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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
滞在先のネパールで起きた王宮で王族たちが殺害されるという事件が起こる。フリーのジャーナリスト太刀洗はこのセンセーショナルな事件を取材していく。主人公の太刀洗を通して、訴えてくるものは報道の存在意義。特にラジェスワル准尉の問いかけは、記者と視聴者の温度差を指摘して、ジャーナリズムのあり方を考えさせられるものでした。そして、さりげない会話の中に潜んでいる伏線が最後に爆発する様は圧巻。
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投稿者:まこぼん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公が追い込まれるように、私も色々なものを付き付けられました。
再読します。
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読んだ時に感じたことは「これはやはりさよなら妖精の続編である」ということでした。
二つの作品に共通している点として「外国の事件に対する日本人の立場を明らかにしている」という点と「その日本人に対して抱く、当事者である外国人の感情を物語の軸に据えている」という点が挙げられます。
前作であるさよなら妖精は高校生の視点で描いていてその日常に紛れ込んだ外国人という非日常を描いているためより前者のテーマが強く、今作では外国という非日常の中に紛れ込んだ日本人という日常を描いているためより後者のテーマを強く感じました。
また、今作と前作ではともに日常と地続きになっている地に足のついた論理で非日常で起きた事件にアプローチをしていました。しかし今作では論理よりも犯人の心理=動機に重点を置いていたようにも感じます。最後に明らかになる動機の上手さに米澤穂信という書き手のレベルの高さを感じました。
非常にテーマ性の強い小説であったと思います。
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ミステリー大賞を受賞した作品ではあるが、そのネタとしてはそんなにひねりはなく、早々に犯人も動機もわかってしまったが、それに報道の在り方とその功罪を物語の背景としたところが本作の肝であろう。その報道の在り方にトラップを配した真の犯人というのが殺人事件とは別の本当のミステリーということではあるが、そこまで自覚して少年は対応していたのかというのが疑問。ただし、流石に対象受賞作。実際の事件を背景として偶々、そこに配された人物達を駒として実に良質な話となっている。タイトルとなっている意味について語られる
るニュースはサーカスという寓意が物語の肝となっている。
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10/2015 読了。
献本企画でゲラ読み。
持ち運びが出来ないので、読むのに時間がかかった…。
(ちょっと誤算でした。)
他の方がもうたくさんレビューしてらっしゃるので、
今更な気もしますが、一応簡素ですが。
米澤作品は何作か読んでいるけれど、
久々に読みました。
『さよなら、妖精』は読んでないけれど、
これ単体でも十分読めました。
前作にも手を出そうかと思います。
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ぬう……面白かったけど、色々1位だったから、期待度が高すぎたのかもしれない。一昨年の短編集の方が好きだな……。
メッセージ性が前面に出過ぎちゃってるのかなー。いやどりの好みよりは、って話ですけど。
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御好意により、少し早く読むことができた。感謝しております。
ネパールに取材に訪れたフリージャーナリスト太刀洗は、そこでナラヤンヒティ王宮事件に遭遇する。そこで知り合った王宮警護にあたっているラジェスワル准尉が、殺害の上で曝された。その背中にはナイフで密告者の意味の言葉が刻まれていた。なぜ彼は殺されたのか、王宮事件との繋がりは、というミステリ要素があり、複線も楽しく登場人物もそれぞれ魅力的で、真相は結構意外で面白い。が、真の主題は報道とは何かという結構重いテーマである。これがこの本の題名が意味することとなっている。
今の生温く平和極まりない日本に生まれ育った身には、ネパールの少年サガルの言葉が心に刺さる。世界各地の出来事を報道で知り、ひたすら消化している我々。定期的にしているユニセフへの寄付すらも自己満足に過ぎないのではないのか、そんなことまで考えさせられる。
チャイを飲みたいな。
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図書館で。ネパール王族殺害事件を物語りの土台としてフリーのジャーナリスト大刀洗万智が『伝える』ということは何なのか?どういうことなのか?深く向き合っていくストーリーにぐいぐいと引き込まれました。ネパールに行ったことも無いのに景色が目の前に広がっているように空気感すら感じられる物語。最終章で万智さんが辿り着いた道に胸いっぱいになりました。誰かの悲しみが「サーカス」にならないように。受け取る側の私も心に刻みたいです。
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『さよなら妖精』から十年のときを経て、高校生だった太刀洗万智は、異邦でふたたび大事件に遭遇する。絶賛を浴びた『満願』をも超える、現在最注目の著者の最新最高傑作!
『王とサーカス』ブクログ特集ページはこちら
http://booklog.jp/special/yonezawa_honobu
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とある友達がちょうどあるSF作家の死をネタにして販売を促進する行為を憂いていたので、よくわかった。
私はさよなら妖精が推理小説の中で一番好きなので、続編をゲラ版で読めて嬉しかった。
この作品ではよく祈りについても取り上げているが、それは私たちがする祈りという行為が、釈迦の黙している行為と似ている事を表したかったのだと思った。
文化の違いも適度に出せていてよかった。
さよなら妖精では主人公の無力感が強かったが、こちらは一定の答えを導き出せているように感じた。
この本に出会えてよかった。
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「さよなら妖精」の探偵役、真智が主人公。その後が読めるとは…!
ネパールが舞台で、実際の事件が描かれている。もっと知りたい。
悲劇が娯楽になってしまうこと、正義感が不幸に繋がってしまうことなど、他人事ではない。
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11年の時を経て,「さよなら妖精」の「続編」(物語的には独立している)が読める日が来たことが嬉しい。そしてこの物語を,今29歳の自分が読めたことを,心から嬉しく思う。
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雑誌取材の準備で旅行に訪れたネパールで起こる王族の殺人。急遽、事件の取材を始めた主人公の前で、一人の取材対象者が謎の死を遂げる。彼の死は王室の事件と関係があるのかないのか。穏やかな時間が急激に不穏さを増していく中で、主人公は、報道とは何か、自分のやりたいことは何かを迷い、自身を見つめ直し、報道するものとしないものの選択を迫られることとなる。
作者自身の問題意識や悩みが伝わってくるテーマ性の高い作品です。派手さはないですが、静かな緊張感に満ちており、丁寧な描写と相まって作品世界にどっぷり浸かることができ読むのを楽しめました。考えさせられることも多く読み応えあります。
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2001年。旅行記事の取材の下見のためネパールを
訪れたフリージャーナリストの太刀洗万智。しかし
現地に着いてから数日後、王宮で皇太子による王族
銃殺という衝撃的な事件が起こり、太刀洗は現地の
様子を伝える取材を開始するのだが…
ブクログのゲラの献本企画が当選し、発売前に
読ませていただきました。
この本の大きなテーマは「なぜ伝えるか?」と
いうこと。ジャーナリストの万智はある人物に
対する取材の際、「なぜ直接関係のない国のことを
書こうとするのか」「書いたところで、それは結局
悲劇という娯楽とされて埋没していくだけではない
のか」「それなのになぜ、自分たちの話したくない
ことを話さなければならないのか」と質問され、
詰まる場面があります。
そしてそこから彼女は、自分の仕事の意味を考え
始めます。自身のすることに何の意味があるのか、
そう悩む彼女の思考というものがとても真に迫って
いて、その苦悩が読んでいる自分にも伝わってきます。
また記事の執筆時でも、この写真を使うかどうか、
派手さを狙ったセンセーショナルな記事で、自分の
名声を上げ次の仕事につながりやすいようにするか
それとも派手さはなくても事実に忠実な記事を書く
のか。そうした揺れる心情もとても上手く表現されて
いたと思います。
そして、その苦悩は物語の最後の対峙のシーンに
もつながってくるのですが、その待っていき方も
とても上手いです。その苦悩あったからこそ描かれる
結になっていて、万智のジャーナリストとしての成長、
が分かるのはもちろん事実から真実を創りあげようと
する人の性の怖さ、というものが見えてきます。
そうした大きなテーマとはまた別にネパールの
現地の雰囲気や日常描写がしっかりと書き込まれて
いて、そうした点でも米澤さんの巧さを感じました。
今やSNSの発達で簡単にだれでも情報発信できる
時代になりましたが、発した情報が真実なのか、
それとも事実から無意識的に創りあげた物語や
思い込みなのか、
ジャーナリストでなくても考えないといけない
のかもしれないと少し考えてしまいました。
2016年版このミステリーがすごい!1位
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少しずつ読み進めようと思っていたのに、結局一気に読み終えてしまった。
それもこれも、最初に扉の一言に打ちのめされてしまったせいだ。
本作は、前作『さよなら妖精』の10年後。
フリーの記者となった太刀洗万智が、ネパールで遭遇した事件についての話だ。
とはいえ、はっきり言って、本作の中で前作の『さよなら妖精』との直接的な関わりはそこまで明言されていない。
マーヤの事を匂わす話でさえ、片手で足りるほどしか出てこなかったのでのはないだろうか。
けれど、万智がネパールで遭遇した事件、そこで出会った人々を通して出した「なぜ伝えるのか」に対する答えを思い返すほどに、言葉にはならないあらゆる所にマーヤの残したものを感じずにはいられない。
深読みのしすぎかもしれないが、前作で知ってしまっていたゆえに「忘れたい」と繰り返していた万智だからこそ今の職業を選んだのだという気がするし、そう考えれば、たどりつく答えも最初から一つしかなかったような気がする。
だからこその、扉の言葉なんじゃないだろうか。
くよくよとその人との思い出を語るだけが、その人を想うことではない。
いつまでもその人のことを思い出すことだけが、その人が大事だった証ではない。
多分、そういうことなのだろう。
ところで、改めて『王とサーカス』というタイトルを見ていて、ふと、ゴダールの『気狂いピエロ』を思い出した。
サーカスにはピエロがつきもの、というせいもあるが、あの映画のヒロインが車の中で口にしていた台詞が、今回の話とリンクしたせいだ。
「“その他大勢”って、悲しいわ」から始まる、あのセリフ。
“ベトコン115名”から何も分からないのと同じで、ニュースは当事者たちの人生を、日常を語ってはくれない。
そんな中、上っ面だけで言う「真実を伝えなければならない」「同じ悲しみを繰り返さないために」はパフォーマンスにすぎないんじゃないだろうか。
記者はもちろん、そうして発信された情報を受け取る側の私たちも、誰かのかなしみをサーカスにしないように、万智のように考え続けなければならない。