電子書籍
読むと背筋が伸びる
2020/07/07 22:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りり茶 - この投稿者のレビュー一覧を見る
堀文子さんのことは知りませんでしたが、亡くなったことを伝える記事のひとつに
「群れない 慣れない 頼らない」
という生き方を貫いたとあり、どんな人なんだろうと興味を持ち、この本を購入しました。
小さい頃から亡くなる数年前のことまでが書かれていて、堀文子の人生についてよくわかります。群れないといっても、本来自分は人が好きで、人付き合いも楽しめるということも仰っています。でも、そんなことをしていては、己と真剣に向き合うことはできないのは確か。芸術の世界だけでなく「民主主義は群れた人間が勝つ」というのも、まわりを見渡せば納得します。
私は堀文子さんよりも自分に甘いけれども、「ひとりで立てる人間になる」と若いときに決めたことから逃れられないので、共感するところが多かったです。
群れたくなり、頼りたくなり、慣れたくなるとき(笑)現実に信念がぐらつきそうになるとき、ひとりで生きる強さに触れて力がわいてきます。
読み返すことの多い良書です。
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1918.7.2生まれの堀文子さんの生き様、自伝の書です。2015.11発行。1960年3月、41歳の時、結婚生活14年で、夫を結核で亡くし、残りの人生は自分のために生きようとされたそうです。そして世界旅行をし、1964年4月帰国。並みの人ではないなと思います。1967年、49歳、東京・青山から大磯に引っ越しされてますが、このとき同行したのが・・・、猫一匹、カラス一羽、尾長二羽、高麗キジ一羽にコイ、金魚、熱帯魚だそうです(^-^) (フクロウは転居前に死亡したとか)今はどんな動物と暮らしてるのでしょう?!
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〈本から〉
物を作る人間は都会にいてはいけないという強い決心を抱きました。
美というものは、歴史を離れて、どんな時代でも、国や、男女や、学問のあるなしに関係なく、胸を打つものでしょう。勉強しなくてはわからない、といういうような性質のものではないと思うのです。
極寒の寒さに耐える山の草木には、次の春に芽吹く命が眠っています。冬の中には春の予兆があり、死の中に、生へのエネルギーを秘めた命が息づいているのです。生と死は常に隣り合わせで、決して別々に存在するものではないことを、自然はわたくしに教えてくれました。
描くものに対しては、感動とか興奮といった生易しいものではなく、逆上に近いような感情を持っていないと、人の魂など打たないのです。
わたくしは山の獣、草木、花々が、日々生と死を分けながら生きているさまを観察してきて、その原始の感性とでもいうものに少しでも近づきたいと思っています。そうした本来の生物としての能力を発揮しているときこそ、命は輝くのではないかと考えております。
縁側というものは、里山だと思います。外の世界と内の世界を隔てる役割を持っていたものだったのです。
わたくしが生まれた時から身につけていた言葉づかいや礼儀作法、美の意識は、すべて「古い日本」でした。
「慣れない、群れない、頼らない」という生き方
私の生涯
いま
私はその日その日の現在に熱中し
無慾脱俗を忘れず
何物にも執着せず
私流の生き方を求めて歩き続けて参りました。
これが私の生きた道です。