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世界の歴史を特定の国に注視するのではなく、世界を有機的に結びつけられたシステムとして考える本書。
ある地域で発生した事象をきっかけにそれが他の地域に影響を及ぼしていく様を追いかける。
まず、はじめの問いかけがなぜこの世界には現在に至るまで地域間の格差が生じているのか?という点から始まり、世界の中心がヨーロッパになったのはなぜなのかを深掘りしていく。
以下、個人的あらまし。
①15世紀くらいまではどこも似たり寄ったりの封建的国家であり、小領主が農民を武力で支配していた。
②技術の発展(火薬や武器)に伴い、農民の不満を小領主では抑えられなくなり、「国家」に頼るようになる。こうして国家が成立し始める。
③度重なる戦争や黒死病により人口激減したヨーロッパでは従来の封建国家では成り立たなくなってくる。よって新たな収入源を求めて海外へ飛び出す
ちなみにこのときの中国は欧州と同等か進んでいたが、単一国家であったために、他国との競争にさらされず、武力の増強、外への進出が遅れた。
④まずいち早く動いたのはイスラムから領土を回復し、海に面していたスペイン・ポルトガルであった。これらの国々はラテンアメリカを蹂躙し、アジアに進出した。
また、進出先で生産品を作るためにアフリカから奴隷を「輸入」した。
⑤南欧国家に続いて、イギリス、フランス、オランダも海外貿易に参入したが、やがて世界で新たに開拓できる地域が無くなり、発展が進みにくくなる。
⑥その中で頭角を表してきたのが、漁業と林業といった「生産力」に秀でたオランダであった。オランダはその優れた生産競争力を発揮し、覇権を握るようになる
⑦しかし覇権国家では賃金上昇により競争力は低下する。その隙を突いたのがイギリスであり、海外貿易により収益を伸ばしていく。
特に紅茶と砂糖の生産は著しく、これらの輸入を機にコーヒーハウスが作られ、情報集積の中心となっていく。
⑧やがてイギリスの競争力が上がり都市化が進むに連れて、「産業革命」が、起こりイギリスの地位が安定的に覇権国家となる。
⑨しかし貿易の保護主義的側面に
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[関連リンク]
『世界システム論講義』はスゴ本: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2016/02/post-33d3.html
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世界システム論講義
世界システム論について初めて読んだ本。
シヴィライゼーション界隈の人とかがたまにウォーラーステインとかの名前を出すので気になっていた。
放送大学のテキストだったらしい。
世界システム論は、世界史を個別の国単位の総合として捉えるのではなく、世界全体を1つのシステムとして捉える見方を言う。
16世紀に西欧で成立したため、「西欧システム論」と言い換えてもいいかもしれない。
世界システム論によれば、南北格差の問題は、中心国である帝国に1次産業供給地として周辺化されてしまい、その構造が固定化されてしまうことにある。(その国やその民族の特性に起因するのではない。)
面白かったポイント
・イギリスの産業革命は世界システムのうえにこそ成立したのであり、独立自尊なヨーマンの勤勉によって生じたわけではない
・ピルグリムファーザーズという神話。米国も豪州と同じく英国からの流刑民がほとんどだった。これが明らかになったのは歴史学にコンピュータによる統計が導入されてからだった。
・作る作物がサトウキビかタバコかで独立した後の発展に差が出る。サトウキビの農園主は本国にいるだけで、植民地へのインフラ投資はしない。タバコの場合、作物の性質上、現地で生活することが多いため、自分たちにインフラ投資をする。カリブにサトウキビプランテーションを展開したイングランドは発展し、東部アメリカにタバコを展開したスコットランドは低開発化された。
特にサトウキビの項目は薩摩と琉球、琉球と先島の関係に当てはめながら読んだ。
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最初はだるいが、半分過ぎて面白くなってきた。
産業革命は奴隷貿易の産物、
アメリカを作ったのは故国で食いつめた貧民と流刑者、
フランス革命は… と、
世界システムの目で見ると革命の神話は崩れ去る。
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川北稔(1940年~)氏は、イギリス近世・近代史を専門とする歴史学者。大阪大学名誉教授。
本書は、2001年に放送大学のテキストとして出版された『改訂版 ヨーロッパと近代世界』を改題・改訂し、2016年に出版されたもの。
「世界システム論」とは、米国の社会・歴史学者であるイマニュエル・ウォーラーステイン(1930~2019年)が、1970年代に提唱した巨視的歴史理論である。それは、各国を独立した単位として扱うのではなく、より広範な「世界」という視座から近代世界の歴史を考察するアプローチであり、複数の文化体(帝国、都市国家、民族など)を含む広大な領域に展開する分業体制により、「周辺」の経済的余剰を「中核」に移送するシステムを「世界システム」と呼んだ。その理論は、細部についての批判・反論はあるものの、世界を一体として把握する視座を打ち出した意義やその重要性については、現在も広く受け入れられている。
本書では、概ね以下のようなことが述べられている。
◆近代以前(12~13世紀)の地球には、4つほどの相互に独立した経済圏(=世界)が存在した(ビザンティン帝国~イタリア諸都市~北アフリカの地中海周辺、インド洋~ペルシャ湾岸、中国を中心とする東アジア、モンゴル~ロシアにかけての中央アジア)が、その一方で、のちに近代世界システムの「中核」となる北西ヨーロッパ(イギリス、ベネルクス、北フランス)はいずれの世界にも属しておらず、「周辺」の地位にあった。
◆14~15世紀、封建制の危機(その原因は様々な見解がある)に見舞われた北西ヨーロッパで、危機を脱する唯一の方法として、パイを大きくするために「大航海時代」が始まり、ヨーロッパが主導する近代世界システムの確立への動きが本格化した。当時の技術水準・生産力はアジアの方がヨーロッパより高かったとも言われるが、アジアは一つの経済圏として完結できるシステム(帝国)であったのに対し、ヨーロッパは小国家の寄せ集めで、政治的統合を欠いたシステムであったことから、各国が競って対外進出を図った。
◆「大航海時代」以降、キリスト教徒と香料を求めたポルトガルのアジア進出、スペインのアメリカ進出と世界帝国の形成、オランダによるヘゲモニー(覇権)国家の確立、イギリスのカリブ海・北アメリカにおける植民地の形成、アジアやアメリカからの商品(砂糖など)の流入によるヨーロッパの生活革命、黒人奴隷貿易の展開、イギリスの貧民の移民による北アメリカ植民地の形成、産業革命とフランス革命、ポテト飢饉によるアメリカへの移民の大流入、パクス・ブリタニカ、アメリカとドイツのヘゲモニー争いを背景とした世界大戦などを経て、ヨーロッパ・アメリカは他地域をそのシステムに組み込んでいった。
◆「近代世界システム」には、資本主義の根本原理ともいえる、飽くなき成長・拡大を追求する動機が内蔵されているが、そのシステムが地球のほぼ全域を覆い、新たな「周辺」が存在しなくなった今(帝国主義によるアフリカ分割や、ヘゲモニー争いとしての世界大戦などは、既にその始まりであったが)、過去500年の過程を踏まえて、これからの世界を考える必要がある。
本書が���かれてから更に20年が経過しているが、近年は「持続可能な開発」が国際的なキーワードとして定着しつつあり、明るい材料と言える。ただ、私は、(経済的な側面から見る限り)究極的には資本主義的な発想から脱却することができるかが、長期的にこの問題を解決する唯一のカギではないかと思うのだ。
著者が言う通り、過去を知ることは基本である。そして、残された時間が少ない今、我々に求められているのは、これからの世界をどのように方向付けていくのかを真剣に考えることである。
(2020年9月了)
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「世界システム論」はイマニュエル・ウォーラステインが提唱した概念で、国家ではなく交易・経済を有機的なシステムとして捉える。国家を超えるという意味での「世界」であり、全世界を意味するわけではない。
https://sessendo.blogspot.com/2021/02/blog-post_4.html
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以前に同著者の学生向けのやはり名著『砂糖の世界史』を読んでいますので内容的には自分にとって新しくはありませんが、アメリカ史を学びつつ改めて読むと色々と繋がり腹落ちします。
アメリカの独立から南北戦争期の歴史って、まさにヨーロッパ(スペイン、イギリス、フランス)の「世界システム」の「中に組み込まれた」人たちとそれに対する「抵抗派」の確執であり、さらにヨーロッパの国同士の覇権争いがそこに絡んで来て、またそれを利用する力学あり、牽制する力学あり、の歴史なんですよね…
「アメリカ史を知ると世界システムの歴史が見える」と感じる次第です。
あ、話が若干逸れましたが、間違いなく一読の価値ある名著ですね。
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世界の仕組みというか、現代社会を外観するために参考になる本。時々こういった本を読むと、ああ、そうだったという確認と、そいういう見方もあるのかという新たな視点を得られるのでとても良い。今回は近代ヨーロッパを中心に、経済システムの切り口で歴史を外観するもの。これまでの教科書や歴史解説書では、「国や王朝」単位で物事を捉えていることが多いが、この本は国境や〇〇家ではなく、モノ(農作物、工業製品、奴隷も)の流れで歴史を解説し、評価もしてくれている。この見方に立つと、大航海時代の世界の中心はインドや中国など東・東南アジア地域であり、この地域は域外との取引をしなくても十分豊かだった。従って、ヨーロッパ征服などということは起こらなかった。一方、次第に力をつけ始めた欧州では、ヘゲモニー国家が誕生し、農業、工業、金融の順で世界を支配しようとした。この動きが進展すると、周辺地域は搾取の対象となるので産業や民主主義などが育成されず、いまだに低発展国となっている、などなど。新しい見方をくれる一冊
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世界史の知識があまりないので、読みにくいところが多々ありましたが、高校地理の学習にも少し繋がるところがあって面白かったです。
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現在の世界がどのようにして一つの価値観に支配されてきたか、500年ほどの近代史をもとに解説されていた。
歴史をあまり勉強してこなかった自分にはわからない部分もあったけれど、ざっと500年間をまとめてくれていたので大きな流れを掴むことができた。
イギリスの甘い紅茶文化がなぜ形成されたのか?
インド経由のお茶と、三角貿易で得た砂糖が中核となるイギリスに集まったからということを知って、どんな文化にも歴史があるのだと感心した。
もちろん細かい部分でそれぞれの国の文化があるものの、ヨーロッパ的思想で統一化されている世界観と考えるのも面白かった。
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近代世界史がなぜヨーロッパを中心に展開していくことになったのか、それは世界は個別の主体(国家)による自由競争なのではなく総体として捉えるべきシステムであるから、という世界システム論で捉える本。元々は口頭の講義なのかとても読みやすいです。この書籍以降のアフリカ・中東の紛争と難民、欧米のナショナリズムの状況だったり、中国の台頭、あるいは気候変動問題なども地球規模の相互作用の中で捉えるという意味では今では当たり前の話ではありますね。それでもヘゲモニー国家の変遷と各国の文化の成立要因が連動しているところなんかはなるほど、と面白かった
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感想
西洋の世界観の下に地球が一つのシステムにまとめ上げられる。ITCによって加速しているが、ローカルな動きも見られる現代。統一には限界があるか。
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ちくま学芸文庫
川北稔 世界システム論講義
世界システム論の本
南北問題やヘゲモニー国家の変遷については 資本主義論と重複しているため、世界システム論の必要性が理解できなかったが
奴隷貿易や奴隷制プランテーションにより イギリス産業革命が起きたとする ウィリアムズテーゼの論証は わかりやすかった
「だれがアメリカをつくったのか」の論考に驚いた〜植民地時代にアメリカに渡ったイギリス人は、年季奉公人(期限付き白人債務奴隷)、死刑を逃れた犯罪者、失業者とのこと
「世界システム論〜近代世界を一つの巨大な生き物のように考え、近代の世界史を有機体の展開過程として捉える見方」
南北問題
*世界的な分業体制の中で、北の国が工業化して開発され、南の国が原料生産地として開発された
*中核〜世界的な分業体制から多くの余剰を吸収できる地域。西ヨーロッパ
*周辺〜食糧や原材料の生産に特化され、中核に従属させられる地域。東ヨーロッパ、ラテンアメリカ
ヘゲモニー国家の変遷が世界大戦へ
*近代世界システムが地球全域を覆い、新たな周辺を開拓する余地がなくなった
*アフリカ分割を契機に、世界が帝国主義とよばれる領土争奪戦に突入
*帝国主義とは、地球上の残された周辺化可能な地域をめぐる、中核諸国の争奪戦
世界システムは、その地域間分業の作用を通じて、西ヨーロッパ=中核では国家機構を強化しつつ、周辺国では国家を溶解させる効果をもった
ヨーロッパのシステムと中華システムの違い
*ヨーロッパのシステムは政治的統合性を欠いた経済システム〜国民国家の寄せ集めにすぎない
*ヨーロッパのシステムでは、各国は競って武器や経済の開発を進めた
*中華システムの中核は、一帯をひとまとめにして支配すふ帝国となっていた
ヘゲモニー国家
*中核地域のなかでも、圧倒的に強力の国
*17世紀のオランダ、19世紀のイギリス、第二次大戦後のアメリカ
*世界システムのヘゲモニーは、生産、商業、金融に及び、崩壊するのときも この順に崩壊する
*ヘゲモニーは長く続かない〜生活水準が上昇し、賃金が上がり、生産面での競争力が低下するため
*ヘゲモニー国家は、自由貿易を主張する
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ウォーラステインが提唱した「世界システム論」という史観概念について解説されている。
世界システム論とは、歴史を国単位で捉えて、諸国が互いに不干渉な状況であるセパレートコース上での競争をおこなっているとする「単線的発展段階論」へのアンチテーゼとして生まれた。
つまり、勤勉国家が「先進国」、怠け者国家が「後進国」になっているとするのではなく、「中核国」が「周辺国」から収奪したために、「先進国」と「後進国」が生まれたというように、国単位ではなく、世界を一つの単位/構造体として捉え、構造体内の相互作用において全体の状況が作り出されているという考え方である。
近代初期においては、世界における西ヨーロッパの影響力は小さく、経済・文化・技術などあらゆる点において、アジア(特に中国)の方が進んでいた。
次第に、(火器などの暴力技術も含まれる)技術がアジアから到来し、一揆などに対応しかねた領主層が「国家」の存在を求めるようになり、封建制度から国家国民制度へと移行していった。
ここに、世界システムの萌芽が見られ、その後、西ヨーロッパ諸国は、大航海時代→植民地支配→工業化といった流れで世界システムを地球規模に拡大させ、常に新しい「周辺」を探し求める。
・世界システムは「中核」と「周辺」が存在し、周辺から搾取した富によって中核が充足されるという構造がベースとなっていること
・現代社会において、世界システムから逃れた地域は存在せず、新しい「周辺」の拡大が見込まれないこと
・搾取するシステムである「工業」の姿変化してきていること(IT/金融に重点が移動)
などを踏まえると、近代の世界システムから現代の世界システムへの更新を考えてみても良いではないだろうか。
<メモ>
・国家国民モデルが希求された背景として、ウォーラステインは「農奴統治のため」ゲルナーは「高文化教育普及のため」とそれぞれ違う観点で見ている
・ヘゲモニー国家の支配力の拡大/衰退の順序は、いずれも生産→商業→金融の順となる
・ヘゲモニー国家衰退の理由としては、生活水準の向上→生産における優位性低下となり、上記の衰退スパイラルに陥るため
・世界システムにおいて、「世界帝国」は存在せず「世界経済」のみ存在する。帝国モデルは支配体制としての効率が悪い
・ヘゲモニー国家において一番有利なのが「自由主義」。そのため、ヘゲモニー国家の首都は最もリベラルで芸術や亡命インテリの溜まり場となる
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図書館で借りた。
世界システム論の講義録。元は放送大学の教科書だとかで、それを再編・文庫化されたものだ。
世界システム論と聞くと、アメリカのウォラーステイン(Wallerstein)が提唱したのが有名だが、この本はそこには深く言及しておらず、また理論的に"システム"として捉えたりといった話は乏しい印象を受けた。広い意味での世界史講義といった印象。
システム論としては物足りないと感じたが、まぁそもそも「世界システム論」自体新しい理論でもないので、一つの世界史講義として楽しんだ。