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とても美しい小説だった。
ヘンリー卿の説く快楽への考えが、なんとも狡猾で、思わず納得してしまう。少し言葉は違うが、道徳観に惑わされて若さを無駄遣いしてはいけないと。若い時にしか快楽におぼれることはできないし、自堕落になることはできない。それこそ若者の特権なのかもしれない。
しかし、全ての行為は自分の身に跳ね返ってくる。「30過ぎたら自分の顔に責任を持て」とよく言われる。悪い行為をすれば悪い顔に、自堕落な生活をすればだらしない顔に、幸せであれば幸せな顔になっていくというのだ。
ドリアンは、悪徳を重ねるが、それは彼の顔に表れない。全ては肖像画が受け止めてくれる。そのためか、ドリアンは自分の行為の恐ろしさを直視することなくさらに悪徳を重ねていく。もし、倫理的悪といわれることが、自分の身になんらかの形で跳ね返ってこないのであれば、人間は悪を行ってしまうのだろうか?つまり、人間は、利己的な理由のみで悪行をくいとめているのだろうか?それが人間の本性なのだろうか?
読みながら、谷崎の作品を思い出したけれど、後で調べると、やはり、オスカーワイルドは、谷崎潤一郎や芥川龍之介なんかに多大なる影響を及ぼしている。そして、想像通り、ゲイだったよ。(男性から男性に対する思いの描写が美しすぎるので)
ところで・・・余談だけれど、「快楽主義」を実践して・・・と本のカバーにも書かれている。でも、この本で使われている「快楽主義」とは、いわゆる快楽主義(エピクロス) とは異なる。エピクロスの説く快楽とは、短絡的な肉体的快楽のことではない。精神的に幸福な状態に導くような行為をすべきであるということで、それは、肉体的な快楽をむさぼることではない。健全な生活と正しい行いが快楽をもたらすということだったはず。詳しく知っているわけではないので、えらそうなことは言えないけれど、快楽主義という言葉があまりにも間違って使われているので、気になる・・・。ウェブでも、快楽主義と検索すると、セックス、酒、薬やり放題みたいな使われ方ばっかりだなぁ・・・。
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会話文が非常に魅力的。特に、ヘンリー卿の哲学じみた台詞は読んでいて興味深いものがあった。オスカー・ワイルドの思想が全て詰め込まれているかのようだった。
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――じゃあきっと幻想だ。人が完全に確信していることというのは決して真実ではない。これが『信仰』の致命的な欠陥であり、『ロマンス』の教訓なのだ。
柳広司「ロマンス」で清彬が万里子に言ったセリフは、この中のヘンリー卿のセリフの引用だったんだな。
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前情報で、同性愛、しかも男同士のという要素があるぞ。と分かっていたので、ちょっと大丈夫かなと、おそるおそる思って読み始めましたが、大丈夫でした。
女の子同士の依存のような友情っぽいなあと。
ヘンリー卿が反発するように言う思想がとても印象に残っています。
よくもまあそれだけの事を・・・と、思うほどに、揶揄が恐ろしく秀逸で、特に、女性を定義してみてください。という言葉に対し、秘密なきスィンクスと答えた時、少し固まって考えてしまいました。すごい。
こういう不思議な事がぽんっ、と放り投げられたような本好きです。
若さ、若さこそが全て!若さを見くびるな馬鹿もの!というような本。
これを読んでいると、将来への不安がある。社会的な不安もあるなかで、肉体的不安も持って今を生きろ。という、ちょっと残酷ではあるけれど、若さとはお金ですら買えないかけがえのない財産なのだと訴えかけられたように思えます。
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罪に対する罰とは、正義の勝利や罪の歯止めという意味だけでなく、罪人に対する救済という意味も持つ。
ヘンリー卿の比喩や警句が空虚な言葉遊びにしか思えなかったのは私が未熟なんだろうか。
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意外とホラー/サスペンスなんだね。オチもちゃんとある。
新訳で読みやすかったけど、ウィットききすぎてわけわかんないところも多々。
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久しぶりの文学作品。
翻訳物は苦手だけど、これは読みやすかった!
性格というか自分の行いは顔にあらわれる…
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衝撃を受けた。これは、という一冊に仲間入り。
罪悪感よりも欲望の追求よりも利己性が勝ってしまうドリアンの心理の巧みな描写に拍手せずにいられない。後悔も自己合理化も感情の昂ぶりもこの上ない説得力で、筋も飽きさせない。
なんという、なんという。
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ドリアン・グレイという青年と、彼を描いた肖像画が招く破滅への道。というこの物語の本筋にはもちろん惹かれるのですが、それ以上に登場人物からオスカー・ワイルド本人が透けて見えてくるような気がして、そこに面白さを感じました。ドリアン、バジル、ヘンリーの3人の言葉には創作されたキャラクターが口にするものとは思えない、書き手本人から発せられた吐露のようなものを感じました。特に、ヘンリー・ウォットンにはかなり自分自身を投影し、普段思っていた事を存分に吐き出させているように思えます。
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何も知らないということは、
人間が失ってしまった
全てのものを持っている
ということだ。
これには本当に納得した。
何も知らない、無垢な状態とは
知恵の実を食べてしまう前の
楽園のイブだ。
ヘビであるヘンリー卿がそそのかし、
ドリアンは罪を知ってしまった。
この時点でドリアンは
神から見放され、
人生を追放されたのだと思う。
また、バジルの描いた絵も、
美しくありながら、
怪しいヘビであったのではないかと
感じた。
ドリアンの美しさを崇拝しながら
一方では、彼の美しさを
自覚させてしまうエゴに悩む。
だからバジルはあんなに苦しみ
絵に罪を感じていたのではないか。
けれど罪というものは美しく
魅力的だ。
絵が老いていき、
代わりにドリアン自体が美しき
罪になった。
秘密、支配、誘惑、抵抗
このワードに印をつけた。
結末で、全ての罪が戻り
死んだことで、
ドリアンはどんな感覚を得たのか。
それにより魂は浄化されたのか?
また、この時代は、同性愛について
描くのが難しかったということで
もしオスカーが現代に生きていたら
描写はまた変わるのか気になった。
美しきドリアンを崇拝する
Mなバジル。
美しきドリアンを
支配することで快楽を覚える
Sなヘンリー。
人は、持っているものが
貴重であるほど、
エゴイストになる。
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想像以上におもしろく、引き込まれながら、気になるフレーズのあちこちに線を引きながら読んだ。あらすじは随分昔から知ってはいたけれども、そうした筋よりも、ヘンリー卿の皮肉で逆説に満ちた、でも知性的で魅力ある警句の数々、並べ立てられる芸術的な美への賛辞などなど、言葉をたどることが興味深く、おもしろかった。悲劇的なドリアンの最期は、それでも救いがあったのか。ヘンリー卿にいわせると、はじめから救われるべきものなんてないのかもしれないけど。
線を引いたフレーズのひとつ。もちろんヘンリー卿の言葉。
「ものごとを外見で判断しないのは底の浅い人間だけだよ。世界の本当の神秘は目に見えないものではない。目に見えるものなのだ。」(pg.49)
実は近々、マシュー・ボーン演出のバレエ「ドリアン・グレイの肖像」を見に行くので予習のために読んだんだけど、もっと早くに、もっと若い時に読んでおくべきだったかも。とはいえ、今からでも読んで良かった。バレエも楽しみ!
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読んでいる最中は合わないかな、、、と思いつつ、読了後は不思議な余韻を感じる。
ワイルドの半生を念頭に読む必要は全くないのだろうが、どうしても頭をよぎってしまう小説。
冒頭からどこかボタンを掛け違えたまま意図してその違和感を享受させているのか、とにかく歪みを徹底して読者に撒き散らしてくる感じ。
色んな芸術家が舞台化だ、映像化だと小説の枠を超えて取り上げようとする気持ちが何となく分かるかな。
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限りなく人を惹きつける美しさを持つドリアン・グレイが、やがては自身の芸術的感覚や虚栄心ゆえに精神が蝕まれ堕落の末に悲劇の結末を迎える物語。はっきり言って今の自分には縁の遠いおとぎ話でしかないのだが、ドリアンみたいな人間は子役がチヤホヤされた過去が忘れられず大成しない、みたいなキャラクターにし見えない。戯曲的で独特なセリフ回しにはゾクゾクっとする部分はあるけど、個人的には上澄みだけの雰囲気小説みたいなもので根源的に訴えてくるのは最後のドリアンの死の前の述懐くらいかな。
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穢れを知らぬ、青年の悲劇。
彼は「鵜呑みにする」ゆえに、
悲劇を自ら生み出してしまいます。
もしも、彼に多少の分別があれば
恐らく、若さがすべてであったり、
衰えがマイナス一方ではないことが
わかったことでしょう。
だけれども、目の前にいる完膚なき【悪魔】の
前では彼は抗うことができませんでした。
悪であればあるほど、それは離れがたいものだから。
だけれども、自分を見なかった彼は、
最後の最後で付けを払わされます。
あのような形で…
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大学で絵画を専攻しているのですが、人物画のモデルには、知り合いか他人かに関わらず、特別な感情が湧きます。
私はモデル本人に打ち明けたことはありませんが、ドリアン・グレイの画家がドリアンに打ち明けたのはすごい事だなと思い、それが印象深かったです。
制作中は実際会ってる時と違う気持ちにもなり、長く描いてると、絵の中のモデルとの付き合いが長くなり、妙な親密さを持ち、「私の知っている絵の中のモデルとは」を考えることがあります。
それは自分の見たかったモデルの姿とか、理想像であったり、一瞬の人間らしさを感じるたたずまいなどです。
だから自分が描いた絵画の中のドリアンが変貌していくなんて知ったら、とても悲しむことだなと感じます。
結構人物画は、モデルの一瞬の美しさを絵の中に閉じ込めたいから描くイメージだったのが、これを読んで少し変化したように思います。ドリアン・グレイの肖像を読んだら人物画を描きたくなりました。