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東京・江古田にある下宿、真綿荘に住む5人それぞれの恋の物語。
性格の悪い美人に振り回される大和くん。彼に片想いをするも、大学の先輩に告白されて揺れる鯨ちゃん。
とある過去から男嫌いになり、今は女子高生の八重子と付き合っている椿。
真綿荘の大家で小説家の綿貫さんは、「内縁の夫」と呼ぶ画家の晴雨さんと離れられずにいる。
“普通の恋”なんていうものは無いのだと思う。この小説に出てくる人たちの恋も、みんな変だし、きっかけも普通じゃなかったりするし、理解に苦しむ恋もある。
普通じゃないのが当たり前なのだ。なんて、パラドックスに陥りそうだけど(笑)、実際そうなのだと思う。
とくに大家の綿貫さんと晴雨さんの関係は、すぐに理解しろと言われてもとても難しい。
それぞれの恋がひとつの短編になって進んでいく短編集で、何となく謎を残しつつ、最終章ですべての謎が明かされる。
みんなそれぞれコンプレックスを抱えているから自信がないところもあって、その欠けた部分が愛おしく思えた。
とくに鯨ちゃんが好き。なぜか安心できて悩みを打ち明けてしまう彼女のような人っている、と思った。コンプレックスが強いからこそ、他人のこともめったに否定しない人。
ちなみに表紙はこの写真のものではなくて、2015年夏の青春フェアのスペシャルカバーのものを購入。他のも可愛らしいのばかりだった。
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みんな自由だけど、芯がないというか奔放で苛々した。
綿貫さんとせうさんがハッピーエンドな理由もよくわからないし。
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大好きな「ナラタージュ」には遠く及ばなかったけど、一つの下宿に住む住人達それぞれのストーリーで悪くはない。
でも、つい胸を締め付けるような切なさを島本さんには期待してしまうので、その期待には今一つ答えてくれなかったかな。
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鯨ちゃん。どんな子なのかな?
名前がいいですね。
こんな下宿があって、そこに住んでいたら、それはいろいろなことが起こることでしょう。
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初・島本理生さん。
興味深いという意味では面白い作品だと思いますが、好きかと問われれば・・・。
レスビアンだったり、奇妙な内縁関係だったり、片思いの連鎖だったり、古い下宿屋・真綿荘の住人の恋愛関係が連作短編として描かれます。
それぞれの想いは純粋で、ただそれが普通の形では無いだけなのですが、それが幾つも重なって行くと、どこかドロドロとした感じになってしまい。。。どうもそういうドロドロの恋愛物は苦手と言うか、そそられないテーマなのです。
ただ、鯨ちゃんの造形には救われました。
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真綿荘という下宿の5人の住人と1人の管理者の話。物語は各章ごとに中心となる人物がおり、進んで行く。
恋愛が中心だが、いわゆる普通の人とはすこし変わっている人が登場人物なので、苦悩・葛藤がそこに入り込んでくる。
表現方法が文学的にしようとしているが、その言葉遣いは必要なのかと思うわざとらしい点が多少目についた印象がある。
個人的には「もやのかかっていた違和感は、そんな風に言葉にされてしまうと、ひどく月並みで自分がとても卑屈な人間に思えた」という文章が好きだった。
他人におすすめするか、といわれれば微妙だが、興味をもっている人がいたら、読んでもいいんじゃない、と言える程度にはおもしろかった。
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これは、、
私は今までずっとナラタージュが大好きで、ナラタージュが出た当初高校生だったんだけど、その頃から私の心に留まり続けて、こんなに読んだあとその世界観から抜け出せなくなる小説はない、と思ってたんだけど、、
綿貫さんに共感しまくった。
完璧に所有されたいという気持ちが自分の中で物凄くしっくりきてしまった。
最後は感動して涙こぼしながら読んだ。
映画のようなドラマチックな描写。
その流れは絶対婚姻届でしょ、と普通ならなるところ、この2人にとっては養子縁組の書類。
この世で一番頑丈で強固な束縛。
ちょっとこう言ってはなんだけど、羨ましい。
実際養子縁組って現実的ではないんだけど、、。
晴雨さんの不器用さが愛おしい。
君の夢を叶えよう
なんてめちゃくちゃ言われたい笑
そして1人1人の登場人物がみんな愛くるしい。
久しぶりにいい小説に出会えた。
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下宿「真綿荘」に暮らす人々の日常を、それぞれの恋愛模様に主軸を置いて描いた作品。登場人物たちが良くも悪くも綺麗な人々だな、と思った。だからこそ最も歪んだ形でお互いを求めあっている綿貫さんと晴雨さんの2人が魅力的に感じた。島本節とも言える抉るような毒が柔らかく薄められて散りばめられた下宿物語。
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真綿荘という建物が舞台の短編連作。
それぞれの登場人物たちの抱えるコンプレックスと秘密。それぞれ事情ありそうな憂く雑な心象を少しずつ紐解かれていく感じ。
大和君の天真爛漫さや無邪気さが見せる無遠慮さに傷つけられた人って鯨ちゃんだけでなく人知れずいたのだろうなと思ってしまった。
鯨ちゃんの人柄といいエピソードと言いとても分かるものだったので、彼女自身を求めてくれる男性が現れたことは良かった。
先輩も若干面倒そうな人だけれど、お互い素直な純粋な人たちなので末永くお幸せにと思う。
他の二カップルは、理解しがたい面もあるけれど。お互いのカップルがお互い蔵族嫌悪的なところも見え隠れする。
自分自身も他人も分かり合えないけれど求め合う。
島本さんのお話はまだそれほど読んでいないけどどれも引き込まれる乾いた土に水がしみ込んでいくような感。
あの建物に引き込まれる人は抱えているなにかが重いな。と感じる。
だからこそこっそりと隠しながら普通の人ですって顔(普通には見えないけれど)で生活できるのかな。
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読み始めは、いつもの島本理生さんより明るめだな、『クローバー』みたいな雰囲気かなあと思ったらしっかり島本理生さんワールドで、とても好きでした。こんな物語が読みたかったな、という作品を島本さんはいつも与えてくれます。島本さんが描く、簡単に言葉に当てはめられない関係は、いつも読み応えがあって不思議な気持ちにしてくれます。
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描写だとか比喩だとか、そしてキャラクターのつくり込み具合だとかを確かめる、そんな分析の目で眺めもしつつ、でも、フィクションをしっかり楽しむ自分も確かに居て、豊潤な時間を過ごせる読書でした。いろいろな素材が、自然とひとつの作品のなかで調和する、そういうような出来あがり方を感じもしました。各章でいろいろと、見透かされたり見破られたりしている、管理人の綿貫女史が主人公の最後の章が、いちばん好きだったかなあ。ぐっと核心部分をそらさず、かといって重くなりすぎず話が進んでいきます。それはきっと、それまでの章での物語性が積み重なって柔らかくもしています。最初の章で主人公だった大和君が、途中再度また主人公として恋愛の逃避行につきあわされるという、旨味あるエンタメがあって、また、心の在り様がすてきで、大柄ながらいわゆる乙女である鯨ちゃんの切ないエンタメがあり、はたまた、同性同士の恋があります。
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一見、爽やかな日常を送ってるように見える住人達。でも彼らの心の中はいつも誰かを想って、悩んで…。平然と振る舞いながらも、それぞれ秘密を抱えている。島本さんの本はやっぱり人間らしくて、情景も素敵でした。でも、養子縁組が何回考え直しても謎。
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真綿荘の住人達と言うのだから、誰!が主人公ってわけではないのかもしれないけど、やはり誰かではあって欲しかったところ。面白くなりそうでいて、さっとかわされてしまうのが意図的だとしたら脱帽なんだけど。
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『家族とも友人とも恋人ともちがう。けれど、赤の他人とも言いきれない。ゆるやかだが濃密な関係のもと、下宿人たちは食事をし、今日も同じ屋根の下で眠りにつく。(三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ 〈真綿荘の住人たち〉」より抜粋)』
『下宿』と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?木造の古いアパート、すべてがレトロな雰囲気、そして個性豊かな住人たち。私の勝手なある意味ステレオタイプのイメージですが、こんな光景が浮かびます。恐らくそれは昭和を代表するマンガ家たちが若手時代に暮らしたという伝説の”トキワ荘”のイメージがこびりついているからかもしれません。このレビューを読んでくださっている皆さんも、マンガに詳しい方はもちろんのこと、あまり興味がないという方でも名前ぐらいは聞いたことがあるはずの”トキワ荘”。そんな伝説の”トキワ荘”があった椎名町のすぐ隣に江古田という街があります。『八百屋や居酒屋やカフェやパチンコ屋とにぎやかで、だけど妙に親近感の湧く軒並み』、そんな街にひっそりと佇む『真綿荘』。この物語はそんな『真綿荘』に暮らす住人たちの日々の営みを綴る物語です。
『もし俺が第一志望の東京の大学に受かったら、マキちゃん、俺と付き合ってください』と『薄暗くなりかけた教室』で熱意を込めて告白するのは大和葉介。『次の瞬間、櫻井マキは真顔で答えた「いや、ふつうに無理だから」』とあっけなくノックアウト。『たとえ東大に合格したってエッチしていいと思えるほどにも大和のこと、好きじゃないし』と駄目押しし、『金輪際、私を性欲の対象として見るなよ』と言い捨てて立ち去る櫻井マキ。『C判定止まりの大学合格に向けた闘志を新たに燃やし始めた』大和は数ヶ月後『郵便屋さんが大和君の家のポスト』に投函した『合格通知』を受け取ります。そして『大急ぎで櫻井マキの家を訪ねて交際を迫り、今度はローファーの踵で蹴られんばかりの勢いで拒絶されたことは言うまでもない』というオチ。やむなく家に帰った大和は母親と東京での住まいについて話します。下宿を勧める母に『下宿なんて、俺、嫌だよ。門限とか色々と面倒臭そうだし』と渋る大和。『大丈夫。朝夕食付きの上に、うるさい規則は一切なし。お風呂は共同だけど、トイレは各部屋についてる』と母親が目星をつけた物件の説明を受ける大和は『ボロいアパートでいいからやっぱり一人暮らしのほうが』と粘ります。それに対し『あんた、どうせろくに勉強もせずに女の子連れ込む計画でしょう。そんな下心丸出しに…』と上手を行く母親に一言も反論できない大和。『アパートの下見すら一度もすることができないまま』、『荷物は上京二日前に東京へと送られ』ます。そして『品川駅へ着くと、あまりの混雑ぶりにめまいがした』という大都市・東京へとやってきた大和。『ようやく乗り換えた電車が江古田駅に到着したとき、彼は世界一周の旅を終えたような気持ちだった』と『人通りの多い商店街』を歩きます。『ようやく目的のアパートを見つけた』大和の目の前に建つ『由緒正しい木造二階建てのアパート』。『ブロック塀に、「真綿荘」という表札が出て』います。『ほっとしたのもつかの間、大和君の中で急激に緊張がこみ上げてきた』という瞬間。『あれ、お客さんですか?誰にご用ですか?』と『チェックのプリーツスカートを穿いた女子高生』に声をかけられると『直立不動のまま、絶句』する大和。『とっさに三つの選択肢が浮かんだ。”大家さんを呼んできてください”、”名前を教えてください”、”今、彼氏はー”』という大和の頭の中。しかし『男と付き合ったことありますか?』と『童貞の大和君は、第四の選択肢を導き出してしまった』という情けない展開。それに『ありません』と『彼がひるむほどの即答』をした女子高生。そんなズッコケな第一歩ながらも、大和の『真綿荘』での下宿生活がスタートしました。
6つの短編から構成されるこの作品。視点が短編毎に切り替わりながら展開していく連作短編の形式をとっています。そして、この切り替えに島本さんならではの一工夫が入ります。それは最初の〈青少年のための手引き〉の記述から登場する『大和君』という表現の仕方です。『大和君は思った』、『大和君は、一歩、前へと踏み出した』、そして『一夜をともにするということを、大和君はまだ知らない』といった感じで何か大和君を主人公にしたドラマのナレーションの語りかのようなその表現。一方で他の登場人物の視点になると『「それでも椿ちゃんが好きだったから、一緒に暮らすことにしたの?」その問いに、私はゆっくりと目を閉じた』というように、その人物に第一人称が普通に移動します。主に6人の人物が登場するこの作品にあって、冒頭から最後まで登場し続けるのは大和葉介のみです。それにも関わらず彼だけがふわっと第三者的に描写される不思議感。そして、そんな独特な描き方は後述する様にこの作品から受ける印象にも大きく影響を与えていきます。
『古い木造の二階建てアパート』を舞台にした作品というと、私の場合、辻村深月さんの「スロウハイツの神様」や三浦しをんさんの「木暮荘物語」が思い浮かびます。いずれも私の頭の中に深く刻まれた”トキワ荘”の雰囲気感の土台の上に独自の世界観を展開する物語です。恐らく辻村さんも、三浦さんも”トキワ荘”の呪縛からは逃れられないのだと思いますし、読者の期待を考えるとそうなるのだとも思います。そんな私がこの作品の一編目で驚いたのは、えっ?これ、島本さんの作品なの?という少しはっちゃけた世界でした。前述した大和と櫻井マキとのシーンもそうですし、『真綿荘』に到着直後の八重子とのすっとぼけた会話なども意外感が満載です。しかし、この感じで最後まで突っ走るのかと思ったら、二編目の〈清潔な視線〉になって一気に島本さんのいつもの感じが戻ってきます。そもそもこの短編のタイトルからして何か嫌な引っ掛かりを感じますが、さらに『愛されなくてもいい。でも、なんらかの形で必要とはされたい。体は死んでいても、淋しさを感じる心の機能はまだ生きているから』とか『それは自分の手首を切り続ける人と、ほとんど行為の本質は同じだった。もっと、絶望しなきゃ。もっと頭を冷やさなきゃ。凍り付いて感情が動かなくなるくらいに』と書かれると、これはもう島本さんの重厚な作品世界にどっぷりと浸かるしかなくなります。それは、男嫌いで女子高生と付き合う椿や内縁の夫と一つ屋根の下で暮らしているはずが何か訳ありな大家の��貫といった、『真綿荘』に暮らす訳ありな人々を設定した以上避けられないものだとも思います。そんな彼らに共通するのは、『過去と現在と未来のように、別物のふりをして、実は一瞬の中にすべてある』という考え方からくる衝動が引き起こすものでもあります。しかし、不思議なのはそんな重厚な作品世界が展開するはずが、作品から受ける印象は最後まで重厚になりきらない点です。島本さんの作品から受ける、ただひたすらに重苦しい世界、それが作品全体を覆いきらず、どこかしらはっちゃけた雰囲気がずっと残った印象を受けるのがこの作品。それが大和の描かれ方だと思いました。前述したように、大和だけが、視点が切り替わってもそれは大和を見る第三者視点での描かれ方であって、大和自身の中に深い闇があったとしてもそれが第一人称として描かれることはありません。『大和君の正直さや無邪気さにはひかれるんです。人のことを素直に誉められるところにも。大和君はすごくニュートラルな人ですよね』と鯨ちゃんが語る大和の印象は読者がこの作品から受ける大和の印象と寸分違わないものだと思います。そして、島本さんはこの作品では『二つの物語が絡み合っています』と語ります。その一つが『純朴にして超鈍感な青年、大和君を中心とした青春物語』というこの作品の”光”の世界、そこに島本さんらしいドロドロとした”闇”の世界が絶妙に絡み合って展開していくのがこの作品なのだと思いました。そんな”光”と”闇”は、”光”を感じる文庫本に対して、”闇”を感じる単行本というように表紙のデザインの極端な違いにも感じられるものでもあります。そんな”光”と”闇”という相反する側面を合わせ持ったのがこの作品の一番の魅力。とても上手く構成された作品だと思いました。
『大学に入ったら絶対に一年以内に可愛くて普通の彼女をつくるのだ、と心に誓った』大和。一方で『愛されなくてもいい。でも、なんらかの形で必要とはされたい』と願う椿。一つ同じ屋根の下に暮らしていても、それぞれが抱く異性の捉え方、他者の感じ方、そして人間関係に対する考え方は当然異なります。そんな色んな人達が集う『真綿荘』を舞台にした物語は、住人たち一人ひとりの顔が目に浮かぶような人の生活の息吹が感じられる物語でした。
「真綿荘の住人たち」、それは『古い木造の二階建てアパート』を舞台にした印象的な物語の一つとして私の中に強く刻まれた、そんな作品でした。
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最近、読書というものがよくわからなくなってきている。
自分と価値観の違う登場人物や、納得できない結末に出会うことが多い。
しかし、読書というのは自分の知らないものに触れることが楽しいという面を持っているはずだ。
私は単純に自分と異なる価値観を受け入れることができない狭量な人間なのだろうか。
ブックオフで2015年文春文庫青春フェア限定カバーの『真綿荘の住人たち』を見つけて、迷うことなく購入した。
フェアをやっていた時は、読んだことのない作家ばかりで購入を躊躇していて、気づいたら書店から消えてしまっていた。
ちなみに2015年の限定カバーの本は5作品あり、宮本輝の『星々の悲しみ』は購入したのだが、柚木麻子の『終点のあの子』と本作品が気になっていた。
私にとって表紙はかなり重要で、読んだことのない作家の作品はジャケット買いの割合がかなり大きい。
表紙を見て、タイトルを見て、あらすじを読んで、買うかどうかを決める。
あらすじを読んで良さそうだと思っても、表紙が気に入らなければ買わないこともある。
表紙は作品全体のイメージを視覚的に表している気がして、そのイメージが合わないと作品も合わないような気がするのだ。
最近は表紙に騙されることも多いから、冒頭を読んだりすることも増えたが、温かい感じのイラストや写真であれば基本的には買いだ。
このフェアの本はかくたみほという方の写真が表紙になっていて、とても柔らかい雰囲気を醸し出している。
調べてみたら、このフェアに使われた写真に連なる作品が収められた写真集が出ているようで、今amazonで購入したくらい気に入っている。
限定カバーの『真綿荘の住人たち』の表紙も素敵な写真で、通常カバーもほのぼのとした雰囲気。
だからあらすじを読んで、宮原るりのマンガ『僕らはみんな河合荘』みたいな感じかと思っていた。
序盤は北海道から上京した大和君の物語から始まる。
春から大学生となる大和君の真綿荘での新生活は何が起こるのかとわくわくさせてくれる。
刊行は「真綿荘」の方が先だが、本当に「河合荘」みたいな感じだ。
空気の読めない大和君は、性格がきつく不倫までしている美人の先輩に振り回され、その中でだんだんと大人になっていく。
そんな大和君に恋する鯨ちゃんは荒野先輩に告白されて、自分の存在を見つめ直すきっかけを得る。
男嫌いの椿は、少し距離を置いて付き合っている女子高生に不意に救われる。
ほのぼのした物語ながら、登場人物には振り回されて楽しい。
6編から成っており、一人称・三人称の違いはあれど、真綿荘の住人たちの群像劇となっている。
一番気に入ったのは真綿荘の住人ではない荒野先輩で、「救ってもらうためではなく、自分で自分を救うために好きであることを続ける」という彼のさわやかさが好きだ。
鯨ちゃんとの結末にはちょっと引っかかるところもあったが、覚悟を決めた彼だからこそ救いがあってもいいのかと思った。
4編目まではこの通り温かい物語なのだが、「押入れの傍観者」という不穏なタイトルの章から状況が一変して見える。
一緒に住んでいる人間の、決して見てはいけない一面を見てしまった衝撃。
過去に自分を傷つけたことのある人間と共に住むことになったらどうするだろうか?
私なら耐えられない。
それを許すことはもちろん、許そうとする他人も受け入れられない。
私のすべてを奪う人がいるのなら、私はそんな人嫌いだ。
でも登場人物のある人は、「私を完璧に所有してくれる」から好きなのだと言う。
その理屈も、奪う側の気持ちもほとんど理解できなくて、物語の最後の最後で興をそがれた気持ちになってしまった。
でも、そういう価値観、全く自分と違う考え方の可能性に気づいて勉強にはなった。
ただ、現実にそんな人がいるのかと考えて、ふと思い当たる。
ダメ男が好きな女性の心理に似ているのか。
だらしない男に尽くして、自ら束縛されにいく人。
現実にいるなあ。
ああ、でもやっぱり彼女たちの行動に納得はできない。
島本理生は初めて読んだのだが、『ナラタージュ』が気になっていた。
生徒と先生の恋愛の話のようだが、また特殊な心理が描かれているのではないかとしばらく手を出せそうにない。