紙の本
小国に学ぶことはできない
2007/10/02 10:09
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が本書を記した意図が、現代の日本政治・社会の有り様について、小国から学ぶこともあるはずだというものであるならば、その意図が成功しているとは言えない。
本書を通じて明らかになる、いわゆる「マイクロ国家」の実態の有り様からすれば、結局、マイクロ国家は、現実の国際政治社会において、実質的な存在としては存立できはしないということではないか。
要すれば、資源収入に頼った権威主義的国家運営を行うか、「炭坑のカナリア」を装って機会主義的行動を取るか、「国家主権」のベールを利用して制度の隙間をついたレント・シーキングを行うかという、有り様しかないということだ。
結局、世界全体の経済厚生をプラスする、プラス・サムの活動はできす、国際レントをどうにかして獲得するという行動しかとれていないということであろう。
まさに、その行動原理は、国際経済学における「小国の仮定」そのものだ。
少なくとも世界経済・人口に占める割合が有意である日本の国際政治社会における行動の指針においては、この「小国の仮定」はふさわしくないというよりも、現実的適応可能性を持っていない。
このような意味で、本書で展開される「マイクロ国家の有り様」は、国際社会を知る上で非常に示唆に富むものではあるが、現代日本の国論に及ぼす影響は極めて限定されている。いや、基本的に参考にはすべきでないと思われる。
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キリバス、ツバル、赤道ギニア、バチカン、フィジー、トリニダーゴなんたら、バーレーン、サンマリノ、ルクセンブルク、リヒテンシュタインなど等
世界の小国がどうやって生き延びてきたか、どうやって大国と共存しているかについて書かれた本。
若干歴史とか今の状況とか詳しすぎな部分もあるけど、
さすが著者が開発出身なだけあって、各国の貧困状況とか、オフショア・センターとか、船籍とか、捕鯨とかの票による国際援助の獲得(買収誘引)とか、冷戦時代の米・ソや中・台の取り込み方とか、小国も色々黒いなと思いましたよ。
あと何より環境問題。ツバルとかリアルだもんね。
「世界の良心」とかいう美称をあげてたけど、みんな結局自分が一番かわいいだけやん!
あと、前半で、やたらにモンテスキューとかポリスを持ち出して、完全な民主主義の実現には小国が一番いいって言ってた。
かと言って、みんなが民族自決したら、大変なことになるってことはさすがによくわかってるけどね。
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ロシアや中国、アメリカと比べて、日本は(面積が)小さいなぁとはよく思っていたけど、世界にはさらに小さい国もある。
知ってはいたけど、その国がどのような政策でこのグローバルで、大国主義な世の中を渡り歩いているのか、結構面白かった。
したたかな国もあれば、弱者になっている国もある。
必ずしも小さいから弱いのではない。ようは、それをどのようにとらえ、政策に転じるのかだと思う。
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20/8/22 50
21世紀をリードする国は広大な領域国家ではなく、むしろ小さくとも優れた技術力、金融・経営スキルを持ち、世界各地の生産要素を巧に組み合わせる通商ネットワークを操る「バーチャル国家」であろう>国際政治学者ローズクランス
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世界にはまだまだ知らない小さな国がたくさんある。大国よりもこういう国と付き合うことが大切。
日本も昔は小国だった。
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現在、およそ二〇〇ヵ国ある独立国のうち人口一〇〇万人に満たない「ミニ国家」と呼ばれる国々が全体の五分の一近くを占めている。今後も国際社会で増えていくと見られるこうしたミニ国家はその数の多さにもかかわらず、大国に比べるとしばしば等閑視される。しかし、一見脆弱なそれらの国々は「小国性」をハンデではなくむしろ武器として利用するしたたかさを備えている。この本ではツバルをはじめとする小国の実態に光をあて、ミニ国家が生き残りをかけて国際社会でどのように活躍しているかを明らかにしている。『援助という外交戦略』と内容が一部重複。
アフリカやヨーロッパ、カリブ海、南太平洋のミニ国家の戦略がどれも特徴的で面白い。ミニ国家に対して、「小さな楽園」(「世界一幸福な国」と言われるブータンのような)と外から侵略を受ける危険性を孕んだ「弱い国」の二つの側面を持つ国々、というイメージを漠然と抱いていたが、各国の強みや問題を具体的に知ることができて良かった。
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ミニ国家のユニークな存在は、国づくりや地域づくりに大きなヒントを与えてくれそうだ。したたかな外交戦略や個性的な経済政策は、とても興味深い。