紙の本
権力が衰退している!
2018/12/08 14:12
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、今日の権力がもはや維持も継続もできない状況になっていることを丁寧に解説した書です。すなわち、権力の劣化・衰退が起こっており、これは富裕層をはじめ、中産階級や生活貧困層に莫大な影響を及ぼしかねないと著者は言います。一体、どのような影響が出るのでしょうか。詳細は、ぜひ、本書をお読みください。なかなか興味深い内容です。
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権力が劣化したメカニズムや如何に?
2016/05/07 21:09
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投稿者:般若泡とネクトル - この投稿者のレビュー一覧を見る
技術の進歩による貧困国の寿命増大、発展途上国での都市への人口の移動および増大した中間層の個人的充足や自由の追求といったものが大きな構造的背景にあり、政府、政党、軍隊、大企業や宗教団体といった既存権力への挑戦の障害となっていた事柄が、その他詳細要因にもよって、いかに劣化され、それら既存権力がいかに勢いを失ってきたかが、非常に厳密に、また、体系的に ー 例えば、我が国でも身近に感じる既存政党のパワーの劣化が、グローバルで構造的に起きてきており、それがどの様なメカニズムで起こってきているのか等が詳細に分析され ー 記述されている。
題材としては、ニュース等を通じ断片的に見聞きしている事柄が大半だが、それらを鳥瞰的に、細部に渡り体系的に把握し、分析する著者の非凡な能力は圧巻レベルであり、終止、目を見張りながら読み進めた。
著者は、リビア生まれのべネズエラ人で、MITで理学修士・博士号取得、べネズエラ開発相、世銀理事やフォーリンポリシー編集長経験者であり、ラテン世界の高名な論客との事。
個人的には、読後、テクノロジー起因以外の部分で、ポエニ戦役を通じて成長していったローマに対比し、ギリシャが衰退していったメカニズムとの類似性やその帰着点に、思いを巡らさずにはいられなかった。
本書は、紛れもなく現代の文明の一面を鋭く抉る視点を与える大著だと考える。
私的考察ではあるが、”イノベーションのジレンマ”の中のクリステンセンの視点と併せる事で、読者は、現権力保持側にこの先何が起こるのか、何をなすべきかの輪郭がよりはっきりと見えるのではと考える。
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借りたもの。
世界的に起こっている、“権力の終焉”
記憶に新しい「アラブの春」など、独裁政権が打倒されるこの現象は、民衆にとって真に喜ばしい事だったのか――
最近の権力者達は「かつて程、権力を行使する事が難しくなった」と語るという。
それは政治に留まらず、経済、軍事、宗教やNGOに至るまで広範囲に及ぶ。
そもそも権力とは何か?
その定義から、現代の“権力の終焉”が何故起こり、何がもたらされようとしているのかを模索する。
「コスト削減」と「効率化」をによるウェーバー主義のヒエラルキーシステムによる、官僚・企業の巨大化(でそのトップに立つものが行使する)が現在の権力と指摘。
企業においては、それが生み出す大量生産・大量消費が表面的な経済的豊かさをもたらしていた。
しかし、「豊かさ革命」「移動革命」「意識革命」の3つにより、人々が土地であれヒエラルキーの中であれ縛られなくなったことが、権力の束縛する力を失わせたという現象を指摘。
様々な分野の歴史や事象を多岐にわたって簡潔に紹介しているので(だから分厚い!)、説得力がある。
大規模なものに、小規模な者達が挑む社会となった。
それは単純に喜ばしいことなのか、デメリットも指摘している。
無秩序、意思決定に時間がかかる事、短期で政権やトップが変わってしまい一からやり直し等――
“権力の終焉”が単に古い権力から新しい権力に移行したわけではないことがわかる。
結論の無い現在進行形の事象だ。
政治・経済のニュースを見るときにこれを頭に入れていると、何かが見えてくる。
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レビュー:権力の一極集中がますます進みつづているという一般認識とうらはらに現在の権力に先任者ほどの力はない。手に入れやすく行使しずらい、そして簡単に失われやすいとの事。
ここ最近で最も新しい視点を持つ事ができた一冊
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権力とは何か。国家や企業がかつてのように安易に権力を行使できないのはなぜか。「より入手し易く」なった一方で、「使いづらく」なった権力の”衰退”のメカニズムを、幅広い視点から解き明かした一冊。
権力とは、物理的強制力、規範、説得、報酬によって他人を動かす力であるが、世界的な豊かさの拡大とヒト・モノ・カネ・情報の移動に伴い、人々の権力に対する意識が変化したことで、権力に対する「参入障壁」が弱体化し、所謂「マイクロパワー」の台頭が政治、ビジネス、宗教等あらゆる分野で進行している。これらの動きは、イノベーションによる選択の自由というメリットをもたらす一方、特定の利害を代表する個人やNGO、小規模政党・国家の増大は、円滑な意思決定の阻害要因にもなっている。
権力の「過度な集中」と同様に「過度な分散」も危険であり、無秩序化といったリスクを避けるためには、人々が政治を再び信頼すべきであるという主張は、著者のベネズエラ開発相としての”挫折経験”をふまえれば多少、割り引いて考える必要はあろうが、「権力」を切り口にして今、世界で何が起こっているのか知るには十分に読み応えがある。余談だが、本書を読むと、日本の「安保法案騒動」が世界的には”周回遅れの議論”のようにも思えてくる。
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歴史、文化、社会問題、戦争など、世間のあらゆる事象を権力という切り口から分析し、権力のコンテクストでその変遷と今後の展望を占った本。切り口が違うだけと言ってしまえばそれまでであるが、まとめ方が変われば見えてくるものもまた変わってくる。
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権力(他人に何かをさせる能力、させない能力)がどのように歴史的な変化、世界を変える変化を遂げているかについて論じた本。
・権力者が抱えるギャップは、実際の権利より、周りが持ってると思っている権力が遥かに大きいこと。
・権力が劣化している、このメリットは社会がより自由になり、有権者にとって選挙の機会と選択肢が増え、コミュニティをまとめる新しいプラットフォームがアイデアと可能性を広げる。デメリットとして、国家ぎ問題対処のための必要な決定を下せなくなり、テロリストなどの非国家主体を駆り立てている。
・集団行動問題の亜原子化、小さなプレイヤーと短期的なイニシアチブの増加拡散は、特定の社会的目標に向けられた実在の強力な連合が組織化できなくなるリスクをもたらす。これはソーシャルメディアの広がりがもたらす個の立ち上がりの負の側面。
・政治、政府、政治参加にはまだ破壊的イノベーションが起きていない。しかしこれは間も無く来るだろう。
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--権力が弱体化している。
「米国覇権の揺らぎ」は明らかだが、一方で中国共産党の権力は盤石に見える。本当に「権力は終焉する」のだろうか?
ザッカーバーグが二週間に一冊本を読むと宣言した際にその一冊目として紹介された本書。本書によると、第五章で「独裁者から民主主義者へ」「多数派から(多様な)少数派へ」と権力が分散化すると主張する。
中国やロシア、シンガポールなど一部の強力な権力を掌握する独裁国家がうまく行っているように見えるのは、国家パワーが「北から南へ」「西から東へ」大移動している時流に乗っているに過ぎないという考え。この背景には、テクノロジーの進化、人口動態、人の移動(移住)などがある。
本書から得た教訓として、「権力の座」という「椅子取りゲーム」は急速に「無理ゲー」化していてること(とはいえ、その椅子への富の集中はさらに拍車がかかっているとも思う)。
なので分の悪い「権力闘争」をするより、権力を大雑把に振り回してきた側から、「そのイシューに対して資源を多く出している人に適正に権力を分配する仕組みづくり」に賭けた方が面白うそうだ。