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紙の本
幻のハチミツ・硬蜜を求めたはずが
2016/05/08 18:13
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
諸事情あって食品輸入会社の現地職員としてアテネで働く美貴は、幻のハチミツ・硬蜜に出会い、自分が独立してひと旗あげるビジネスチャンスだと勢い込む。 その硬蜜を出してくれた通訳の綾子にどこで生産されたものか訊き、直接現地に交渉に向かう。 旅の途中で偶然知り合った壁画修復士の吉園、綾子とともに養蜂をしている村を訪ねるが、既にそこは無人で蜂の巣箱もカラ、そして廃院となった修道院を見つける。 その宿坊の壁に描かれた不思議な構図の大天使ミカエルを目にして以降、三人のまわりでは次々と不可解な現象が起こるようになり・・・。 現地の修道士の言うとおり、悪魔の仕業なのか?、という話。
「見てはいけないものを見てしまったために恐ろしい世界に引き込まれる」という篠田節子お得意の基本設定。 恐ろしさではあの『神鳥-イビス-』に敵う作品はないと私は思ってしまいますが、今回は完全ホラーではなく科学的解釈をきちんと用意。 でもパニック状態に陥ったり思い込みが激しかったりする人間は何を見るかわからない、的な科学的に説明のつかない部分も残しつつ、日本人には縁の薄い一神教の宗教観も取り入れて、篠田節子の追いかけているテーマ全部取り!、みたいな感じに。
主役である美貴のたくましさ(図々しさ&自覚した無神経さ)ときたら、「一緒に仕事はできるかもしれないけど友達にはなれないかも・・・」というすごさ。 ギリシア人と結婚するためにギリシア正教に改宗し、敬虔に生きている綾子の姿に自分のごたごたした清廉潔白ではない過去を見せつけられてげんなりし、その反動で相手を攻撃するというおとなげのなさ。 過去からくる男性への信用の無さ。 でもそれは同時に美貴の男を見る目がないということでもあり・・・本人、それもわかっているから複雑。 男性修道士の「神のみもとに近付くには女は邪魔」的な言動にキレるあたりも、まぁわかるけど、「これだから男ってのは!」と言いながらも信用したい気持ちの表れなんだよな~。 期待してなきゃ、怒りも湧かないはず。
そんな彼女に、「なんだこの女、身の程知らずか!」的印象を抱いてしまうと物語に全然入り込めないだろうし、共感を得にくいキャラクターを主役に持ってくるところが篠田節子のチャレンジングなところです。 私自身は彼女にそんなに反感は持たなかったけど・・・身近にいたら面倒そう、という気持ちは若干拭えない(だってアクティブすぎるというか、ハングリー精神が強すぎなんだもん)。 自分にはない性格なので、すごいなぁとは思いますが・・・つかれそう。
悲劇の結末かと思ったら、思いのほかそれほどでもなく、ちょっと希望すら見えるのには驚き。
文庫化に際してハードカバー版に加筆修正されたようです(特に後半)。 これも時代に合わせた変更なのかしら。
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