされました。
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例の秘本で購入。著者の作は初。どこか朴訥としているようでありながら、繊細な語り口に引き込まれた。とても沁みる作品でした。
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クマさんの半生が淡々としかし骨太に描かれる。
時々現れる心の描写、情景描写が、驚くほど細やかで鮮やか。
山間での暮らし、老いた母親とのやりとり、幼い頃の記憶、ヤクザものの親類とのいざこざ…読み終えても情景が蘇ってくるよう。
スイスイ読ませるが、しっかり”残る”傑作だ。
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ゲージツ家くまさんの半生を描いた私小説。
かっこつけずありのままを淡々と描いたずっしりとした奥行きのある作品。
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私小説と言うか、完全なフィクションのよう。
でも、エッセイでもなく完全な文学作品だ。
じわじわ響く。
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ゲージツ家のクマさんこと篠原勝之の自伝的小説。父親からのDVから逃れるために17歳で北海道を家出し、肉体労働、結婚、家族離散、借金、愛猫、スキンヘッド、母親の痴呆、そして、実弟のたかりと死。鉄とあいまみれる連作集。
目がなくなっちゃうほどニコとした笑顔が印象に残る人だけど、こんなに凄まじい人生を送ってる人だったのか。過剰な修飾をおさえた文に、クマさんの感情が乗り移ってるかのようだった。クマさんが自分の子どもに手をあげた時、ああDVって次の世代にも連鎖してしまうものなのかしらと思ってしまった。絶望したクマさんはすぐに一家離散させたけども。ただ、読み終わった後はなぜか爽快な気分になれた。
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糸井~!脚色あり。富士山麓に墓を建て、富士山を拝めば墓参り。実話なら皆草葉の陰で苦笑い。解散家族はどうなの?
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雑司ヶ谷に天狼院という異色の本屋があり、ちょっと前にそこでやってる「秘本」に糸井重里が乗って出した「糸井重里秘本」。中身は「ゲージツ家」クマさんの自伝小説。秘本として売り出した後に泉鏡花文学賞受賞して、版元も期待してなかった重版になったようですが、これ面白かった。ちょっと話が堂々巡りするところも有るけど、北海道やモンゴルや信州や隅田川やニューヨークの光景を、かなり繊細に頭の中に描かせるこの人の文章、面白いです。実は初めて読んだんだけど、他にも結構色々書いてるのね。
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生きざまがすさまじく胸が痛くなる
自然への繊細さ、創作に対するひたむきさ
それに反して自身の暮らしへの無頓着さ
圧倒されてしまう
でも遠いところにいる人に思えてしまって
≪ モンゴルの 風に舞い散る 父の骨 ≫
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篠原勝之氏の短編連作小説集。小説家が本業ではない氏の自伝的作品集。横暴な父親を懼れて過ごした少年時代。家出して東京で過ごした貧乏生活などが、哀愁すら感じる飾り気のない文章で描かれている。
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「骨風」、「矩形と玉」、「花喰い」、「鹿が転ぶ」、「蠅ダマシ」、「風の玉子」、「今日ははればれ」、「影踏み」
鉄のゲージツ家クマさんによる、八つの短編私小説。エピソードのひとつひとつが壮絶過ぎる。よく、生きてここまで。
本人は達観しているのか、何かに守られているのか。
もしかしたらそれは楽天家のお母さんか福猫のGARAなのかもしれない。
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一時期TLで話題になっていた覆面本.「ゲージツ家」のクマさんこと篠原勝之の私小説.昨日読んだ島田雅彦の本ではないけれど,それこそ自己セラピーだ.自分を肯定するために書いたのだろうな.
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作者は鉄のオブジェを作るあのゲージツ家のヒトです。そういや最近TVで見ないなぁって考えながら読み始め。TVではいつも朗らかな笑顔だった印象を裏切る、結構ハードな人生が語られています。そういえば「幸せ」はどんなに裕福で恵まれた環境でも、その当人がそう感じなければ永遠に得られないそんなものだったっけか。きっと「不幸」も同じように、当人が感じなければ永久にやってこない、そんな曖昧なものかもしれないと。生きてる痛みも感じなければ傷むことなく生きられるのかもしれない。本当は暗くて重たい話だけど、高原の朝の空気のような清々しい気分で読了できる、ちょっと不思議な一冊です