ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学
2016/02/27 15:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Carmilla - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに「物理学」という言葉が入っているが、本書で扱うのは今はやりの「ビッグ・データ」「「クラウドサービス」に関するものである。これの分野を利用した行動科学を「ソーシャル物理学」という概念で解明しようというのが、本書の趣旨である。本書を見て痛感したのは、ネットだけでは影響力を駆使するのは限界がある、ということ。ネットで影響力を駆使するには、現実社会でそれなりに影響を駆使できなければ意味がないのだ。巻末資料に小難しい数学や物理の式が掲載されているが、これらの式が理解できなくても本文は理解できるのでご安心を。それよりもこの本は、社会学・心理学・経済学などの知識がないと、著者が言いたいことは理解できないことに留意すべし。
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タイトルからソーシャルグラフ方面を連想してましたが、本文では社会物理学という言葉で統一されていて、人間の動きをバッチ型のウェアラブルセンサーやスマートフォンで捕らえて分析してその相関関係を探り、未来に向けてどのように活用していくかといったことが書かれており、解説を書いている矢野和男氏の著書「データの見えざる手」と基本的には同じ路線です。こちらは都市や社会といったスケールの大きな点にその構想を広げているところがとても面白く、IOTやAIが都市や社会とどのように関わっていけば良いのかを考える良いヒントになりました。ちなみに、とても自然でこなれた翻訳がとても読みやすかったです。
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コンピュータやネットワークの発達による「つながりすぎた世界」において、「他人との交流」が組織や社会の発展をもたらすメカニズムを科学的に説明した「社会物理学」の解説書。
様々な技術やデバイスを用いて個人の行動データを幅広く収集・分析した結果、個人が集団の外で新たなアイディアを得る「探究」と、集団内でそのアイディアを浸透させる「エンゲージメント」を通じて「集団的知性」が発達し、生産性等の向上に繋がることが説明でき、この考え方を応用すれば、企業や都市といった単位でイノベーションが可能となるが、そのためには著者が「データのニューディール」と呼ぶ、個人のプライバシーや所有権を確保しながら個人情報を活用する新たな仕組みが必要になるという。
本書を読むと、「飲みにケーション」とか「タバコ部屋での雑談」にも、実は科学的な効用があるように思えてくる。人は誰しも無意識に他人の影響を受けて生きており、相互に影響を与え合う関係こそが、組織や社会を強くする。「アイディアの流れ」「信頼」「多様性」「レジリエンス」といった定性的な世界を、ビッグデータの技術を駆使して定量的に説明する社会物理学が、学問的な面白さと実用性を兼ね備えた興味深い分野であることが理解できる。
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ビッグデータ解析と物理学を結びつけた論理そのものが印象的。メディアラボでは様々な実験を通した発見に非常に積極的であり、こういう普遍性や根本的視点の研究こそアカデミックにやるべきだと思う。
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とある書店の理工学書コーナーに並んでいる(内容は完全に社会科学)のを見つけ購入。
MITメディアラボのペントランド教授が「アイデアの流れ」を観察しエンゲージメントや探求といった人間の行動の特徴や生産性を改善するための介入方法について論じている。
研究では分刻みで行動を観察するデバイスを用いており、これこそビッグデータの活用といえる手法。
例えば「人と人とのつながりが健康状態を改善する」という事実を、理論的に説明する方法が示されている。
また、「市場メカニズム」や「階級闘争」といった従来の社会モデルにも触れ、別な角度から社会をよりよくデザインすることについても考察しているので、「ウーン」と考えさせられました。
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人間社会の根底を流れるルールを実験や理論で解き明かす試み。
デジタルパン屑と呼ぶスマホやIOT器具を使ったデータにより人間の主張や表現ではなく実際の行動をデータとして利用し、その統計的法則を明らかにしようとする。良いアイディアあるいは人の自発的行動は人と人のコミュニケーションから生まれるものであり、それは近接性が重要となってくる。よって都市や実名で繋がるSNSが有効となってくる。
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タイトルに「物理学」という言葉が入っているが、本書で扱うのは今はやりの「ビッグ・データ」「「クラウドサービス」に関するものである。これの分野を利用した行動科学を「ソーシャル物理学」という概念で解明しようというのが、本書の趣旨である。本書を見て痛感したのは、ネットだけでは影響力を駆使するのは限界がある、ということ。ネットで影響力を駆使するには、現実社会でそれなりに影響を駆使できなければ意味がないのだ。巻末資料に小難しい数学や物理の式が掲載されているが、これらの式が理解できなくても本文は理解できるのでご安心を。それよりもこの本は、社会学・心理学・経済学などの知識がないと、著者が言いたいことは理解できないことに留意すべし。
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ちょっと面白かった。しかし自分の場合はこういう実証的、myopicな話よりはもっと土台となる考え方の方を、いや土台を揺るがすような方を知りたいかもしれないと思った。何か少しイデオロギー的に決定されているような感じがある。
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出版されてすぐ入手したのだが、結局読むのにすごく時間がかかってしまった。と言うのは、活字が小さく電車やバスなどで文字を追うことが困難であったため、隙間時間に読むことができなかったためである。読んでは戻り、戻っては読みの繰り返しで・・・・
社会科学は、人文科学よりはマシなものの科学と呼ぶのはどうだろうと以前から薄々感じていたことに少し裏付けを与えられた気がする。
で、結局これらを科学(もどき)の視点で捉えるには、サンプリングによる統計に頼らざるを得ないところがあり、ここがまた個人的にちょっとスッキリしない要因でもあった。しかし、センサー技術その他の進化でサンプリングではなく各種の全数データが緻密にとれるとなると話が大きく変わる。
経済学を下敷きとしている様なので、理解しやすく納得出来る説得力につながっているのであろう。
しかし、非常に納得ができる反面、この視点は物理学と呼んで良いのかどうかというところに引っかかりを感じることが避けられない気もする。(ほとんど同意なのだが)
物理学を「ちゃんとした科学」または「それなりの科学」と置き換えれば良いだけのことなのかも知れない。
物理学・・・・
何れにしても、世間で今ビッグデータやIOTと騒いでいる多くの人はこの存在を知らないだろうな。これに出会えた分、他の人よりこの分野で少し優位に立てる視点を持てた気もする。
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筆者によれば社会物理学とは、情報の伝播やアイデアの流れと人間の行動の関係性を定量的に評価する社会科学である。スマホやウエアラブルセンサ、ビッグデータ処理によって社会物理学の研究が可能となってきた。選挙や節電に関する実験結果からも、社会物理学は現実の社会問題を解決する手段になり得ることが分かる。今後はデータをいかに社会で共有の財産とするかが課題になるだろう。
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これからの社会でソーシャルの力は、無視出来ないことは明らかであろう。
本書は、そんなソーシャルの力を、どうやったらコントロール出来るのか?という非常に壮大なテーマとして扱った1冊である。
ただ、物理学というアプローチの本であるから、「A」という力をかけると「B」になるという要素が多い。
具体的には、ソーシャルに対してどういう力を与えると「○」になる。というテーマだけに、非常に論理が難解な部分もあり、1回読んだだけでは府に落ちるところまでは至らなかった。
現在のマーケティングでは学歴、地域、嗜好などDMPが流行っているように属性メインであるが、これからは、ソーシャルをコントロールするマーケティングに代わっていくであろう。
そのような「力学」の普及がもうすぐそこまで迫ってきていると、強く感じられた本であった。
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社会の進化をビッグデータで理解するための新しい枠組み。組織内のアイデアの流れが集団的知性の高さを決める。可視化できれば改善できる。
効率的市場・神の見えざる手・合理的人間、現実は違うということが見え始めてきたと。
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難しい本だったけど、ようはビッグデータでいろいろと人間の社会行動を規定するルールを科学できるようになってきてそこからわかったこと、さらに有効活用するためにどういう制度の設備が必要なのかなどを予言してる本。面白い。残念ながら法律とかの整備にはすごく時間かかるんだろうし生きてる間には実現しない未来なんだろうななんて思ったけど。
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タイトルは気にしないでよい。ビッグデータによる社会のデザインを謳った一冊。
学術書に近く、ありきたりな結論をえるためにデータを分析したプロセスに大半を割いているが、そのプロセスのなかにビジネスにも使える示唆が多い。
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いかに良質なアイディアや集団的知性、都市が出来るのかを、ビッグデータ等をから解き明かす。こうしたサイエンスからのアプローチは非常に新鮮で知的な刺激が多く感じられた。