紙の本
玉木史観を理解するのにいい本
2017/10/25 14:41
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投稿者:miyajima - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヨーロッパが世界に対して影響を継続的に持てるようになったのはせいぜい19世紀になってから。その影響力をもたらしたきっかけは、15世紀にはじまる火器の導入による戦術の大変化をもたらした「軍事革命」。
そして影響力を持続させられるようになったのはヨーロッパが「近代世界システム」を完成させたから、というもの。その中でヨーロッパが大西洋を経済的な支配下に置く課程が重要でそれには実に長い時間がかかったが、それを成し遂げたことがヨーロッパ(特にイギリス)が世界の覇権を握らせたというもの。
その中でも、オランダを乗り越えてどうしてイギリスがヘゲモニー国家となったかについて詳述されている点が本書のキモ。
ウォーラーステインとブローデルを批判的に継承・再解釈した玉木史観とでもいうものをなんとなく理解できたような気になる本。この後に同じく玉木先生の「海洋帝国興隆史」を読んでいるところ。
紙の本
じっくり再読します。
2016/03/12 22:07
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投稿者:クッキーパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新書という紙幅の制約がありながら、過去に教科書で習った事とは異なる事実も含めて、これだけの内容と情報量が手際よくまとめられていることに敬意を表します。最後はきちんと自分の立ち位置や考えを言い切っておられるので、好感が持てますが、この部分をもう少し膨らませて欲しかったと思います。全体を通じてとても勉強になりました。私にとっては是非再読したい一冊です。
紙の本
欧米の歴史が解る本。
2016/02/16 00:59
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投稿者:命"ミコト" - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は欧米が何故、覇権氏を取ったのか。
そして欧米の躍進はつい最近であったことを如実に表している内容であった。
更に現代は、欧米的価値観の終焉が近づいている事も納得した。
欧米の負の面を読む点で☆5つ。
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書店で見かけて気になって買った一冊。中身の大部分に繰り返しが多いのは少し微妙だが、学問的見地よりも少しゆるく語られる序章、終章、あとがきあたりが面白い。
オランダ、イギリス、アメリカと覇権国家が移っていくグローバリゼーションの歴史が語られる。なぜ覇権を握ったのがポルトガル、スペイン、フランスでなくオランダやイギリスだったのか、その理由が分析される。明治維新で日本人が最も学んだのはイギリスだったが、この時代のイギリスがいかに世界を牛耳っていたか、その感覚がよくわかる。例えば20世紀に入る頃には、イギリスが世界中と電信で情報交換できるようになっていたというのには驚くほかない。
終章では近代ヨーロッパシステムの終わりが予兆される。そこでは格差問題などにも触れられ、次のシステムが現れる予感を指摘するが、その時代の転換期を私は見ることができるのか、それを死ぬ前までに感じたいな、と思った。
他に軍事と商業の繋がりや、貿易における海運というファクターの影響力、商品連鎖の考え方など経済史の面白さを感じる一冊だった。
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新書でこのテーマはちょっと大きすぎたのではないか。
ほとんど上辺だけの咄になってしまい、もう少し深化した内容であって欲しかった。
ウォーラーステインの世界システム論、懐かしかったなぁ。大学で勉強したの、30年以上前だもんなぁ…。
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現在でもヨーロッパ覇権の残滓は世界中に存在する。長い歴史の中のわずか19世紀以後のヨーロッパの覇権だったにもかかわらず。
オランダ、ポルトガル、イギリスと続くヘゲモニー国家の世界進出の歴史を読み解いていく。
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なぜ,現在の「世界のルール」を決めたのが西洋だったのか。軍事力に裏付けされた経済という視点から,ヨーロッパ擡頭の世界史を眺める。歴史部分は良かった。でも今後を占う終章には反グローバル的な何か妙な偏りを感じた。
"日本はモノづくりを維持し、アングロサクソンとは違う資本主義を目指すことが、世界経済にもっとも大きく貢献することになると信じる"
"近代世界システムの特徴は、「飽くなき利潤追求」にある。それには「未開拓の土地」が必要とされるが、もはやそれが存在しなくなった現在、世界は労働者の賃金に「未開拓の土地」を求めていると考えている"p.204
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「覇権史」という表現から何か政治的なものの歴史かと思ったが、中身は経済史。大きくみれば西洋が今世界の「覇権」を握っている印象を与えるのはやはり1500年以降の大航海に始まるんだろうな。それまでは東に対して弱小なグループでしかなかったのだろう。まあでも、近世に入って以降の増長ぶりはやはり西洋独特の性格がモロに出ているようだ。あの強烈な利己主義の源は何なのか。
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論旨の軸足がブレておらず落ち着いて読めるヨーロッパの覇権争いを興味深く執筆
なされております。
上級の高校生の副読本として教養高めるのに適しています。或いは、大学機関に
於ける教養課程から専門課程ですら、使えるような幅広さや深みを持ち合わせてる
良書だと思います。
ただし、筆者は左ですから。その辺り差し引かないと思想に取り込まれるでしょう。
読み始めて「あれ」と。間もなく「ああ・・そうだろうな」トドメが「あとがき」。
資本主義と帝国主義・重商主義といった発展段階は、これらの要因に依存しながら
(こういう言葉?表現出てくる時点でアレなんだろうなと)
かたや、
1).国民国家の野望を遂げるため。
積極的な政策的介入に乗り、護送船団方式的かつ英国中央集権な
<管理貿易>の道を選ぶのか。
2).コスモポリタン・世界市民的商人による自主性に委ねる、自由市場の放任。
まさしくボーダレス的世界を先駆けで商いを臨む、グローバリズムの先駆 け的な商人たちの非公式ネットワークによる市場開拓。時代の求められる要素 は存外国民性や国民気質に依存しておるのかもしれませんね。
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近代以降の世界の権力史を、ヨーロッパを中心にまとめたもの。オランダ、イギリス、アメリカといったヘゲモニー国家をはじめ、スペイン、ポルトガルといった海洋国家、オスマン帝国や中国、マニラなどの記述もあり、広く覇権国家について理解できた。学術的だし論理的で読みやすい。
「現在のアラブ世界の問題のいくらかは、ヨーロッパ諸国が勝手に国家なるものをアラブ世界につくったがために起こっている」p24
「ポルトガル海洋帝国が育てた果実を取っていったのがイギリスであった」p27
「火器を最初に使用したのはヨーロッパ人ではなく中国人であったが、その使用をもっとも積極的に行ったのはヨーロッパ人であった。そのために、やがて世界中の戦争で勝ち、植民地を獲得することができたのである」p33
「火器をどのように受容するかで、この当時の国の運命が決まったといって過言ではない。この点で、ヨーロッパは最も進んでいた。そして、それに次いだのは、おそらく日本であった」p34
「イギリスとフランスを単純に比較するなら、国土はフランスの方がずっと広く、人口も2~4倍多かった。にもかかわらず、実際に勝利をえたのは、イギリスであった。巨額の借金をしながらも、イギリスはフランスとの戦争に勝ち、ナポレオン戦争が終わった1815年には、ヘゲモニー国家となったのである」p50
「近世のヨーロッパで生まれたグローバリゼーションだけが、政治的な統一体である世界帝国を形成せず、経済競争を行う世界経済となった。競争の単位は主権国家であり、各国が飽くことなく利潤を求めて競争した」p61
「一般に、オランダは貿易によって繁栄したとされるが、それは正確な見方ではない。オランダは、海運業によって繁栄を謳歌したのである」p75
「国家が戦争状態にあれば、敵国に対する憎悪感が増していく。そのため、ナショナリズムが高揚することになる」p80
「(13世紀)ヨーロッパの軍隊は弱く、イスラームやモンゴルと戦争をすると、ほぼ壊滅状態に至った。つまり、ヨーロッパが、陸上ルートによって東へと出ていくことは考えられなかったのだ。だからこそヨーロッパは、アフリカ大陸を南に下り、喜望峰を経て、インドに行くほかなかったのである」p92
「ルイ14世が死去した1715年からフランス革命が勃発した1789年まで、フランスは国際貿易で主導的役割を果たした。その中核となったのがボルドーであった」p113
「(14世紀~)大西洋貿易で最も重要な商品は砂糖であった」p132
「産業革命とは、どちらかといえば劣勢に立たされていたヨーロッパ経済が、アジア経済に追いつき、追い越す過程を表す」p174
「さまざまな学問の共通語は英語であり、理系の場合、英語以外に国際的な雑誌はないというのが現状である」p185
「アメリカは、自国に都合の良いことが正義であると無邪気に信じているところがある」p189
「こんにちの世界では、ごく一部の企業のトップを除くなら、賃金を上昇させる誘引はない。このような世界の出現は、結局、近代世界システムが世界を覆いつくした結果だということに尽きよう」p197
「会社はまさに株主の所有物であり、そこで働く人々の幸福は考えない」p198
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予想以上に面白い…興味深い本でした。
ヨーロッパ覇権史という書名ですが、内容は世界経済システム史の概説であり、個人的になるほどと思ったのは、工業国と資源供給国という単純化した従属関係ではなく、そこに「輸送(海運)」という確かに言われてみれば非常に重要なファクターを明示的に加えていることと、「決済」というこれまた当然ながら重要なファクターについては、それを成し得るための「電信」の重要性についても強調している点。
昨今の「資本主義の限界」についての議論の前提となる世界経済システム史についての理解を深めるための良書と思います。著者の他の著書も読んでみたくなりました。
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200ページで比較的薄い本だったが、意外にしっくりと読めた。なぜオランダやポルトガル、フランスがイギリスの敗北したのか、その原因を国家によって統制された貿易に求めたのは、よくありがちな考え方のように思えるけど、大真面目に読んでみるのは初めてだったから、面白かった。