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日露戦争の英雄、乃木希典について、司馬遼太郎が悩みながら書いてる本。
司馬による乃木評は、大方以下のようになるかと思う。
・西南戦争・日露戦争など、失敗した時に死にたがる癖がある。
・やたら死にたがるのは、陽明学的な性向があるから。
・戦術を学びにドイツに留学したはずが、精神美に目覚めちゃった。
・軍功・将才がないのに、明治帝・藩閥首脳に気に入られて出世。
・本人は能力がないという意識はなく、むしろ不遇だと思っていた。
・明治帝個人の郎党という意識が強固。帝もそれを愛した。
とまあ、この人の価値は「精神美」の一点に尽きるとでも言わんばかり。
疑問なのは、初の近代要塞戦に充てられちゃったゆえに過小評価されている軍略の才と、常に精神美に走りたがる性向の2つ。特に後者。
ポーズに走るのが興じた結果が殉死だとしたらどうだろう、と思ったりもする。
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乃木将軍に焦点をしぼった小説、というか随筆?
悲劇の人格者といった見方と、「坂の上の雲」で描かれていた無能っぷりとの差が気になって手にとったけど、読み通すほどの興味が持続できず、途中で放り出しました…
志村有弘「将軍・乃木希典」なんかとあわせて読むといいかも。
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乃木希典に関する司馬遼太郎の思考整理のメモのようなもの。
陽明学、明治帝、児玉源太郎、軍旗、静子、自己精神、旅順、息子…
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坂の上の雲を読み直したいと思ったが、ボリュームが多いので読んでみた本。坂の上の雲を思い出すような内容が前半にあり、後半は乃木将軍の心の屈折について書かれている。
内容の真偽は分からないが、劇的な生涯を送った人だと改めておもわされる。司馬遼太郎の解釈としては、やや乃木に否定的なスタンスをとっているため、いつもの爽快感が無い。
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本文より、筆者はこの書きものを、小説として書くのではなく小説以前の、いわば自分自身の思考をたしかめてみるといったふうの、そういうつもりで書く。とあり、司馬遼太郎節全開の小説。坂の上の雲読了後で理解が深まると思います。
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トルコに行ったときに「ノギショーグーン!」とおじいさんに言われた。
「日露戦争に戦争に勝ってくれてありがとう」と。
でも、今26歳の私はそのへんの日本史をもやもやとしか習っていない。
私の友達にも「乃木将軍わかる?」と聞いたところ、
かなり高学歴の子でも「・・・・いたかも」という感じ。
世界にインパクトを残したヒーロー、
日本の今の若者の歴史から消えた
乃木将軍の空虚さが小説にも滲み出ています。
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なぜ乃木大将が殉死したか、ということで買った初司馬作品。
何度も挫折したが、S先生が「軍人の学がなくなってきてから戦争に弱くなった」発言から再挑戦。自分の美学に酔った勘違い大将な感じ。
無能だけど明治天皇に愛されたのは本人にとっても僥倖では。
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チョットずるして先に読んだけれど、やはり坂の上の雲を読んだ上でこの本を読み、司馬先生の乃木将軍に対する諸々を読み解かないといけないですね。
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日露戦争の第三軍司令官:乃木希典の半生を描いた作品。乃木希典は「坂の上の雲」において無能指揮官として司馬氏にボロボロに描かれていたことを鮮明に覚えている。おりしも今月からNHKスペシャルドラマにて「坂の上の雲 第三部」が始まることもあり、乃木希典という人物についてもう少し知っておこうと手に取ってみた。
本作品においても中核は日露戦争の描写であり、「坂の上の雲」の焼き直しのような内容だった。まぁ一度しか読んでいないし、良い復習になった。しかし、これだけ無能呼ばわりしていた乃木希典を、単独で主人公化したのは何故だろうかと考えてしまう。思うに、司馬氏は乃木希典を指揮官としては無能と評価しつつも、劇的な思想家・精神家としての生きざまに惹かれたのではないだろうか。能力とは別次元の人間の面白さというか…。
実際、私も乃木の頑さに興味をひかれた。例えば制服着用の件。軍人はその制服の名誉を重んじ、常に制服を着用することによって挙措動作や礼節も軍紀から逸脱することがない、すべて制服着用が根源になる、として、軍服を日常着用し、帰宅しても寝るときも脱がないという徹底したもの。まずは形から入り、その美の信徒となって精神を宿すというものであろう。私には真似出来ないが、何か惹かれるものがある。
また、乃木希典が思想としていた陽明学について勉強になった。受験で日本史を勉強していた頃、その名前と数人の学者(中江藤樹、熊沢蕃山、山鹿素行)くらいしか知らなかったが、本作品では詳しく内容を説明してくれた。物事に客観的態度をとり、ときに主観を合わせつつ物事を合理的に格物致知してゆく朱子学に対し、陽明学は己が是と感じ、真実と信じたことこそ絶対真理であり、それをそのように己が知った以上、精神に火を点じなければならず、行動を起こさねばならず、行動を起こすことによって思想は完結する、というもの。赤穂浪士討ち入りも、大塩平八郎の乱も、吉田松陰渡航未遂も、この陽明学が背景になっているという論理は初耳だった。大塩平八郎の乱で言えば、飢民を見て憐れみの情を起こすまでが朱子学、陽明学の場合は直ちに行動し、それを救済するというもの。なるほど、江戸幕府から危険思想視される訳だ。乃木希典が明治帝崩御に殉じて命を断ったのも陽明学が背景にあるためか。勿論、著者なりの考え方ではあるだろうが、納得してしまった。
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昭和の井上大将が嫌いそうな軍人の典型。
ステッセルの降伏調印に際して、帯刀を許可し且つ海外記者団にその模様を撮らせなかった話は、武士道らしい美談である。
明治天皇に殉死した背景として、陽明学が影響しているのは初耳だった。
殉死による警世精神が、夏目漱石のこころでも明治精神の終了として描かれている。また逆に後の日本陸軍の象徴的存在とされたのが、大戦の悲劇を生み出したとも読み取れる。
司馬遼太郎さんの言う通り、色んな意味で「劇的」な人であると感じた
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司馬さんは乃木さんの事を冷めた視点で辛口で綴っていたけど、乃木希典という人はやはり凄い人物に思えた。
自決当日の写真は、衝撃的。
薄い本だけど、とっても中身の濃い一冊。
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乃木希典の一生を冷ややかな筆致で描く。日露戦争のくだりは『坂の上の雲』を読めばいいとして、後半部、明治帝の崩御に殉じ妻と自死する場面だけでもこの本は読む価値がある。
『坂の上の雲』では触れられていなかったが、乃木希典の陽明学への傾倒についての言及と考察が興味深い。陽明学派にあっては、【おのれが是と感じ信じたことこそ絶対真理であり、それをそのようにおのれが知った以上、精神に火を点じなければならず、行動をおこさねばならず、行動をおこすことによって思想は完結するのである。行動が思想の属性か思想が行動の属性かはべつとして行動をともなわぬ思想というものを極度に卑しめるものであった。】
物事に客観的態度をとり時に主観を合わせつつ物事を合理的に格物致知しようとせず、おのれが道が常に正しいとする考えは学問というより宗教ですらある、と司馬は断じる。
そーいや、自分の価値観や前提を疑わない人って、人の話を聞かないのに加えて、妙に行動的なところがあるよなぁ。思想と行動を一致させることが正しいと思ってるとこもあるなぁ、と思ったりしました。74点。
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高校生の頃、「坂の上の雲」を読んだ。秋山兄弟や啄木のことより、バルチック艦隊のことより、乃木将軍の無能ぶりが印象強かった。
最近では、それほど無能ではなかったとする研究もあるようだが、どうなんだろう。
読書している感じは普通の司馬遼太郎作品とさほど変わらないが、司馬さんは小説以前の覚え書として書いたとしている。主人公に感情移入したくないということだろうか。
旅順攻略については参謀、伊地知幸介も酷いのだが、やはり屍が累々と重なったのは乃木将軍の所為だろう。砲撃の当たりそうな処にフラフラ出ていこうとする自殺行為も度々。こんな困り者を死なせまいと何故か山県有朋や児玉源太郎は助けの手を差し出す。
日露戦争後は明治帝の心情的な従者であったという。ひたむきに誠実でることが、おかしみになり、天皇から愛されたという。そんな天皇と乃木将軍の関係は本書で初めて知った。
そして殉死について。司馬さんは淡々とその事実をルポしている。陽明学の影響なども取り上げているが、自身も共感してはいないのだろう。
何か奇妙さばかりが胸に残ったようだ。
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坂の上の雲でこれでもかと乃木将軍の無能ぶり書いた著者が、さらに書く。明治天皇との濃い関係や、形式にこだわる部分、殉死として海外でも報じられた事など、読んでいていやになる事ばかり、そしてこれが陽明学徒の生きざまと書かれてはなおさら読む気がしなくなる。乃木将軍の陽明学の理解は間違っていると思う。
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乃木希典。日露戦争で苦闘したこの第三軍司令官、陸軍大将は、輝ける英雄として称えられた。戦後は伯爵となり、学習院院長、軍事参議官、宮内省御用掛など数多くの栄誉を一身に受けた彼が明治帝の崩御に殉じて、その妻とともにみずからの命を断ったのはなぜか。〝軍神〟の内面に迫って、人間像を浮き彫りにした問題作。
”坂の上の雲“のサイドストーリーと言う印象で読み進めていった。坂の上の雲を読んでいる時は、第三軍に対して何をやっているんだと腹がたった。
この本を読んで、乃木希典という人は軍人としては能力は無かったかもしれないが、日本の武士道を体現したことで水師営での見事な会見を行い、日本国の評価を高めることができた。これは乃木希典だからこそ出来たことであろう。
明治天皇との信頼関係が強いことは知っていたが、昭和天皇と関わりが深かったことは新鮮な驚きだった。