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海軍反省会も5巻目となると、主要な出席者のキャラもだいぶわかってくるが、あの時代の選抜をくぐりぬけてきただけあって、みなそれなりに優秀な人材であるのがよくわかる。
しかし、この人々はそもそも「反省」しているのだろうかとの疑問をいだいた。
自らの行動が「帝国の破綻」を招いて、日本人の死者だけでも310万人ともいわれる。アジアにおいては千万の位の死者がでたといわれるが、その結果についての「慙愧の念」や「深刻な後悔」などは、彼らの言動には伺えない。
「反省」の内容についても、そもそも海軍関係者でそれまでに論議の積み重ねがないからこそ、本書の論議になっているように思える。
「歴史認識」とは、昨今、中国や韓国が多用する言葉であるが、そもそも我が国においては、「昭和の戦争」についての国民の共通する「認識」の成立どころか、積極的な論議が行われていないことを本書を読んで痛感した。
本書の内容は、「海軍」という当時の花形国家機関の活動内容を知ることができるという点では実に興味深い。
とりわけ「特攻」について、多くの者が否定的な意見を持っていることも驚くが、ではなぜ当時、それらの意見が浮上して、5000名とも言われる特攻犠牲者を防ぐことができなかったのだろうか。
彼らは、当時は腹の中では反対でも口に出すことができなかったのだろうか。
「国策」についての論議の中に「統帥と国軍の分裂、国軍の不調和…政治力が統帥を抑え切れない・・・、それを裏付ける暴動、クーデター、暗殺、正規軍の反乱、そういうものが随所に起こっている。これを見るというと、日本という国はどういう国だろうか」との発言があるが、このような論議がもっと広範に行われなかった事実こそ、日本的な文化なのかもしれないと思えた。
本書の内容は決して共感や感情移入できるものではないが、当時の海軍関係者が何を考え、何を行ってきたのかがよくわかる本であると思う。