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12年ぶりのシリーズ続編かつ最終作とのことで、作品内でも12年の時が経っており、それから考えると順当で正しいが、前作、前々作の荒々しさ、焦燥感はだいぶ薄まっている。あの何とも言えない不穏な感じが好きだとすると、本作はやや淡白な印象だろう。
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本書のオビには「探偵パトリック&アンジー 待望の復活!!」とある。正しく「待望」の1冊であり、同時にパトリック、アンジーの物語は本書で最終巻となる。であれば、このストーリー、この幕切れはないだろう。四十男になったパトリックは職にあぶれ、あすのパンを買う金にも事欠く有り様だ。前作の「雨に祈りを」から私たちは12年、続編を待ち焦がれた。それは、こんなパトリックの物語を読みたかったからでは断じてない。さらには、このシリーズ最大の魅力は、パトリックとアンジー(本作では2人は結婚していて4歳の娘も1人いる)、そしてブッバという異端のキャラクターを含めた3人の絶妙のトライアングルにある。もちろん、アンジーもブッバも登場するのだが、本書は有り体にいえばパトリック1人の物語だ。最大の魅力をそもそも欠いているのに、話が面白くなるわけがない。唯一の取り柄は、本書がシリーズ最高傑作(と私は思っている)「愛しき者はすべて去りゆく」の続編として書かれていることだろう。だが、これ以上はないという「舞台」を設えたのに、肝腎の「演出」がなっちゃいない。珍しく厳しい書評になってしまったが、期待がすこぶる大きかったぶん失望の反作用も大きい1冊だった。この程度の作品で、あのパトリック&アンジーシリーズが終わってしまうのかと思うと残念でならない。
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おお久しぶり!と喜んだら、何とこれで終わりだって。そうなのか…。私にとってレヘインは、他にどんなに傑作があってもあくまで、パトリック&アンジーシリーズの作者なのだ(ウインズロウがあくまでストリート・キッズの作者であるように)。
出だしから、まあ!ということの連続。二人が結婚してて子どもがいる、パトリックは汚れ仕事をして「正社員」になることを望んでいる、などなど。でもアンジーとの掛け合いは昔通りで、そうそうこれこれ!と読み進むうちにどんどん引き込まれていった。
お話は「愛しき者はすべて去りゆく」を受けている。アンジーが一度はパトリックのもとを離れることにもなった誘拐事件の顛末は、このシリーズを象徴して痛々しく重い。この最終作も同様で、登場人物と一緒に読む者も痛みと葛藤を感じずにはいられない。超越的な「名探偵」と対極にある探偵像を作り上げたことで、忘れられないシリーズになった。
パトリックとアンジーに劣らず、いやそれ以上に好きなのがブッバ。私の頭の中ではいつもブッチャーの姿をしている。ああもう読めないなんて!いやいや、本の中の人たちはいつでも、いつまでだってページの中にいる。また読み返すことにしよう。
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パトリック&アンジー・シリーズ最終作。前作からなんと12年ぶり。パトリックとアンジーの後日譚みたいな。年をとって守るものができて昔とは変わったふたりが興味深い。相変わらず、暴力、虐待とかマフィアとか社会の暗部など描かれているものは重く暗いのだけれど、やっぱりページターナーで一気読み。テンポがよくて、会話も気がきいていておもしろくて、ファンキーだけど情緒があってという感じ。堪能。ずっと下のほうにネタバレの内容を。最終作なんだけど、ハッピーエンドで本当にほっとした。よかった。個人的に、パトリックが危ない仕事から足を洗って安全な仕事に就くことにしてくれたのがすごくうれしかった。ほっとした。
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歳を重ね、抱えるもの、嘆きの対象が増えた主人公。著者自身の心情を慮ったり、自分自身の感情と重なる部分があったり、どこか寂寞としたものを感じさせられてしまう語りだった。
それにしても何ともきれいなハッピーエンド。あれだけこじれて解決策がないように思えた展開をすっきりと畳んでくれた。好きな作家であり、好きなジャンルであることで、多少強引で都合のいい展開にひいき目なのはあるかもしれないが、気持ちの良くのめり込めた物語だったことは間違いない。
残念ではあるけれど、シリーズの終わりとしてふさわしい作品。
■このミス2012海外19位
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★粗筋★
パトリック&アンジーの最終話シリーズ。行方不明の少女を探してほしいと依頼を受けたパトリック。その少女は、かつて一度誘拐誘拐された犯人から救ったことがあるアマンダだった。
パトリックに救出されたことを憎むアマンダの心の闇には何があるのか?何故なのか?
今回で最終話というのが残念すぎる。比較的最近に出された本みたいで、レッドソックスのベケットとかスマートフォンとかの話題をリアルタイムに感じれてよかった。
著者はシャッターアイランドも書いてるようで、残りのパトリックシリーズ終わったら読む予定。
デニス・レヘインは人を上手にシリアスに描くね。
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一冊の本を読むのにどれだけ日数がかかっているのだろう。プライベート・タイムが極度に少なくなった生活の中で、こと読書に関しては恵まれず、苦慮している。だからこそ選んで読む。デニス・レヘインのハードボイルド・シリーズについては知っていたが、これがシリーズ作品であるという予備知識は身につけぬままに読み始めてしまった。だけれど、ソロ作品として十分に手ごたえのあるストーリーであり、あとがきでも読まない限り、別にシリーズであろうがそうでなかろうが、この長編作品を楽しむことができるのだと思う。
探偵生活にけりをつけたいと考える主人公は、西部に行き場を失ったワイルド・バンチの一員のように、初老で、切ない。愛する家族とのオシドリぶりや、可愛い娘への父親ならではの愛情の向け方。それらに比例して、引きずってきた罪深き仕事にけりをつけたいために、飛び込んでゆかざるを得ない血と暴力の世界。
現代アメリカの行き場を失った私立探偵の足がここにきてさまよいがちになる。それもそうである。これはシリーズにピリオドを打つ重要な作品であったらしいのだ。なのに、そんなことも知らず、バーのカウンターから酒瓶に向けて指先で豆粒をはじくようにじりじりとゆっくりと読み継いできた。間を開けても作品世界は記憶を失わせることはなかった。強烈な作品世界は、いつでも時に立ち寄るだけのぼくを受け入れ、テキーラかなにかのストロングな酒を一杯だけ用意してくれたりした。
今では当たり前になったきらいのある幼児虐待の問題をさらに深く掘り下げ、虐待される幼児が自己防衛し、賢くなり、知恵を身に着け、家族から逃亡する姿が、探偵の目に様々な意味を投影する。現代アメリカばかりではなく、日本でも凄惨なDVが起こっている。つい二日ばかり前には滝行で娘を溺死させた親の事件が大々的に取り上げられたばかり。そんな病んだ現代に、狂った解決法をもちこんでゆくのは探偵ではなく、ロシアンマフィアの暗闘の引き金だ。
久々に読み終えた、中身たっぷりの、いわゆる「らしい」小説。ハードボイルド・ファンならためらわずにこの一冊を手に取っていただきたい。そんな傑作である。
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ダメな母ヘリーンからまともな男がアマンダを救い、まともな夫婦がアマンダを育てようとした
が、パトリックはアマンダをダメな母に返した「愛しき者はすべて去りゆく」の依頼から12年後
再び、アマンダを探してほしいとビアトリスから依頼されるパトリック
ダメな母ヘリーンはあいかわらず、駄目なまま
アマンダがどんな思春期の少女に育ったのか、パトリックとアンジーは聞きこみを続けなが知ることになる
知れば知るほど、失踪する理由が見当たらない
が、ヘリーンとその恋人ケニイが違法なことでお金を得ていること知った時、モルドヴァ出身のロシアンマフィア組織からも狙われていることを知ることになるパトリック
パトリックとアンジーはロシアンマフィアの魔の手から逃れ、無事にアマンドをみつけることが出来るのか!?
パトリックがビアトリスたちの詳細を忘れてしまったように、オイラもこのシリーズのことを忘れてしまっていた
そして、最終巻がでていることに気がついてなかった
パトリックが推理して、かけ回って痛い目にあって解決する気持ちよさが薄い
アンジーとペアでその描写が楽しいと思うこともない
登場人物が歳を重ね、血気盛んで物語の緩急がついてた頃と違う様子が最終巻度を増している
パトリックがジェネレーションギャップに戸惑い、知人たちが街を離れていて、固有名詞の意味がわからず、PCの扱いは苦手だったりする
それでも作家の手できちんと最終回が書かれ、ソレを読むことが出来てよかった
「ゴーン・ベイビィ・ゴーン」を借りてみようと思う。こちらも、忘れちゃってるから初見のように観れると思う
(1/05/'14)
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パトリック&アンジーシリーズの最終作。
前作から10年以上を経ての復活だが、今は夫婦となった二人が探偵業に見切りを付けたところで、やるせなき暴力に満ちた物語は終わりを告げる。
すっかり良き父と母になり、物事に対する二人の視点と行動は、家族を基点にせざるを得ず、より危険な賭けにでることに躊躇し、探偵という稼業を忌み嫌うこととなる。
これも人間としての成長なのであろうが、
ハードボイルドは暴力と対峙し、いかにそれを乗り越えて終結させるかに魅力があるはずだから、愛する者のために平凡な仕事へと鞍替えする主人公を責めることはできないが、やはり物足りなさを感じてしまう。
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パトリック&アンジーシリーズ最終巻。遂に終わってしまった。これで、ブッバにも会えなくなってしまう、残念。 愛しきものはすべて去りゆくの続編のような立ち位置だが、かなりその作品の後味が悪すぎたので、その後を書いたことであの事件の決着がつきすっきりした。ある意味まとめ巻なので、大きなスペクタクルもない。シリーズのファンのために書いたおまけのようなもの。
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最高のシリーズの、最高のフィナーレ。パトリックとアンジー、ブッバ、デヴィンとオスカー、リッチー、そしてギャビー。全ての愛すべき登場人物達に祝福を。
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パトリックとアンジーのシリーズ6作目。
たしかにその少女の行く末は気になっていた。
パトリックにとっても、アンジーにとっても、
作者にとっても同じだったのだろう。
だから、彼女が登場する作品を二人のシリーズの最後にしたのか。
親とは呼べないような母親の下から「誘拐」された少女は、
パトリック達によって、その母親に戻された。
なじみの鐘楼のオフィスも失い、他の探偵社で働いているパトリックは
その少女をまたもや探すことになり、
モルドヴァ人のギャングと渡り合う。
アンジーと結婚(!)し、娘ができた(!!)パトリックは、
二人を守りつつ、少女を解放することができた。
少女は予想より賢く、冷静で力強く成長していた一方、
平凡な人生を送れそうにはなかったが
一応ハッピーエンドなのだろう。
かなりシリーズとして気に入っていたが、
守るものができた「探偵」が、
探偵を卒業するようなラストを望んでいたかと問われると、
よくわからない。