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彼女の作品はまだ2作くらいしか読んでないけど、これ1冊でなんとなく山崎ナオコーラ的哲学なり世界がわかるような気がしました。
この本は短編集ですが、反人生は、上品な55歳になった女性が「人生作り」には興味ないといいつつ、色々毒づいているのがおもしろい。
けっこうこういう感じの年上の女性に何度か会ったことあるかも。割といないようでよくいるタイプの人かもしれない。というか実は皆こんなようなこと考えているのかもしれないね。なんとなくシュールな感じがよかった。
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鋭すぎる、と思っていた彼女の部分が少し丸くなり、読みやすくなった気がする
しかし独特の感性は残ってて。これからも楽しみ
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久しぶりのナオコーラは、子どもを産んで男女の友情を気にしてた。
最後の「社会に出ない」は、エッセイなのかなってくらいリアルでおもしろかった。
社会になっちゃったらつまらない部分もすごくある。
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文章が、綺麗だなぁ、と感じた。
友達だと思っていた人から、友達を終わりにしよう、
と言われるって、どんな気持ちになるんだろうな。
そのままだっていれるはずなのに、
終わりを選ぶのは、何故なんだろうな。
男と女だからって理由だけではなんだか割り切れない。
切ない気持ちになった。
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「ゆるいつながり」をテーマに据えた短編集。
ゆるくあろうと思っても、崩れてしまう関係もあれば、
気づくと続いている関係もある。
人と人との糸は、とても複雑だ。
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割と好きな世界観。
表題作では、主人公が淡々としているからかえって感情移入しやすかった。少し先の未来が描かれていて、こんな感じになってるのかなぁと想像できて面白い。主人公が普通に同性愛の概念を持っていて好感を持った。
サンリオはまだあるんだな。丁寧に「マイメロ」について説明されて、何か笑った。
最後の「社会に出ない」の、本気で会おうとは思っていないけど、大学のサークル仲間の家を探す感じとか、なんかリアルだなぁと思った。
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表題作よりも、最後の「社会に出ない」がとても好きだった。
P.158
スマートフォンで住所を調べよう、ということを言いださないのと同じように、私たち全員が心の中で思いながら、何年も誰も言わないことがある。
それは、山崎くんがおそらく、働いていないだろう、ということだった。
大学にいるとき、山崎君は就職活動を一切していなかった。大学を出たらバンド活動をする、と言っていた。卒業後にライブが三回あって、私は三回とも聴きにいった。
しかし、そのバンドは一年ほど経つと、メンバーのひとりに子どもができて、その人が就活のために音楽をやめると言い出した、という理由で、解散してしまったらしい。その後の山崎くんの足取りを、私たちは知らない。ただ、もしも何かしらの形で音楽を続けているとしたら、連絡をくれるような気がする。だから、今は音楽活動をしていないのではないか。そして、あの山崎くんのことなので、アルバイトはもちろん、金を得るような活動はしていないのではないか。音楽活動、あるいは金を得る活動をしていない。そのせいで、私たちに会いたくなくなってしまったのではないだろうか。(略)
「山崎は、僕らからも、プレッシャーを感じるのかね」
杜屋くんが話を戻した。
「俺らは、山崎に会いたいだけなのにな。俺らは山崎に対して、どうあって欲しいとか、こうなっていて欲しいとか、そういうのはなんにもないのにな」
面長が言う。
「そうだ」
私は、ふいに気がついた。山崎くんには自信をもって自分たちに会って欲しいと思っているのに、私自身ができていない。
「ん?」
面長がこっちを見る。
「私、この前、赤ちゃんができたの。わあ、やったあ、と思ってたんだけど、しばらくしたら流産って診断されて、手術しなくちゃならなくなって…」
私は話した。
「稽留流産?」
杜屋くんが、特に驚いたふうもなく聞く。
「よく知ってるね、そんな言葉」
私は言った。
「まあ…。うちの姉にもその経験があって」
杜屋くんは言う。
「え?俺、よくわかんない。手術したってことは、おろしたってこと?」
面長はきょとんとして尋ねる。
「いや、赤ちゃんが欲しくて作って、妊娠できてすごく喜んでいたら、とても悲しいことに途中までしか育たなかった、ということ、かな?」
私は説明をしながら、面長の言葉に少し傷ついていた。稽留流産の手術は、中絶と同じような作業だ。そのことが妙に辛く感じられていた。しかし、ここまで混同されて相手に伝わるものだということは初めて知った。それでも、伝えたことに対する後悔は湧いてこなかった。よく考えたら、意思によって生まれなくなることと、生物学的な理由で生まれなくなることに、線引きの必要はない。線を引きたがっていた私はあさましかった。
「ふうん。俺にはよく理解できないけど…。それは、辛かったね」
面長は言った。
「うん。ありがとう」
私は笑った。
「それで?」
面長が言う。
「いや、あのさ、今回、杜屋くんから恒例の飲み会のお誘いメールをもらったとき、『みんなに会いたくないな』って、ちょっと思ったんだよね」
私は続けた。
「ふうん」
杜屋くんは、街路樹の葉っぱを手で弄んだ。
「あと、こういう話はしちゃいけないだろうし、顔にも出したらいけないだろうから、会うとしても頑張らないと会えないな、とか」
私は坂をとんとんと下りていく。
「なんで?それって、人に話しちゃいけないことなの?」
面長が私の隣を歩きながら尋ねる。
「うーん、『気を遣わせる』から、かな?」
私は顎に手をやった。
「まあ、気ぐらい遣わせてよ。いいんじゃねえの。みんなで生きているんだし」
面長が言う。
「うん、うん」
杜屋くんが頷く。
「亡くなった人の話をさ、『暗い話は、もう止めときましょうか』って切り上げることあるけどさ、亡くなった人の話を、もっと普通にしたい、っていう気持ち、俺あるよ」
面長は言った。
「次の赤ちゃんができてから、『実は、前に流産してしまったことがあって』と、告白する人は結構いるよね。うちの姉の話も、僕は、姪っ子が生まれたあとに、昔話として聞いたんだよ。ただ、僕は姉とかなり仲良いからさ、そのときに聞かせてもらっても、こちらとしては良かったのに、っていうかさ…。いや、本人が話したくないことなんだったら、もちろん話さないのがいいに決まっているんだけど、たんに僕を気遣って、とか、雰囲気を暗くしないように、とかっていう理由でそういう順序で話したんだとしたら…」
坂を下り切り、左に曲がろうとしながら、杜屋くんが言う。
私は、電柱柱の住所表記を指さした。
「僕さ、一度転職してるでしょ?最初の会社がしんどくて辞めたんだよ。ブラックで、辛くてさ。それで、休職中の時、嫌で辞めたからさ。それも、そのときは、『本当は、もうちょっと頑張れた。我慢が足りなかった』『残してきた同僚に悪い』とかくよくよ考えていたし」
表記を確認して頷いてから、杜屋くんが喋る。
「そういえば、一年くらい、飲み会が開催されなかった時期、あったな」
顎を掻きながら面長が呟く。
「あ、あったかも。じゃあ、杜屋くん、一年ほど、働いていない期間があったんだ?」
私は言った。
「そうなんだよ。再就職が決まって、今の会社でなんとかやれるようになってから、やっと、『みんなに会いたい』って思えたからね。だからさ、まあ、僕もなんだよ…」
杜屋くんは頷く。
「友だちのはずなのに、いつの間にか、社会になっちゃっていたんだね」
面長が、今度は耳を掻きながら、言った。
宙ぶらりんな今の私にとっても刺さる文章。私も、みんなが山崎を思うように、友達に対しては「ただ会いたいだけなのに」と思うのに、自分は一区切りついてから、とか思ってしまっている。
私たちはみんな社会の中に生きているんだなぁ。
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山崎ナオコーラさんの作品って、良い意味で後味が悪くてクセになります。スッキリしないのに、また読んじゃうんだよなぁ