紙の本
まっすぐな表題
2015/11/15 20:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルがなんともまっすぐ。幕末の動乱の中のある夫婦の壮絶な物語。ただこれも当時はほんの一つできごとでしかなかったのが、なんとも重い。誰に語るでもなく、でも後世に伝えたかった気持ち。それを手記に残し、いずれ読まれるであろうとした奥ゆかしさ。どんなにひどし仕打ちをうけ、惨たらしく死を迎えたとしても辞世の句だけは残した武士とその家族の強さ。敵わない。わたしたちの血流は続いているはずなのに、いまはそんな風流さみじんもない。「君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ」愛する夫への恋歌は切ない。
紙の本
波瀾万丈
2019/11/03 14:34
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投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末から明治初期にかけて、波乱の人生を送った歌人、中村歌子の物語。前半は恋多きお嬢様の恋物語かとも読めるが、後半は時代に翻弄されながらも自分の人生を生きようとする歌子の姿に引き込まれる。
本書のタイトル『恋歌』は、歌子の伴侶、以徳を思い詠った短歌から。ネタバレになるので書かないが、この歌から彼女の以徳への思いが熱く伝わってきて、読み進めながら目頭が熱くなった。
紙の本
重量感を感じます
2018/09/14 23:03
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投稿者:しんごろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は幕末から明治にかけて水戸藩の争いに巻き込まれた歌人の人生!天国、地獄を味わい生き抜く精神の強さに感銘しました。ちょっと読みづらいとこもありましたが、物語は引きこまれるパワーがあります。
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入れ子の構造。歌人、中島歌子が病床にあるなかで、家の整理をする弟子ふたり。散らかった紙束の中に、めずらしく言文一致体で書かれた小説のようなものを見つけて、読み始める。それは、師がたどってきた険しい道のりを綴ったものだった。その内容が物語のほとんどを占めている。
宿屋の娘から水戸藩士に嫁いだ歌子、=登世。幕末という大きな転換期を、血で血を洗う内紛に明け暮れてしまった水戸藩を、女の立場から見続けた。粛清に巻き込まれて牢暮らしも経験した。敵対する一派の家族であるというだけで「大根の首でも落とすような、酷い所作で」命を奪われた妻、母、子供たちを見届けた。
前半の、若い娘の恋心があふれる瑞々しさ、初々しさとはまるで違う、血塗られた時代の描写は読むのが辛くなるほど。しかし、生き抜いた登世が和歌を学ぼうと決意した理由が、夫・以徳を戦場へ見送る時に詠んだ歌があまりにも拙くて後悔したから・・・というところに、なんというか、衝撃を受けた。
人は、そういう動機で、自分の生きる道を選ぶことが出来るのだ。むしろ、女だったからそうなったのかもしれない。男ならばやはり一矢報いて自らも・・・というのがあの時代の当たり前だった。それが難しい女だから、後悔を抱えつつ、生きる理由として、歌を選んだ・・・。
入れ子なので外側の弟子にも物語はあるのだけど、やはり内側の熱量がすごかった。
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樋口一葉の師・中島歌子は、知られざる過去を抱えていた。幕末の江戸で商家の娘として育った歌子は、一途な恋を成就させ水戸の藩士に嫁ぐ。しかし、夫は尊王攘夷の急先鋒・天狗党の志士。やがて内乱が勃発すると、歌子ら妻子も逆賊として投獄される。幕末から明治へと駆け抜けた歌人を描く、直木賞受賞作。
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幕末の水戸を舞台にしているのが新鮮。
→https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12379216569.html
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樋口一葉の歌の師匠の中島歌子の波乱に満ちた半生を描いた作品。舞台は維新の水戸藩。
歴史物は苦手でしたが、直木賞というのとタイトル「恋歌」に惹かれて読みました。
女の一生というのは、生きる時代で違ってくるもの。文明が進んだ現代では考えられない壮絶なシーンもありました。
人を想う気持ちはいつの世も切なくも悲しく、そして、甘く強いものなのだと思います。一人の人をここまで愛せたら、例えあえなくても幸せな女の一生なのでしょうね。
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女優の杏さんがテレビで勧めていて読んでみました。朝井まかてさんの作品は初めて読みました。
教科書で大政奉還は習ったものの、その裏で水戸藩の人、主人公たち市井の人がどう苦しんだかを教えてもらえる作品。
ドラマや映画では幕末の著名な藩士たちの姿が描かれますが、映像にするにはあまりに酷い歴史に胸が潰れそうになります。
そしてその時代に生きた女性の燃えるような恋を見届け、本を閉じると、深くため息を吐くしかありませんでした。
読んでいくうち、この本を勧めていた杏さんが大事にしているものに少し触れられるようで、以前よりも彼女のファンになった気がします。
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幕末から明治なる動乱の時代に
水戸藩士の妻となった女性の半生が描かれている。
水戸藩内部の内乱により逆賊として投獄される。
彼女はのちに歌人となり明治の世を生きる。
途中からどんどん先が気になって、気がつけば読み終わってました。水戸藩の内乱ははじめて知りました。
君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ。
この歌は泣けます。
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直木賞作品。
朝井まかて氏の作品は初めて読む。
まだ作家としては熟していない頃の
作品だと思うので 批判は控えたい。
描かれたものが生々し過ぎて
描かれたものから何を読み取るべきか
私にはわからなくなってしまった。
中島歌子の生涯については
とても詳細に取材されたのだろう。
血が匂い立つような描写は迫真だった。
歴史の語るものは事実であり
それを受け取ることに抗いはしない。
しかし 私が求めるものは文学であり
人間への賛歌だ。
胸の底まで冷え切ってしまう史実から
私はなお 何かの救いを得たかった。
歌の 言の葉の尊い力さえ 副え物のような
扱いでは 発揮されない。
筆力には敬服したが 得られなかった。
これは私の問題なので
参考にはしないでほしい。
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中島歌子については、萩の舎の名とともに樋口一葉の師として描かれているものに触れたことがある程度だった。
その彼女が、こんなに凄絶な経験をした方だったとは・・・。
巻末の解説を読んで、もう一度、問いかけられるものを感じました。
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明治時代の歌人、中島歌子の生涯を描く、直木賞受賞作。
のちに樋口一葉の師としても有名になった彼女は、江戸の豪商の娘として育ち、恋慕った水戸藩士林以徳に嫁し、初恋を成就させる。しかし時は幕末、特に混沌として不穏な動きの絶えない水戸でやがて壮絶な運命に飲み込まれる…。
大成したのちの彼女からは想像もつかない過去。今まで知らなかった水戸藩内部の戦乱と相まって、最後まで引き付けられた。また、終盤でふと現れる意外な人物の真実など、仕掛けも心憎かった。
まだまだ幕末には知られざる波乱の生涯を送った人物がいるのだなぁと思った。
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歌人中島歌子の波乱の人生を綴った歴史小説。タイトルと前半部の展開から恋愛に重きを置いた情緒的な作品かと思ったが、水戸に舞台が移ると俄然重厚なドラマとして読者に迫り、後日談も鮮やかで清々しい。なぜかイアン・マキューアンの「贖罪」(ATONEMENT)を連想した。
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読み終えて、恋歌の本当の意味を知った。
登世が水戸藩士以徳と出会い、恋し、水戸へ嫁入りをする。少女であった登世の初恋から恋愛結婚と若々しい活力と希望に満ち溢れた様子に、本書を読む私にも水戸の空も田畑も輝く情景が目前に浮んだ。
しかし、桜田門外の変に露見するそれ以前から狂っていた歯車は、速度を増して新妻登世を波乱の運命へと巻き込んでゆく。
幕末から明治維新を書いた小説の多くは、時代の偉人や悲劇のヒーローを中心に書かれているが、時代の渦に巻き込まれ翻弄され泡と消えた多くの藩士やその妻たちに触れた作品は読んだことがなかった。
時代の梶に触れることも、流れを読むこともできず、ただ自滅していった水戸の志士たちの無念と、その志士を支え信じ通して牢獄で命を絶たれる妻子たちの無念を思うと余りある。
また明治に時代を遷しても続く報復の連鎖に胸がさらに痛む。
死を前に、信じる夫や妻を想い読む辞世の31字の重さはあまりに重く悲しい。
今、シリアやイスラエルを中心に起きている悲劇の構図も、多少の違いはあれど水戸での悲劇と同じように感じる。明治維新から1世紀以上経ち、急速に人類の知恵が発展しても、まだ人類が似たことを繰り返していることに、人の世はつくづく難しいと感じる。
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あまり歴史小説は読まないのだけれど、女優の杏さんが勧めていたので。
歴史に詳しいわけでもないけれど、段々と吸い込まれてしまいました。
あの時代に生きる女性の志を見た気がします。