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■ADHD(Attention Deficit Hyperactivity disorder):「注意欠如多動性障害」
・注意,集中ができず,ケアレスミスが多い
・物をなくしたり置き忘れたりする
・片付けが苦手
・段取りが下手で先延ばしする
・約束を守れない
・落ち着きがなくそわそわする
・一方的なおしゃべりや不用意な発言がある
・感情が高ぶりやすく,いらいらしやすい
・衝動買い,金銭管理が苦手
■ADHDが成人でも数多いことが認識されたのは,この10年余りのこと
・成人になって精神科を受診する場合は職場での不適応がきっかけであることが多い
・「真面目に取り組んでいない」「仕事にやる気がない」「能力不足」とみなされることが多く,本人も自己否定的になりやすい
■注意の配分が不得手である。健常者は会話中の相手に対して大部分の注意を向けている一方で自然に周囲の他の人物や事物にも一定の注意を払っているため,不意に予想外の出来事が起きてもある程度の対応は可能であるが,ADHAの人は目の前の相手に「集中」してしまうため,或いは別のことを思い浮かべやすいため予想外のアクシデントが生じると,混乱しやすく動揺してパニック状態になりやすい。
■ADHDの根本的な原因は解明されていないが,少なくとも家庭環境や養育状況などによるものではなく生まれながらの生物学的な要因と関連していることは明らか。
・不適切な養育環境などがADHDの症状を悪化させることはみられる
・脳の器質的な障害によるものであるという仮説は否定されている
・大部分の症例では脳などの中枢神経系に明らかな異常は認められないが軽度の脳は異常の頻度が高いという報告もみられる
・ADHDの基本的な障害は脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドパミンの機能障害であるという説が有力
・二卵性双生児よりも一卵性双生児において障害の一致率が高い
・明らかに近親者にADHDが多い
・同一家系にADHDとASDが混在することもしばしばみられるため,生物学的に関連の深いことが推測される
■有病率は小児5~6%程度,成人3~4%程度
■ADHDは注意力が常に障害されている訳ではなく興味を感じる対象にはむしろ過剰な注意や集中力が向けられる。
■義務的な作業を行う場合や新しい手順を習得する状況において,じっくりと集中して課題に取り組むことが難しいことが多い
■「注意」の主な機能
・持続性
・分配性
・転換性(注意の対象を切り替える)
■ADHDにおいて障害されるもの
・仕事の計画や手順を考えるなど複雑な行動を全体としてプログラムし,これを一定の順序に再構成すること
・マルチタスク状況などいくつかの複数の行動に同時に注意を向けること
・自らの内的な衝動性など不適切な行動パターンを抑制すること
■男子の発生率は女子に比べて高く2対1~9対1と報告されている
■ADHD患者は成人の約3~4%であり,鬱病とほぼ同数存在する。
■成人になって受信するケースでは不注意の症状のために生活面が障害されているものが多い。
■継承のADHDは知的能力が高く十分な教育を受けているケースが多いことを考慮す��と成人期になっても残存するADHD症状に関しては患者本人の自覚や投薬によりかなりの改善が期待できる。
■待つことが苦手なため相手の発言が終わらないうちに自ら話し始めてしまうことがよくみられる。
■頭の中も多動。様々なまとまらない衝動的な考えが常に起こっては消えているため,対話において「相手の話をよく聞いていない」「話の一部が飛んでしまう」ということが起きやすいことから,児童期から思春期になるにつれ,次第に対人関係がうまくとれなくなる傾向がある。
■総じて人懐っこいことが多く,集団に入り込むことは比較的得意であるが対人関係でミスを重ねたり不適切な発言を繰り返したりすることにより次第に「浮いた存在」となりやすく「少し変わった子供」とみなされることが多い。
■ASD(自閉症スペクトラム障害)の児童においてもADHDと同様の衝動的,攻撃的な行動がしばしばみられる。ADHDは内面の衝動性をコントルールできないため攻撃的な行動を伴いやすいがASDでは社会性のなさ(社会的にしてはいけないことの認識が希薄)が同様の行動をもたらすことがある。
■成人期のADHDの特徴的な所見
①職場や学校
・落ち着かずにそわそわする
・貧乏ゆすり指を机で叩くことなどがやめられない
・不用意な発言が目立ち思ったことをすぐに言動に移す
・集中できない,ケアレスミスが多い
・締切を守れない,段取りが下手で完結できない
②家庭生活
・別のことに気を取られ家事がおろそかになる
・家事の効率が悪い
・部屋が片づけられない
・朝起きられない,外出の準備が間に合わない
③対人関係
・おしゃべりが止まらない
・自分のことばかり話す
・衝動的な発言,つい叱責してしまう
・約束を守れない,約束を忘れる
・集中して話を聞けない
・映画館やレストランで落ち着かない
■統合失調症の症状は大きく陽性症状と陰性症状に二分される。
①陽性症状
・幻覚,妄想,顕著な思考障害などでproductive(生産的)な症状
②陰性症状
・感情の鈍麻,意欲の喪失,社会的ひきこもり
■「世界没落体験」:統合失調症における妄想の急性期に自分の足元が崩れ落ち世界全体が崩壊してしまうような感覚を覚えること
■ASD(自閉症スペクトラム障害)は以前はPDD(広汎性発達障害)と呼ばれた疾患の総称で「自閉症」や「アスペルガー症候群」を含む。知的障害(精神遅滞)を伴うケースもみられるが成人期に問題となる例の大部分は知的レベルが正常かそれ以上のものが多くIQが非常に高いケースもみられる。
■ASDの基本症状
・「対人関係における相互的反応の障害」:他者と自然に反応する能力の障害であり,相手の心情を表情や言葉のニュアンスから察することが難しいことや場の雰囲気を読むことができない
・「同一性へのこだわり」:特定の対象に対して強い興味を示したり,反復的で機械的な動作がみられ,状況に応じた柔軟な対応ができない
・特定の感覚刺激に対する過敏さ
■成人のASD(本田秀夫氏)
・雑談はあまり好まず,自分に関心のある話題に限局しがち
・関心のない話題ではあまり周囲に合わせようとせず興味がないことが露骨に分か��
・関心のある活動には他者の目を気にせず熱中する
・状況判断能力に乏しく場違いな言動で周囲をハラハラさせる
・空気を読まないと評されることがしばしばある
・他者の考えに無頓着で自分が他者からどのように思われるかも気にしない
■実際の臨床場面ではADHDとASDの両者の症状を同時に示すケースや両者が合併していると考えられるケースも少なくない。
■ADHDとASDの区別(十一元三氏)
①毎回し忘れる,毎日目にして気付かない
・ADHDは不注意に起因する
・ASDは重要であるという認識に欠けている
②話し出すと止まらない
・ADHDは衝動性の現れであり思い付いたことを言わずにおられない
・自分が自由勝手に話をしていいのかどうか状況が認識できていない
③話がとぶ
・ADHDは衝動性の結果
・ASDは話をしている相手が理解しているかどうかを考慮しようとしないので奇異な内容が含まれやすい
④順番や会話に割り込む
・ADHDは内的な衝動性により我慢できなかったり待てなかったりする
・ASDは他者への意識の希薄さから勝手な行動をとる
⑤なれなれしい
・ADHDは元来人懐っこくあどけない行動をとることが多い
・ASDは社会的な距離感が分からない
⑥懲りない
・ADHDは不注意の反映であるとともに目の前の「快刺激」を優先しやすい結果
・ASDは自らの行動を制止する社会的な必要性を感じていない(ASDによるストーカーの問題)
■ADHDに必要なスキル
①集団参加行動
・ルール理解・遵守,役割遂行,状況理解
②言語的コミュニケーション
・聞取り,表現,質問と回答,話し合い,会話
③非言語的コミュニケーション
・表情認知,ジェスチャー,身体感覚
④情緒的行動
・自己の感情理解,他者の感情理解,共感
⑤自己・他者認知
・自己認知,他者認知,自己-他者認知
■認知行動療法の最終的なゴール
①自己マネージメントのスキルや対処行動を身に着け,症状をコントロールできるようにする
②自尊心,自己肯定感を持てるようになる
③注意力や感情調整のスキルを向上させる
■コーチングは最近注目されているADHDの援助技法の一つ
①気付かせる
②習慣化する
③罪悪感を取り除く
④注意と意欲を持続させる
■ADHD患者の困っていること
①多動
・映画館にいられない,飛行機・電車に乗れない
・気になることを調べ始めると終わらない
・いつもあせって考え,行動する
・常に頭の中で何か考えている
・しゃべりが頭の中で考えていることに追いつかない
・行列,レジの列に並べない,待てない,退屈に耐えられない
・感覚のそわそわ感,手遊び,ペン回し,歩き回る,ザワザワ感がある
・世の中のスピードが遅い
②衝動
・人が言いたそうなことを先回りして言ってしまう
・空気を読まずに発言する
・人の話に割り込む,他人の話が聞けない,多弁になる
・相手のことをよく確認しないでしゃべる
・金銭管理が苦手
・イライラを抑えられない時がある
③不注意
・遅刻する,出かける準備が苦手
・忘れ物をする,失くしも���をする
・視線を外すとないものとなる,物事が背景化する
・他のことに思考を奪われる,切り替えが困難
・今やっていることが終わる前に次のことが気になる
・数字が苦手(メモを見ながら気を付けていても電話番号を打ち間違う)
・他人の会話が入ってくる,人の話が頭に残らない
・初めての場所にたどり着けない,迷子になる
・食事でよくこぼす,気付くと怪我をしている
・運転が難しい
④考え方
・気分が不安定(パニック・不安・脅迫)
・約束(恐怖を感じる)をキャンセルしたくなる
・否定されること,他人を否定する,人を見ることが苦手
・マナーのない人,歩きスマホをしている人,のろのろ前を歩く人,前を走る車が苦手
・怒っている人を見るとイライラする
・一見普通に見えるからか,世間の目が厳しいと思う
・自他のズレ解消のむずかしさ,自分が注目される
⑤実行機能
・やることを先延ばしにする
・計画を立てられない,締切を守れない(特に長期の締め切りが苦手)
・良かれと思ったことが実はよくなかったということがある
⑥対人関係
・コミュニケーションがうまく取れない,家族間のコミュニケーションが苦手
・過集中してしまう(関心があることに集中すると他が見えなくなる)
⑦環境へのストレス・感覚の過敏さ
・満員電車,人混み
・大きな音(しゃべり方,ぶつかる音),特定の音(モーター音,子供の声)
・肌触り(綿素材でないと不快感を覚える),肌の弱さ(特に首周り)
・まぶしさ,暑さ(光が苦手,太陽が苦手),寒さ
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『発達障害に気づかない大人たち』と併せ、こちらも読了。基本的に書かれている内容は似ているが、本書の方がより具体例(症例)が多く、読みやすいかもしれない。専門的な投薬療法の方法等は読み飛ばす。
ADHDが他の精神疾患のベースになってる場合が多く、成人してからの犯罪率が高い傾向がある。幼少期の行動の記憶を辿って、忘れ物が多い、落ち着きがない、計画的に行動が出来ない、独り善がり…、等の症状が現れ、学校の成績が良くても現れる。
計画立てて行動が苦手、仕事の期日まで間に合わない、人と目を合わせることが苦手等。
興味を持ったことについては没頭しやすい等の傾向が。症例として、幼いころ列車の細かいスペック、型番をすべて記憶、時刻表を毎日持ち歩きダイヤを暗記している等、一部で特異な能力を発揮している例が少なくない。
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ADHD、うつ病、アスペルガー等々。色々な精神病があって、専門家でも誤診してしまうケースがあるとか。
本書はADHDについて、その症状、特徴から治療法までを詳しくまとめているものです。
職場で色々な方に接する都合上、勉強しておいても損は無いなと思って手に取りました。
読みながら思ったのは、自分の小さい時ってこんな感じだったよなぁ。。ということ。ひょっとすると今でも完全には抜けてないような。あまり変な先入観を持たないためにも、正しい知識を持っておくのは大事かと。
治療法の段の、具体的な薬物例が並んでいるくだりは自分には不要でしたが、実際に治療を受けていたり、これから受ける方には大事なのでしょう。
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ADHDの現象、事例については良く理解できた。判定基準があることも初めて知った。では対処法は?対策は?という点が欲しいところ。別書であたればよいだけではあるが。
あらかたの人が何等かのADHD的症状を持つんじゃないか、というのが感想。各事例のいずれにもあたらない、という人間はいないと思ったりして。程度問題だが、その程度が問題だ、ということで。いやー今後の人生の課題が増えた気がする・・
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概要:
ADHDの特徴: 注意の配分が不得手; 金銭管理が苦手; 衝動性; 過集中; 小中学校ではADHD3%,ASD1% (3%はかなり多い 統合失調症1%, うつ3%); ノルアドレナリンとドーパミンの障害が関与?
治療: 薬物(メチルフェニデート, アトモキセチン); 心理教育
感想:
非常に面白い。
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ADHD(注意欠陥多動性障害)について、初学者にもわかりやすくまとめられている。
診断基準や症例、治療法なども数多く紹介されていた。
ADHDの診断チェックリストなどもあるので、自分がADHDなのではないかと不安な人は試しにやってみるのもあり。
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最後に暴力性の例持ってこられると中盤「やっぱ精神科受診しよ〜」なのが読み終わりに「せいしんか じゅしん あ 」になるのと終盤読みながら精神不安定になるつらい本になってた
よやくした
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悪くなかったのだけど教科書っぽさが少し強い。著者の実体験や、専門家としての意見・主張はあまり期待できない。
著者が出会ったADHDの当事者が実例としていくつも登場する。ただし、あまりにボカされており、重複冗長感が否めない。個人情報という観点は理解しつつ…。
そして関連する症状が列挙されるため、情報量が多い。発達障害系の新書にありがちだけども。正直に言えば一度では把握し切れなかった。きちんと頭に定着させるためには何度か再読する必要がありそうだ。
総括としては少し物足りない。まぁそうだよな、と。知っていることが多かった。これならばググって事足りそうだと感じてしまった。
(長くなってしまうので、各論などは書評ブログからどうぞ)
https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E8%A6%81%E7%B4%84%E6%84%9F%E6%83%B3_%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E3%81%AEADHD_%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8%E3%82%82%E8%BA%AB%E8%BF%91%E3%81%AA%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3_%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%98%8E
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Attention Deficit Hyperactivity Disorder ADHD
注意欠如多動性障害
自分自身、この注意欠如多動性障害の症例と重なる部分が多いと感じたので、手にした本。当てはまるような部分もあり、これは当てはまらないという部分もあり、なんとも言えず。。というのが正直な感想だった。
初めて聞いた発達障害の一つ。関連した書籍を探し始めたところ。
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最近、診断を受けている人が増えているというニュースを聞いたので読んでみた。事例を示すのでイメージしやすい。
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ADHDが認知されてきています。
少なくない割合の人たちが該当していると言われていますね。
症例が詳しく出ているのですが、これらが極端な部類なのかと言えば、恐らく違っていて、4-5%はいるであろう現状の、突出した一部の症例と思われました。
では周りにいる軽症または境界のところにいるひとたち、その人たちはどうなのだろうか、その人たちは自覚しつつ暮らしているのか、そうではないのか。
好きな分野には力を発揮できるので、その分野を生かしてもらえればいいのですが、周りの理解も、やっぱり必要ですよね。
理解を得られるかどうかというと、やはり離婚に至る例も多いと書かれていました。
そうだよなぁ、と思います。
できないのだから、仕方ないです。
いいところもたくさんあるので。ありがとう。
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著者はADHD専門外来を担当する医師。うっかりミス、気の短さ、攻撃性、熱中しやすさなど、個人の性格や性質で社会生活や家庭生活で困るほどのものは、発達の問題に起因していることも多いそうだ。そしてそれらは薬や心理療法で改善できるという。発達についての正しい知識が広まることで、本人も周りも人間関係が楽になりそうだ。
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大人のADHDは段々知られるようになってきたが、それが障害と言えるのか、ずっと疑問に思っていた。本書は障害というより症状、個性だと言う。様々な苦労の末にようやく適切な診断が出て、投薬と認知行動療法のもと、当事者が回復してゆく症例が豊富に引用されている。当事者が時にはトリックスターとして、生き生きと輝かしい人生を送るため、また周囲の理解を深めるため、適切な案内書だと思う