紙の本
肩の力を抜いて詩を味わう
2016/11/26 03:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なないなな - この投稿者のレビュー一覧を見る
詩はエッセイみたいにさらさらとたくさん読むことができないけれど、行や聯を行ったり来たりしながら味読する楽しみは詩ならではだと思う。言葉とどこまで突き詰めているか、向き合っているか、絞り出しているか、そんなことをいつも想像してしまうのだけれど、そんな言葉との「闘い」が堪らなく好きだ。
この詩集についてはそんな「闘い」とは距離を置いたところにある作品が多い。もっと自由でもっと生活意識に近い感じ。なので読み進む速さは自然と上がるのだけれど、作者が描こうとしていることや伝えようとしていることは、速さに乗ってしまうと受け止め損ねるので、自制しながら読み進めた。そのジリジリ来る感じもまた楽しい。
楽しくて、寂しくて、苦くて、哀しくて、でもやっぱり楽しい好きな詩集。
紙の本
しみじみとした味わい
2015/09/20 00:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KU - この投稿者のレビュー一覧を見る
この詩人は、一般にはあまり知られていないかもしれませんが、是非ご一読をお奨めします。なんともいえない味わいがあります。
紙の本
疎外されている
2015/11/12 06:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風花 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ということが、マイナスの現象でなく、どこか、自由へと繋がっているのを感じる詩が多い。
たとえば次の一節。
わたしは窓を開けないで窓を
閉じたままにする
わたしは部屋もこころも暗くして
わたしは閉じこもった野犬になりたい
わたしは生まれながらの野犬なのかもしれない
(『谷川俊太郎編 辻征夫詩集』「野犬」より抜粋)
平易な言葉だからこそ深く心に残る詩。
全体の分量も割合気軽に読める量ではないでしょうか。おすすめです。
投稿元:
レビューを見る
優しさが溢れ返らんばかりの口語詩。
おい、あのあしかの、あの眼つきを見ろ。あれはたしかに〈はじらい〉を知っているぞ。
で、ぐいっとつかまれ、
鼻と鼻が
こんなに近くにあって
(こうなるともう
しあわせなんてものじゃないんだなあ)
でそのチャーミングに撃たれ、
恋人の寝姿の傍らで昼の月を見る心について思う。
人の中に在る蟻の涙ほどのちいさな無垢を信じる人間が、いてくれてよかった。
投稿元:
レビューを見る
現代詩のはずなのだが、ゲンダイシの先生方の作品と比べてずいぶんと平易である。あまり頻繁に言葉が逸脱しない。つまり、ひとつひとつの語が日常語的なコンテクストを離れ、差異をはじけさせて孤立して輝く、といった現代詩ではない。
むしろ日常的な風景をさりげなくえがきながら、不意に意外なイマジネーションに移行する。そんなスタイルで、文壇の中ではかなり地味な存在だったにちがいない。
たとえば吉増剛造さん以降のような鋭い語の連発をめざす人々から見れば、辻征夫さんの詩はあまりにも平易だ。しかしもちろん、ここにもたしかに「詩」がある。
この詩人が将来の文学史に名を残さないにしても、それと「詩の真実」とは別である。だから最前衛だのなんだの、現代詩としての進歩だのなんだのといったことは考えないでいい。考えないようになりたい。
投稿元:
レビューを見る
手をつけやすい値段だったのが買ったきっかけ。辻征夫という詩人についてもよく知らなかった。なんかかっこいいというのが率直な印象だ。野球の投手でいうと、なんか地肩が強いから過度に変化球に頼らなくてもいいような感じなのか。上手くいえないが、素直に出た言葉がそのまま使えるって感じ。『かぜのひきかた』ってまだ手に入るのかな。
投稿元:
レビューを見る
雲
詩は曖昧さを避け、その意味する範囲を限定するものである。(原文と異なると思う)
それは創作者側の願いであったり意図であろうが
読み手に、鑑賞者にその鑑賞範囲だったり対象の逸脱を避けるように図ることは不可能であり、なおかつ愚かしいこと。
経験、世界観の相違および人間の観想しうるものは
それは限定されているというより有限であるといったほうがよいだろうが、その有限個は有限なのであって、ないのではなくあるのである。それも一つ二つ三つといったように少数でなしにその総和・総数がわからぬままとりあえずの認識可能なる範囲で有限個であると措定しているのである。
そんなことはわかっている。そうわかったうえでこの言葉、辻さんの詩に対する考え方を見ていたい。
創作者の創作した背景はおそらく詩をある意味厳密・限定しうるに十分なものであろう。
詩というものは、この書の「雲」に属し、
投稿元:
レビューを見る
高橋源一郎の小説に引用されていた「きみがむこうから」という詩の詩句で、久しぶりに興味を持ちました。感想はブログに書きました。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202012280000/
投稿元:
レビューを見る
ほのぼのと笑ってしまったり、平易な言葉で紡がれた真理に胸を打たれたりした。
このひとの詩は肩肘張らずに読める。抒情詩っていいな。