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日本が沸きに沸いていた頃、東京五輪がまさに始まろうとしている時代。新しい町を作っていこう、新しい東京を僕らの手で作っていこうと言う勢いが感じられる。そんな時代背景の中、格差社会に憤りを感じ爆発事件が相継ぐ。時間を前後しながら、最初は回りの人間の目線で、中盤からは犯人の目線にも切り替わり話が進んでいく。
ダイナマイトを入手した主人公が、警察相手に身代金を要望する話。目線を犯人、警官、テレビ局社員など切換物語が語られる。こんな時代だったのだなあと時代背景も面白い一冊。ラストは淡々とした感じ。
【時代を感じ心に残る】
・東京の豊かさと、地方の貧しさ、出稼ぎにきて地方に仕送り
・夫の死を前にしても、会社に凝縮してしまう、嫁さんの感情がわかる、でもそれって思考の一時停止だとも思う
・結婚してすぐ出稼ぎで、関係を深めることが出来ず、炭鉱夫の死を悲しまない嫁。
・女房、子供が死んだ後は、何のために生きているかわからねえ
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要求金額は8千万円。人質は東京オリンピックだ――五輪開催を妨害すると宣言していた連続爆破事件の犯人、東大生・島崎国男が動き出した。国家の名誉と警察の威信をかけ、島崎逮捕に死力を尽くす捜査陣。息詰まる攻防の末、開会式当日の国立競技場を舞台に、最後の闘いが始まった!〈吉川英治文学賞受賞作〉
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兄を東京の工事現場で亡くした島崎国男は自ら人夫としてオリンピック関連工事で肉体労働に従事し、兄が見たであろう風景を確かめます。その中で見えてきたのは、まるで地方が中央に差し出す生贄のごとく苦しい生活を強いられる出稼ぎ労働者の姿でした。「一人の若者は経済成長の最中、ただの人柱として葬り去られた。この命の安さは何なのか。国男はやりきれなさを覚えた。いったいオリンピックの開催が決まってから東京でどれだけの人夫が死んだのか。それは東京を近代都市として取り繕うための、地方が差し出した生贄だ」(本文より)
ついに、島崎国男は行動を起こします。何としても無事にオリンピック開会式を開催したい警察捜査陣。次第に捜査の網を狭める捜査陣の気配を感じつつ、島崎国男は知力・体力の限りを尽くして国家権力に挑みます。息詰まる攻防は開会式当日の国立競技場を舞台に繰り広げられます。果たして、島崎国男は野望を果たすのか。
出稼ぎ、麻薬、学生運動など、当時の社会の裏側が物語に密接に関わり、時代背景を知るという意味でも非常に興味深い小説です。
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好きではないけど、面白かった。
東京オリンピックに国中が熱狂してる様子が伝わって、今度の東京オリンピックが楽しみになってきた!!
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東京オリンピック妨害を企てる島崎国男。秋田のスリ師村田留吉とコンビを組む。警察側も総力を挙げて島崎逮捕に向けて捜査する。
各章毎に違う時間軸で描かれていた話がつながるところも面白さの一つです。
個人的には、警察(公安部)のマヌケっぷりが見ものでした。
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オリンピックという国家の威信をかけた一代イベントの裏側で多くの人が泣いていた・・・
国家を相手に戦う主人公。もちろん犯罪なのだがいつのまにか応援していた。
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えっ。。最後。悲しすぎる。
この大それた事件も、犯人の存在も、彼の思いも全部なくなったことにされるなんて。
ーー指導層と労働者たちを分けるのは、たまたま勉学の才と機会に恵まれたことだけでしかない。
ーー東京オリンピックが、急造で見せかけだけの繁栄の上に行われようとしているからです。この国のプロレタリアートは完全に踏み台として扱われています。貧しい者は、貧しいままです。これを許したら、国家はますます資本家を優遇するでしょう。
ーー東京がながっだら、日本人は意気消沈してしまうべ。今は多少不公平でも石を高く積み上げる時期なのとちがうか。横に積むのはもう少し先だ
決して正しくはない。
東大に入ったからこそできることはもっとあったはずやし、主張するばかりで解決策がない印象がある。
それでも波紋を残すくらいのことは期待してたのに最後は呆気ない。
3時間ほどで読破。。
伊良部先生のゆるい感じとは全然違う。
筆者の作品の幅に感服した。
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僕の生まれる丁度10年前に東京オリンピックが開催されましたが、物の本や、懐かしのTVでしか見た事が無いので、どれくらいの熱狂度だったのかは分からないのですが、この本からうかがえるのは、日本が世界の一流国に仲間入りする為の悲願のようなもので、全国民が手を携えて成功させたいと願う、有史始まって以来日本列島が一つになった行事だったという事でした。
そんな最中で、東北の貧困にあえぐ村からある青年が村の期待を背負って東大に進学しました。彼の兄は東京で土木工事に従事していたが、心不全で亡くなってしまいました。
彼は兄の従事していた土木工事に身を投じ、その厳しさに絶句します。地方と東京、労働階級と支配階級との人間としての命の値段の違いに憤りを覚えます。
おりしも日本はオリンピック開催に沸き立ち、日本の行く末は明るく照らされているかのようでした。
ところがその光に照らされ影となっていた失われていく労働者達の命は、数百人に達すると言われていました。
彼はオリンピックを人質にテロという方法で、日本に戦いを挑む事にしたのでした。
これは壮大な話です。これだけの話を綺麗にまとめあげるのですから奥田さん物凄い腕力です。さすが実力者。
僕自身豊かな時代に生まれ育った世代なので、学生運動や赤軍の闘争には全くピンと来ないのですが、その辺りで一般の学生たちの我儘とも言える闘争と、彼の心の底からの矛盾との戦いが如実に違っていて、主人公の心情が胸に来るものがあります。
でも僕はどちらかというと、彼を何とか捕えようと日夜駆けずりまわる警察官たちの姿の方にシンパシーを覚えました。
この頃のTV黎明期の勢いや、団地が文化的でうらやましがられるなどの、今では考えられない世の中の流れも興味深いです。
東京五輪が終わったら再読してみたいですね。
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貧しい人間を犠牲にした上でのオリンピックに義憤を感じる東大生が堕ちてゆく姿がとても、切なかった。
エピローグがすっきりしていて、情報量がほしい。
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交差する過去と未来。
化学反応の光は鈍く暗い。
(以下抜粋)
○デモは都会の若者の盆踊りだ。(P.213)
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内容(「BOOK」データベースより)
要求金額は8千万円。人質は東京オリンピックだ―五輪開催を妨害すると宣言していた連続爆破事件の犯人、東大生・島崎国男が動き出した。国家の名誉と警察の威信をかけ、島崎逮捕に死力を尽くす捜査陣。息詰まる攻防の末、開会式当日の国立競技場を舞台に、最後の闘いが始まった!吉川英治文学賞受賞作。
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2016/3/19読了。
2020年のオリンピックに思いを馳せつつ読んだ。割と沈んだ気持ちになった。弊社がオリンピックとは関係ないシステム屋でよかったとだけ思った。IT土方とはよく言ったものだ。社畜やってたら、オリンピックなんてデメリットしかもたらさないよ。
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オリンピックを狙い爆弾魔・草加次郎の名を語る、東大院生の島崎。彼がこのような行動を起こしているのはなぜか、何に怒りを覚えているのか、それがあまりにもクリアであるために、心のどこかで島崎を応援してしまう。結果的に東京オリンピックは無事に開催されているので結論はわかっているにもかかわらず。
深く考えずに読み始めた本だけれど、4年後に東京オリンピックを控えている今、オリンピックというイベントの大きさを改めて実感する。その大きさゆえに、人の尊厳や命が虐げられないといいのだけれど。
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上下巻とも先が気になりすらすら読めるかとおもいきや、最後の方が少し滞ってしまった...。島崎はもっと自分の力を活かせる方法があったはず。ヒロポンにも手を出して、どんどん向かう方向がおかしくなってしまった。結局のところ何も変えられてないのでは。
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島崎と警察の対決が始まった。警察はいつもあと一歩のところで島崎を取り逃がしてしまう。遂にオリンピック開会の日。この晴れ舞台の成功のために警察はなんとしても島崎を逮捕し、開会式をつつがなく終わらせようと心に誓う。 上巻は島崎をこのような犯行に駆り立てた動機や心情などが書かれていたが下巻はとにかく行動を起こし、逃げるというそれに終始していた。村田という相棒を手に入れたことが、彼にとって強くもなり弱くもなった。それがなんだか胸に応えた。