ギオンのツガイ　１【電子特典付き】 みんなのレビュー

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投稿者：求道半　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

馴染みのある日本神話を題材にした近未来ファンタジー、と言えば、この作品、と答えるのが当たり前になる日が来るかもしれない、回を重ねるごとに内容が深まりつつある、純愛ラブコメディーである。もしくは変態ラブコメディーに限りなく近い、過酷な運命に抗う少女の戦いの日々を笑い飛ばす、シリアス風味のアクションコメディーだとも言える、評価の基準が定まらない、混沌寸前でありながら破綻はしていない、摩訶不思議な内容だ。
　ヤマタノオロチを軸に据え、それが揺ぎ無く話の骨格を支えているのが功を奏し、猥談や色恋沙汰に話が逸れても、本筋は着実に前へ進み、もったいぶった思わせ振りな読者を焦らす叙述は皆無で、箸が進み、おかわりしたくなる、最高のごはんとおかずの組み合わせである。
　ただ、全体的に雑味や灰汁が強いと感じるか、それを作者の個性と肯定するかで、読者の受け取る印象が様変わりするのは間違いなく、あざとい描写の割りに肝心の箇所が省略されているのも、万人向けとも、男性向けとも、作者の熱烈な愛好者限定の作品である、とも即断できない、悩ましい難問である、と知らずに手に取り、失望する可能性もないとは言い切れず、絵柄を重視しない読者は熟慮を要するであろう。
　巻末にはあとがきだけではなく、数名の作家による応援イラストが一人一ページの配分で収録されており、いずれも質の高いおまけで、二巻以降も続く企画か楽しみである。
　個性的な耳のついた美少女が大手を振るう世界を楽しめる人にはお勧めできる、大小さまざまな胸の大きさの違いを味わいたい人にも読んでもらいたい、女性の年齢よりも見た目を重視する奇特な人がとりわけ歓喜する、男も大活躍の問題作だ。