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電子書籍
未解読
2020/03/03 04:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:123456 - この投稿者のレビュー一覧を見る
素晴らしいことは確信しているのだが、どこがどう素晴らしいのか、説明することができない。本を読んでいると、そういう小説に出くわす事が度々ある。
そういう時に、もどかしいと感じるのは当然のことで、読まなかったことにしてしまおうかと思うこともあるが、そういう本に限って、やはり後まで気になって仕方がなくなっていたりする。
そして、そういう直感が働く本こそ、自分にとって、結局は重要な意味を持ってくることが多い。
初めて読んだのが十何年前で、その時の感想は、「ボヴァリーや女の一生の系譜にあたる類いの小説で、若干退屈」というものだった。この感想が、どれだけ安直で的外れのものだったか、今になって思い知らされている。
学生の時の感想に、恥ずかしいものなどない!すべては経験だ!と言い切ってしまいたいのだが、しかしなかなか、自己暗示にも限界がある。
その後、数年前に、久しぶりに読むことになった。久しぶりに読むにはちょうどいい長さ、という理由で読み始めたのだが、やはりそこにも直感が潜んでいたのか、長さの割に、中身はぎっしりと詰まっていた。
結果、「これは単なる古典とは言えない」「ボヴァリーや女の一生とは全く異なる類の小説だ」という印象を持つことになった。
しかし、具体的にどこがどう良かったのかということになると、自分にもよくわからない。とりあえずちょっと寝かせてみようと考え、しばらくそのままにしておいた。
そして今回、またざっと読んでみたのだが、「なるほど、これは、どこがいいのか説明できるはずもない」という感想に至った。
「素晴らしい」と感じたことは、言うに及ばずである。
一言で言えば、理解するのに必要な知識が多すぎるのである。
まず、ボルドー周辺の気候や産業の知識。
当時の家庭における女性の役割。
当時の良妻賢母像。
この辺りなら、まだ何とかなる。
家柄の一般的な感覚。
家柄の枠内における女性の自由とその制限。
宗教的、家柄的美徳感から導かれる自由と逸脱の規定。
無知から導かれる差別の正当化さらには美徳化。
生きることと財産を築くこととの同一視。
創造的な生への無関心。
これらのコードに抗う者への土着的なパージ。
そして、善悪の問題。
探そうと思えば、他にもいくらでも見つけることができるだろう。
救いなのは、これらの事を知らずとも、小説は感動を呼び起こしてくれるということだ。
ちなみに私は、テレーズがなぜ夫を殺そうとしたのか、未だに分からずにいる。
いや、小説を読んでいる間は分かる気もするのだ。心がサンクレールにある間は。しかし現実に戻ったとたん、殺人という言葉とテレーズとの間に、大きな隔たりを感じてしまうのだ。
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