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図書館本。毒親の父親には逆らえない・・・子どもの弱い立場からの独立の話。主人公は中高一貫校の生徒だから、ノンビリした夏休みを送れて本当に良かった。この先どう成長するのか心配。
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以前、ブク友の111108さんが読まれていたのを思い出し、久々の市川朔久子さんだったが、まさか、こんなにシリアスな内容だとは思わなかった。
夏休みにおける、自然がいっぱいのお寺生活と、山羊や新しい仲間達とのふれ合いにより、日々の生活って、こんなに楽しいものだったんだと、改めて実感する様子も清々しく、読み所なのだが、私は別の視点で書いてみようと思います。
それにしても、本書の主人公「夏芽」や「雷太」の父親は(山羊の匂いに不快感を顕わにしていた母親も)、極端過ぎる例として書いているのかもしれないが、実際に、こういう親いるんだろうな。
私の今の職場では、よく親子連れを見るが、時折、子供にとっての支えは、親しかいないんだと実感させられる出来事もあり・・・その一つが、なんでもない平らに見えそうな床で、躓いて転んだ子供に対して、横にいた母親のかけた言葉が、
「普通、こんなところで躓かないでしょ」だった。
その時に私は、「子供の普通とあなたの普通は違うと思いますよ」と、つい思ってしまうのだが、実際に子育てしている方も大変なんだろうなと思うとね。
ただ、その時の母親の言った言葉一つ、ただそれだけが、子供にとっての正解みたいになってしまうことが、私にはとても怖く感じてしまって、それが積み重なって成長した子供が、果たしてどんな思いを心の内に抱えることになるのか・・・児童書を大人が読むことの意義というのは、当然あると私は思うのだが、本書の場合、子供のこうした体験や思いから、結果、思いもよらない方向へ進んでしまう可能性もあることを知ってほしいから、是非、大人に読んで欲しい。
もちろん、夏芽くらいの高校生、そして中学生も、親に対する他人に言えないような悩み、苦しみ、モヤモヤ感があるのなら、一度読んでおくことをおすすめします。
なぜなら、児童書として発売されることのもう一つの意義は、若い内に知っておいた方が良いことがあることを教えてくれることだと思いますし、これって、学校で教えてくれるのかな?
少なくとも、私の頃は教えてくれなかったな。
『その我慢は、自分を生かす我慢か。それとも殺す我慢か?』
『家族が好きになれないって、けっこうツライのよね。──自分がすごくひどい人間みたいで』
『子どもはみーんな、のうのうと生きてればいい』
正直なところ、親と子の関係性について、一部、断定的な書き方が、気にならなくはなかったが、それでも読んでみて、こういう考え方もあるんだといった、今後の人生における、新たな視点のひとつにはなるのではないかと思っております。
それから、最後にもう一つ、大切なことを。
物語で、夏芽が落ちかけたような負の感情を人間は持っているということと、タケじいが厳しい声で言っていた『同じ場所に落ちるんじゃない』。
この二つは同義であって、私も痛いほど、そうしたい気持ちは本当に本当に分かるんだけど、それでもやっぱり、これはしちゃダメだよと。
おそらく、私が若い頃は、絶対に聞かなかったと思う���で、説得力は弱いんだけど・・・今の年になって、やっと分かってきました。
だから、これを若い内に、心の片隅に覚えておいてくれれば、きっと人生が、もっと楽しくなる気もするんだよね。
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図書館のYAコーナーに配架されているのは、わかっていたが、夏休み中は子どもたちが優先かなと思って今やっと手に取った児童書。
可愛いヤギの表紙におもわずにんまりしてしまうが、児童書とは思えないほどの熱量で、涙腺も緩んでしまった。
厳格な父といっしょにいるのが苦痛で、夏休みのあいだ田舎にある山寺のサマースティに参加した夏芽。
たまたま同じ日に母親に置き去りにされた雷太。
そして、近くに住む葉介が、学校で飼育しているヤギの後藤さんとビンゴとクララを草ひき用として連れてくる。
ここでの生活で明らかになる雷太のこと。
そして、優しい美鈴さんや穂村さん。
住職であるタケじいは、見た目も振る舞いも住職らしくなく説法を言うこともないのだが、陰でしっかりと子どもたちのことを見ている。
美鈴さんが、以前にそのタケじいに言われたことをそっと夏芽に言う。
「その我慢は、自分を生かす我慢か。それとも殺す我慢か?」
子どもが我慢をすることをみるのは辛い。
それがあたりまえになっているとわかってないのも酷である。
夏休みが終わってしまう。
帰らなけばならないときにタケじいが夏芽に言った言葉は忘れることができない最高のものだと感じた。
「親子は、縁だ。あんたとこの世を結んだ、ただのつながりだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「愛とか絆とか、そこに意味を持たせようとするから、なんだかおかしなことになる。そんなもの、運がよければあとから出てくるもんだ。ないものをあると仮定するからゆがむ。苦しむ。はじめからありはしないのに」
「愛情を育めた親子は幸いだ。ただ、それがうまくいかなかったとしても、それはあんたのせいじゃない」
「子は親の、そのまた親の、ねじれに振りまわされただけだ。因果だよ。当然の結果だ。あんたはなにも、悪くないよ」
何度も言うが、児童書とは思えないほどでぜひ大人にも読んでほしい。
自分が子どもだった頃を思い出したり、親になり子育てしてた頃を思い出す。
自分の父も厳しかったし、殴られもした。遊んでもらった記憶もなくとても怖い存在だった。
甘えることなどできなく、早く家を出たかった。
こんなふうに育った自分が親になり、まともに子どもは育ったと言えるのか?と考えてしまう。
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「大嫌いな父親のいる家から離れるため、中学3年生の夏芽は、遠い山寺のサマーステイに参加する。母親に置き去りにされた男の子と出会い、寺や地元の人たちの温かさに触れ、悩みと向き合う、夏芽のかけがえのない夏の物語。」
「「あなたは宝だ」と言ってくれる人がいること、「自分は宝だ」と思えること、それはとても大事で、よいものだよ。」
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家庭内で父親のモラハラに悩む中3の夏芽は、耐えられず、夏休みを利用して寺のサマーステイに行く。そこでの体験を通して、生きていくうえで大切なことを学ぶ。
読みながらメモを取らなかったので、色々と取りこぼしている気がしますが、メモを取ることで途中で意識を途切れさせたくないほどに、本の世界に引き込まれました。親子関係、摂食障害、親からの虐待、子供を亡くすこと…など、様々な深刻な問題が出てきますが、それぞれの事象のことだけを書いているのではなく、あらゆる問題の根底に必要な力、理解、想いなどを教えてくれています。大人が読んでも考えさせられたり救われたりしますし、子供も、早い段階で知っておくと助けになることを、ヤギと人との触れ合いの楽しい描写が大半の中、所々に、優しく教わることができます。
人に大切なことを教えることができる人。ここでは寺の和尚のタケじい。とても厳しいんだけれど、相手を想ってくれているが故の厳しさで、自分を大切にしなさい、一人一人が宝なのだよと教えてくれる。良くない所もしっかりといさめてくれる。未熟者であっても、相手や自分と真摯に向き合っている人であれば、チャンスを与え、その人の成長を見守りながら育ててくれる姿に心を打たれた。
その我慢は、自分を生かす我慢か。それとも殺す我慢か? ( 和尚のタケじいの言葉)
うたをうたうといいよ。
かなしいときはね、
すきなうたをうたうと、
じかんがたつよ。(5歳の子供の言葉)
別に何かを学ぼうと思わずとも純粋に物語を楽しめるし、しかも、押し付けがましくなく心に響く事が書かれている、この上ない良書でした。人も世の中も、転がり落ちるように歪んで崩れていっているここ最近。このような本が必要だと思います。
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「そうだな、あんた一人じゃ無理だろうよ。未熟者だからな。おおかた自分の人生に引きずられるし、縛りもするだろう。だが、他の人間も手伝えば、そうひどいことにはならんだろう。」
「親子は、縁だ。あんたとこの世を結んだ、ただのつながりだ。それ以上でもそれ以下でもない。愛とか絆とか、そこに意味を持たせようとするから、なんだかおかしなことになる。そんなもの、運がよければ後から出てくるもんだ。ないものあると仮定するから、ゆがむ。苦しむ。はじめからありはしないのに」
「愛情を育めた親子は幸いだ。ただ、それがうまくいかなかったとしても、それはあんたのせいじゃない」
「子は親の、そのまた親の、ねじるれに振り回されただけだ。因果だよ。当然の結果だ。あんたは何も、悪くないよ。あと、くれぐれも言っとくが、許してやれとか言う連中には関わるな。あれはただの無責任な外野に過ぎん」