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なんの問題も感じない絵が、細部に言及された途端恐ろしさを増すのも、元から恐ろしさしかないものも、どちらも良い。
女性、子供、殺される平民。まだまだ抑圧は続くものの、命なぞボロ布よりひどい時代だったと実感する。西洋史をもっと勉強したくなった。
好きなのは「ベアートリーチェ・チェンチ」と「王女メディア」。ベアートリーチェはどんな時代も美しい物語を求めてしまう警鐘に思えるし、メディアは元から好きな話だったものが、よりおぞましさ悲しさを持って肉迫してくる。
「かわいそうな先生」もいい。ガヴァネスとして働かざるを得なくなった女性と、その未来を予感しているような右の少女、そして何も悩まず縄跳びに興じる少女。怖い。
今年開催される展覧会、是非とも訪ねたい。
この村上隆さんの解説必要だったかね。美形の青少年だったら作者に囲われたかったって失礼極まりない。
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中野京子が名画の背景を主観と批評を交え読み解いていくシリーズ第三弾。
正直絵画にはそこまで興味がなかったのだが、時にユーモアたっぷりに、時にエスプリを効かせ、時に辛辣な観察眼を発揮し綴られていく文章は名人芸の域。当時の時代背景や風俗と巧みに絡め、作者の人生や心情をも投影させるような文章は読みやすく面白い。
絵画そのものの迫力もさることながら、その絵が描かれるに至った背景を知る事によって、人間性の深淵をも抉り出すような凄みと深みが増す。
今巻で特に印象的だったのは「悪しき母たち」。
某翻訳恐怖小説短編集の表紙にも採用された有名な絵だが、不勉強な自分は恥ずかしながらこの本を読むまで作者はおろかタイトルさえ知らなかった。しかしまさか堕胎の罪を犯した女(娼婦)の罪と罰をテーマにした絵だったとは……
章立てが短いので集中力を途切れさせずに好きな所から読むことができるのも親切。
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目次:作品1 レーピン『皇女ソフィア』、作品2 ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』、作品3 カバネル『ヴィーナスの誕生』、作品4 ベラスケス『フェリペ・プロスぺロ王子』、作品5 ヨルダーンス『豆の王様』…他
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レオナルド・ダ・ヴィンチの絵はミステリーを見ているみたいで、パーツが符号していく瞬間に快感を覚えずにはいられない。まだ色々な謎や秘密が隠されているのではないかと前のめりになってしまう魅力がある。
アンソールの絵にはグッとくるものがある。描かれた仮面には表情がある。その仮面こそ人間らしいのかもしれない。敵意と自己陶酔と自虐性が複雑に入れ替わる感情があらわされた作品のように感じる。
ゴヤの絵は、見て感じた思いを上手く言葉にできない。実物を見たら離れられなくなるかもしれない。
この本を読んでいくうちに、絵画の楽しみ方の、自分なりのコツが分かってきた。時折、画家の意図に射抜かれるような感覚にハッとする。
知らなかった歴史の裏側を身近に感じさせてくれるような知識が随所に埋め込まれている。人間の一生は思ったより劇的かもしれない。
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相変わらずの面白さで2日足らずで読み終わりました。
一番印象に残ったのは、ヨルダーンスの『豆の王様』。現代を生きる私たちはハレとケの境目が曖昧になっている、という著者の見解を読んでからこの絵を見ると、確かにここまで我を忘れて酒を飲むこともないな、と感じます。
表紙を飾るレーピンの『皇女ソフィア』もインパクトが大きい。まさかここまで壮絶な兄弟喧嘩が過去にあったなんて、と驚きました。
解説で村上さんも書かれてましたが、本当に一作品一作品、映画を見ているような気持ちになります。絵が書かれた背景を知れば知るほど怖くなる。このシリーズ、もっと読みたいです。
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表紙絵のレーピン作「皇女ソフィア」がとても印象的。
その他、ボッティチェリ作「ヴィーナスの誕生」など3篇目にも関わらずまだまだ読み応えある文章を読んでいると続編も期待したいところである。著者の絵画に対する見識の深さと一般人としての見方の両刃を備え持っているところにただただ脱帽。
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作品1 レービン『皇女ソフィア』
作品2 ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』
作品3 カバネル『ヴィーナスの誕生』
作品4 ベラスケス『フェリペ・プロスぺロ王子』
作品5 ヨルダーンス『豆の王様』
作品6 レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子』
作品7 ミケランジェロ『聖家族』
作品8 セガンティーニ『悪しき母たち』
作品9 伝レーニ『ベアトリーチェ・チェンチ』
作品10ルーベンス『メドゥーサの首』
作品11アンソール『仮面に囲まれた自画像』
作品12フュースリ『夢魔』
作品13ドラクロワ『怒れるメディア』
作品14伝ブリューゲル『イカロスの墜落』
作品15レッドグレイヴ『かわいそうな先生』
作品16フーケ『ムーランの聖母子』
作品17ベックリン『ケンタウロスの闘い』
作品18アミゴーニ『ファリネッリと友人たち』
作品19ホガース『ジン横丁』
作品20ゲインズバラ『アンドリューズ夫妻』
作品21ゴヤ『マドリッド、1808年5月3日』
作品22シーレ『死と乙女』
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戦争、争いを人間はいつになってもやめられない。
それは、今も昔も変わらない。
ただ、当時の人間はそれを口にしてはいけなかった。
画家だけが(ギリギリ危ないところで)表現できた。
画家だけが、当時の風景を残すことができた。
証人のようなものだ。
美しく、若い少女が処刑されるところをみたいと願う人々のために少女が犠牲になったこと…
戦争で追い詰められ銃で撃たれた人々…
美しい声のためにカストラート(去勢)された男性歌手…
貴族たちのドロドロとした権力争いに巻き込まれ殺害された兵士たち…
飲み物が高騰しミルクよりも安いからと子供にジンを飲ませ
自らもジンに酔いつぶれ狂態をさらす貧民街の大人たち…
この作品では著者の解釈ありきの作品だけどそれでいい。
絵画の見方は人それぞれで答えなどない。
答えはたぶん、今はなき画家たちに聞くしかないだろう。
でも、そんなことは不可能…だから、読み手は考えなければならない。
画家が世界に怒り、苦しみ、不条理を感じた
その思いをキャンバスに思う様ぶつけたその絵画を見て
画家が後世に遺そうとしたその感情を
読み手は解釈しなければいけない。
人の争い、醜さ、残酷さ全てを受け入れるために思考を止めてはいけないのだ。
たぶん、それが過去を偲び、未来を変える
一つの方法でもあると私は思う。
なかなか今回の怖い絵は重かった。
表題作である「死と乙女」という作品も
争いとは関係はないがなかなか怖い…というよりも「かわいそう」な作品。
著者の読み解く絵の解釈は鋭いものがあるので
読んでいて勉強になるし
自分も独自の解釈を考えたくなる。
良い意味でも悪い意味でも好奇心を刺激される作品。
時代を通した色んな怖さを知ることができた一冊。
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シリーズ3作目。
2作目を読み終えた時に今までどちらかと言うと興味がなかった絵画に対し、少し自分の中で気持ちの変化を感じ始めたと記しました。
まだ美術館に足は運べてないですが、アート作品に触れてみたくて、予定を入れました。
これって私の中では大きな変化で、間違いなく本シリーズの影響を少なからず受けた結果だと思います。
会期末が近づいてきたバンクシー展にもこれを機に行ってみよう!
説明
内容紹介
ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」、シーレ「死と乙女」、ベラスケス「フェリペ・プロスペロ王子」、ミケランジェロ「聖家族」――名画に秘められた恐怖を読み解く「怖い絵」シリーズ、待望の文庫化第2弾!
内容(「BOOK」データベースより)
全身にみなぎる憤怒と威厳、「皇女ソフィア」―凄絶な姉弟喧嘩の末に、権力を握ったのは?甘やかな香りが漂う、ボッティチェリの最高傑作、「ヴィーナスの誕生」―美の背後に秘められた、血なまぐさい出生の物語とは?自らを死神になぞらえた、「死と乙女」―実際に画家とモデルを襲ったその後の運命は?名画に秘められた人間心理の深層を鋭く読み解く22の物語。文庫書き下ろしも収録したシリーズ第2弾。
著者について
作家・ドイツ文学者。早稲田大学講師。著書に「危険な世界史」シリーズ、『歴史が語る 恋の嵐』『危険な世界史 運命の女篇』『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』『「怖い絵」で人間を読む』などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中野/京子
作家・ドイツ文学者。早稲田大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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怖い絵シリーズも3冊目。紹介された作品も多くなったせいか、絵の中に潜む怖さというよりは、絵の描かれた時代や背景を絡めることでその時代が今の価値観から見ると怖いというのを示すようなのが増えてます。とはいえ、中野さんの視点は気づいてなかったものも多いので、勉強になりますです。
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何といっても表紙のソフィアが強烈な印象を与える1冊、他の怖い絵シリーズよりも目に入る率は高いのではないかと勝手に思っている。
絵画というのは、怖い絵でなくとも、何かしらのメッセージ性を持っている。今ほど情報がない時代の情報源。絵が生まれた歴史的背景、画家の生活…その中に怖い要素があった場合、怖い絵となるのだろうか。そういった意味ではどれも怖い絵と言えそうだなと思う。
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バックグラウンドを知ることで、絵の見方が変わる。怖い、というか、薄ら寒い感じがする。
イギリスの「ガヴァネス」という立場の人について、初めて知ることができた。『シャーロック・ホームズ』シリーズは読んでたのに、ワトソンの妻メアリがガヴァネスだったことは記憶に無かった。
イタリアの「カストラート」が非人道的で寒気がする。日本では宦官制度すら採用しなかったのに、美声を聞きたいという理由だけで去勢するなんて残酷すぎる。しかも教会が始めたなんて。
勉強になったので、シリーズのほかの本も読みたい。できれば Unlimited になってほしい。
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表紙になっている絵(レーピンの『皇女ソフィア』)、ただでさえ迫力があって怖いと思ったのに、解説を読んだ後に観たらもっと怖くなりました(窓の外ー!)。
このシリーズで紹介されている絵画は、文章を読む前と後で、怖さの度合いや質が違ってくる。そこが面白いです。
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2021.4.17
今作もめちゃくちゃ面白かったー!
お気に入りは皇女ソフィア、ジン横丁、かわいそうな先生。
絵だけでなく、描かれた時代の背景や歴史を、一般人にも分かりやすく、だけど少し皮肉を込めた口調で説明してくれるのが読んでいて楽しい。
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絵画の背景に蠢く歴史の闇を深さを覗き見るような、中野京子女史の<怖い絵>シリ-ズの一冊。 ひと目見ただけで身震いするルーベンスの『メドゥ-サの首』、ホガ-スの『ジン横町』、レーピンの『皇女ソフィア』。 長閑な田園風景、厳かなたたずまいの中の人物描写など、一見どこが怖いのか判らない絵画、その秘められた怖さを教えられるゲインズバラの『アンドリュ-ズ夫妻』、レッドグレイヴの『かわいそうな先生』、ブリュ-ゲルの『イカロスの墜落』など、いつもながら興味の泉の波紋が津々と湧き立つ。