投稿元:
レビューを見る
「類稀な経営者にはいくら支払っても払いすぎということはありませんが、そんな人は滅多にいません。」-ウォーレンバフェット
GEのジャックウェルチは、1981年-2001年の約20年間CEOを務め、在任中の株主は年率20.9%の利益を手にしたが、彼より優れたCEOがいる。
パフォーマンスを査定する為に重要なのは絶対的なリターン率ではなく、同業他社やマーケット全体と比較したリターン率。CEOを評価する為に必要な数字は三つだけ。在任中の株価の年間リターン率(複利)と、同期間の同業他者のリターン率、S&P500のリターン率である。
テレダインのシングルトンは1963年から約30年間でIRR 20.4%(S&P500の12倍)を達成した。ウェルチより長期間。
CEOには資本の使い方について5つの選択肢(既存事業への投資、他の事業の買収、配当、負債の返済、株の買い戻し)があり、資本調達方法は3つの選択肢(社内キャッシュフロー、債権の発行、株の発行)がある。業績が同じでも、資本配分が違えば株主の長期利益はかなり変わる。
1980年代、大抵の企業は、積極的に株を発行してその資金で買収し、配当を払い、自社株買いは行わず、借入もあまり行わなかったが、シングルトンは、厳選した企業の買収と、自社株買いに集中させた。また、業務は極端に分権し、投資判断はごく少数で中央集権化した。
過去50年間で最も優れた実績を上げた本当に偉大なCEOは僅か8名のみ。彼らはみな同じ資源配分を行なっていた。
キャピタルシティーズ社トムマーフィー1966-1996, 19.9%(SP10.1%, Comp13.2%)
テレダイン社ヘンリーシングルトン1963-1990, 20.4% (SP8%, Comp11.6%)
ゼネラルダイナミクス社ビルアンダース1991-2007, 23.3%(SP8.9%, Comp17.6%)
テレコミュニケーションズ社ジョンマローン1973-1999, 30.3%(SP14.3%, Comp20.4%)
ワシントンポスト社キャサリングレアム1971-1993, 22.3%(SP7.4%, Comp12.4%)
ラルストンピュリーナ社ビルスティーリッツ1980-2001, 20%(SP14.7%, Comp17.7%)
ゼネラルシネマ社ディックスミス1962-2005, 16.1%(SP9%, GE9.8%)
バークシャーハサウェイ社ウォーレンバフェット1965-2011, 20.7%(SP9.3%, )
・CEOの最も重要な仕事は資産配分。
・長期的に重要な事は、全社的な成長や規模ではなく、一株当たりの価値
・長期的な価値を決めるのは、報告利益ではなくキャッシュフロー
・分権組織は起業家的なエネルギーを放出し、コストと怨恨を減らす。
・長期的な成功には、独自の考え方が不可欠で、外部からの助言(ウォール街やマスコミなど)は気が散るし時間の無駄。
・最高の投資先が自社株のこともある
・買収においては忍耐が肝心だが、時には大胆さも必要。
因習打破主義者は、金融の中心地から離れた場所で事業運営している。この距離が「ウォール街の常識」から彼らを隔離する助けになっている。
8名のCEO達はだいたいにおいて質素で謙虚、分析的で控えめ。家族を大切にし、子供の学校行事の為に早退することもよくある。CEOの社外向けの顔という役割が好きではない。商工会議所でスピーチしたり、ダボス会議に出席しない。ビジネス雑誌の表紙を飾��ず、経営に関する助言的な本も書かない。騒がしくもないし、売りつけもしない。なれなれしくもないし、カリスマオーラも放たない。銀行や顧問など外部の助言者を使わず、自分と厳選した一握りの人たちの考えのみを参考にする。
世の中のほとんどのCEOは一つだけ深く知っているハリネズミ。その業界で成長し、トップに就いた時は全てを把握している。8名のCEO達は多岐に渡る知識を持っているキツネ。多くの業界、会社、分野を知っている事で、新しい視点をもたらし、それが新しい手法を生み出し、並外れた結果をもたらす。
「同業他社と同じようにしなければならない」という謎めいた力から解き放たれること。
彼らの会社は極めて分権化されており、少なくとも一社は大型買収を行なっており、キャッシュフローに基づいた独自の基準を持っており、かなりの自社株買いをしている。配当に大きな資金を割いたりウォール街に情報提供しない。
共通する世界観は、CEOの最大の目的は組織の拡大ではなく、一株当たりの長期的価値の最大化。
できる限り最高の人材を採用し、ほっておくこと。
システムが上手く機能しており、自由で権限が使える組織を辞める事など考えられない。
買収の三分の二は株主の価値を破壊する。
各CEOの買収等ベンチマーク
マーフィー、、レバレッジなしで10年間に税引後二桁リターンが上がる事。
シングルトン、、収益の12倍未満。
マローン、、借入とEBITDA目標比率5倍。
グレアム、、レバレッジなしで10年間で最低11%の現金リターン
スミス、、負債キャッシュフロー比率3倍以上。資本収益率と節税効果を狙う。
自社株買い
シングルトン、、1972年-1984年に8回、発行済株数の90%。公開時の純資産額の4-66%。25億ドル以上。
グレアム、、1970年代-1980年代にPER一桁台で発行済株数の40%弱。
「企業のイベントをたくさん見てきたが、キャピタルシティーズだけは誰が上司かわからなかった。」-CC株で高リターンを上げたとあるバーテンダー
今日の常識では、複合企業は機敏さと、ピュアプレーの集中力を欠く非効率な会社組織だと言われているが、1960年代は複合企業は高倍率のPERを元に異常なペースで買収を続けた。シングルトンは1961年-1969年の間に航空機の電子部品から特殊金属、保険まで130社を買収した。
社内政治に無関心な文化を育てる事。目標値を達成した人はそれでよいし、しなかった人は次の目標に向かう。
CEOが誰とランチをとっているかを気にする社員は誰もいなかった。
「私自身が行う日々の業務はない為、マンネリになる事はない。仕事は厳密に定義しておらず、その時点で最も会社の利益になりそうな事に自由に取り組めるようにしている。」-シングルトン
自社株買いの2方法
1.ストロー方式、、資本の一定割合を原資として承認し、四半期や複数年にかけて市場で買っていく。注意深く保守的、計画的で、株の長期的な価値に大きな影響を及ぼす可能性は低い。
2.吸い込みホース方式、、株価が低い時に大量に買い戻す。非常に短期間で借入金を使う事が多い。8名のCEOはこちら。
バフェット、シングルトンは、自身を業務運営ではなく、資本配分に集中できるような組織形態にしていた。
投資理念、、自分がよく理解している業界のみに投資し、ポートフォリオの内容を一部の上場証券に集中させる。
投資家向け広報に関する姿勢、、アナリスト向けの四半期予想は出さず、投資家会議にも出席しない。その代わり、事業部門について詳しく説明した情報量の多い年次報告書を作成する。
配当、、ほぼしない
株式分割、、、ほぼしない
CEOの持株比率、、高い
保険子会社を持つ、、保険会社の「フロート」を投資に回す
レストランの例え、、方針と判断によっておのずと常連客が決まる。極めて変わったレストランを経営し、同じ考えを持つ長期的な投資家を引きつける。
フォーチュン500社で過去10年間で複利15%のリターンをあげた企業は5%未満。
投資判断には常に自社株買のリターンというハードルを使う。買収によってある程度の精度でこのリターンを上回る事ができそうならば実行する。
当時ウォール街の主流であった報告利益や純資産額ではなく、EBITDAやIRRを使った。
バークシャーの買収資金源は、保険子会社のフロート、100%子会社の利益、時々行われる大型資産の売却。これで新たな現金を生み出す事業の全部または一部を買い、その利益でまた別の投資を行う。
「12%のリターンを維持するよりもでこぼこの15%を選ぶ。」-バフェット
みんなが強欲になっている時は恐れ、みんなが恐れを抱いている時は欲を出す。
資本配分で重要な事の一つは、これ以上投資すべきでない低リターンの事業を見極める事。
バークシャーに売却するという事は、所有者や経営者にとって、ウォール街に監視される事なく経営を続けながら流動性を確保することができる類のない機会。バフェットは官僚的でない組織と価値ある計画への無限の資本を提供している。
バフェットは業界トップクラスの未公開会社のオーナーからバフェットに買収を依頼してくるという驚くべきシステムを作り上げた。彼は価格を交渉せず、売り手に希望価格の提示を求め、その返事を5分以内に行う。こうしておけば、売り手は許容できる最低価格を提示する事になる為、バフェットは無駄な時間を割かずに済む。バークシャーの買収方法は、「買収をしようとするのではなく、考える余地もないほど良い会社を待っているだけ」
バークシャーは、その業界や会社で何らかの危機が起こり、強力な事業の価値を歪めているときに株式市場で大量に買う事が多い。もう一つは、その会社で経営や戦略の大きな変化があった時に買う。
バークシャーは定期的な予算会議がない。子会社の経営者は、彼らの方から助言や投資を求める時以外にバフェットから連絡がある事はない。「良い人を雇い、管理はしない」
バフェットは不要な予定は入れず、読み物と考え事の時間を確保している。真っ白な予定表と定期会議がない事に誇りを持っている。事務所にはパソコンも株価ボードもない。
株式分割をしない事は、長期的なオーナーを絞り込んでいく為のフィルターになっている。
バフェットの世界観の核は、優れた人たちや優れた会���との長期的な関係構築。不要な人事異動によって長期的な価値を創出する基となる強力な複利の経済性を阻害しない事。
CEOは一株当たりの価値の最大化に集中する事。自社株買いをする理由は、株価をあげる為でもオプションに引き当てる為でもなく、それ自体が魅力的なリターンをもたらす投資だから。
エクソンモービルは、過去5年間で発行済株式の25%を買い戻した。
8名のCEOは、自社の価値の25%に相当する大型買収を行なっている。
バフェットはリーマン崩壊後、800億ドル以上を投資し、その内150億ドル以上はリーマン崩壊後25日以内。
1.資本配分の判断は財務部や企画部門に任せずにCEOが主導する。
2.その会社で実行可能な計画を参考にして、最初に投資計画で許容できる最低リターンを設定する。(CEOが下す最も重要な判断の一つ。)通常は自己資本コストや借入コスト(10%台半ば以上)を上回る値にする。
3.内部投資と外部投資の選択肢全てのリターンを保守的に計算し、リターンとリスクが高い順に並べる。(低リターンを意味する「戦略的」はナシ)
4.自社株買いをした場合のリターンを計算する。買収のリターンは必ずこのベンチマークを相当上回るようにする。
5.税引後利益に注目し、税務顧問に確認させる。
6.現金と借入金の許容できる保守的な水準を決める。
7.分権化した組織モデルを検討する。(社員数に対する本部人数の割合は同業に比してどうか?)
8.資本を事業に投入するのは長期的に自分のハードル以上のリターンを生み出す事ができる自信がある時のみ。
9.高リターンの投資計画がなければ配当する。
10.価格が極めて高い時は事業や株を売却してもよい。また、許容できるリターンを生み出せなくなった事業は閉鎖する。
バフェットテスト;任期中の内部留保1ドルに対して、最低1ドルの価値を生み出したかどうかを見る。