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紙の本
ロマンスの研究
2015/12/03 17:11
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投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
史実と神話の接点を、羽衣伝説の枠組みを逸脱しない範囲で巧みに描いた、興味深い作品の下巻は、大団円でありながら、前日譚、後日譚を想像で補う他に手がないのが悔やまれる、また想像するのが楽しみでもある、上巻以上の展開の速さと中身の濃さで、平安京の都大路を吹き抜ける薫風が感じられる力作である。
牛、魚、狼、烏、雉、龍、猿など、動物が重要な役割を果たす、盗人が暗躍し、富士山の噴火におびえる人々が神に祈る、羽衣を巡る冒険が孕む、神々の黄昏を目にした読者の脳裏には、壮大な世界認識が必ず宿ると確約しよう。
創作ではない、史実である、真実である。
これが羽衣伝説の真相だ。
漫画ではない、散逸した神話の断片の再構成による絵物語だ。
そして恋の物語だ。
摂関政治の始まりを告げるこの時期に、国風文化の生みの親、菅原道真が権謀術数の一端を披露する権力抗争の火種となった羽衣には、本編では語られない愛憎劇が織り込まれており、糸に宿された感情に触れれば、単なる御伽噺、昔話ではない羽衣伝説の奥深さが、身に染みて理解でき、また、それに気付いた瞬間に、作品に内包された捌け口のないやるせなさが、我が身に引き寄せて、実感されるであろう。
日本の国の成り立ちに関心はあるが、史書や研究書を片っ端から読み込みたいとは思わない、ただ、何となく昔の事が気になる、多くの本好きにとっての手軽な参考書、肩肘張らない入門書として、また、ここから神話、伝説、歴史、風俗などの各領域に興味の幅が広がる足がかりとして、役に立つ、立たなくても暇つぶし以上の有意義な時間が過ごせる、豆知識の詰まった全二巻のガイドブックである。
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