来て欲しくない未来
2021/01/09 10:40
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投稿者:うーよー - この投稿者のレビュー一覧を見る
大地震後の世界はエンタテイメント性の高い舞台だった筈が、日本人にとっては今やドキュメント性の高い舞台になってしまいました。それゆえか、この物語もどちらかと言えば純文学的なテイストであるように感じました。 「震災から自分を守る為には、自分で備えるしかない」とカリスマ的リーダーから言わせていたり、集団パニックから人を殺してしまったら罰せられなくても、罪の意識からは逃れられないこと、自宅に潜む兄が別れた女への恐怖感を描くことで、異常時でも狂気に身を委ねるなと、みな理性的でいて欲しい、という願いが感じられました。
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2016/01/13読了
いつもの綿矢ワールドな、女の子の共感!って感じではなかった。でも、登場人物たちの個々の生命力のようなものを感じるの作品。テーマが地震である必要はあるのかな?と思ってしまったけど。。極限状態における人間らしさ、みたいなところの描写はうまいなぁ。
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大きな地震が起きた後の都市で、大学構内に残された学生を描いている。
混沌としたなかでカリスマ的な人気を誇るリーダーが出現する。
今まで発表をされてきた綿矢作品とは異なり、少々重苦しい雰囲気があった。
しかしヒロインのこじらせぶりや、すらすら読ませてしまう文章が健在で心強い。
生きることの意義を考えさせられた1冊だった。
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偶然にも故郷で大きな地震が起こった時にこの本を読み始めた。秩序が崩壊し、極限状態にになったときの人間の姿を詳細に描き出す筆力に舌を巻きつつ、主人公の弱さを持ちつつもしたたかで、それでいてどこまでも人間臭い姿の描き方にいつもの綿矢りさを感じる。彼女の作品としては他と毛色が違いつつも、根本的なところで通じていたのはそのようなリアルさと、それから最後の、生き残ったみずみずしい生命力を感じさせるシーンの力が大きいのかもしれなかった。
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今より百年後くらいのある日、突然未曾有の大地震に襲われる。すべてのひとがパニックに陥り、平穏など一生戻ってこないのでは、とひとびとはどうしようもなく不安を抱えながら生活している。そんな混沌とした状況の中、ひとりの学生がリーダーシップを発揮し、カリスマ的存在となる。主人公の女の子も、そんなカリスマに憧れの眼差しを向けるひとり。みたいな話。
そんな一言で言うと、全く綿矢りさっぽくない。わたしが苦手なSF感もあって、読了できず。いろいろ納得できなかったし、読みにくかった。綿矢りさにこんなに引き込まれなかったのは初めて。
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近未来、大震災の後に経済が停滞したこの国に再び新たな巨大地震が襲う。大地震と学生運動をモチーフに、切ない悲しみを描く異色の青春小説。
まったく綿矢りささんっぽくない物語。常に追い込まれた状況下、お互いの不信感のみが活力源のような設定が気持ち悪い。学生運動という胡散臭さがそれに輪かける。
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綿矢りさとしては、異色の小説。描きたかった世界観はわかるが、これが本当に描きたかった事なのか、言いたい事が分かりにくい。綿矢りさは、学生を主役とした物語ばかり書いているような気もするが、既に30過ぎ。人間の深みを描くには浅く、しかし持ち前の技巧によって、細部は芸術的なほど雰囲気を感じさせる。規模の小さな日常を抜き取り、雰囲気や世界観を楽しませてくれるのが綿矢りさだとしたら、本作はテーマを広くし過ぎたか。大震災に対し、何かを残したかった。そんな感情が伝わってきた。
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未曾有の危機を持ち出して綿矢りさは人の心の何を暴きたかったか。
聴こえないカウントダウンは何をもたらし何を奪うのか。
命の危機が迫った時に人の本性が現れるなら、間違った後にだってその人の本当の心が見えるかも知れない。
リセットされた後に、新しいゲームは続く。
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詩的というより、哲学的。なんとなく、コインロッカーベイビーズを思い出してしまいました。力強い筆致で大地、そして生命のエネルギーを描いているものの、リアリティがなくて共感できなかったのがこのもやっと感の原因なのかもしれません。
最後、大地に傷つけられ、そしてなおも大地を愛する人間の美しさに、心を揺さぶられました。
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大地震の後、再び訪れる大地震が確実な中で大学に残った人たちの学生運動のようなお話
首都で起きた夏の大地震の後、政府から届くものはバーガーと炭酸アルコール飲料という状況の中、大学に備蓄された物品を開放した事をきっかけに学生運動のリーダーと呼ばれるカリスマ的存在とその周囲のいざこざ
主要な登場人物は4人
私、リーダー、私の男、マリ
綿矢りさの過去作でもありがちな女性視点での男性批評のような描写がありつつの三角四角関係
近未来なところとか、学生運動をテーマにしてるのが新機軸かな
でも、それを描いている作品は他の人もいっぱい書いてあるし、描かれているものが軽い
この要素入れる必要あった?
リーダーの言ってることの薄っぺらさ
もしかして、そんな薄っぺらな存在にすがるしかないという群衆を描写したかったのかね?
近未来に関しては、数十年前の大地震の後、原子力発電を停止した結果電力を消費しない生活になった国
そして平均寿命も100歳近いところから60~70代まで落ち込んでいる現在
治安の悪化に伴い銃規制が緩和され、一般人でも銃火器を手に入れられるほど治安が悪化
大地震の後の政府の対策の不信感から、避難勧告を無視して大学構内に居座る学生
なぜ居座るのかね?
タイトルの「大地のゲーム」は、どこに地震が起こるかbetしているようなものという事らしい
ま、東日本大震災のときも住み慣れた土地を離れることは出来ないという選択をした人もいたので、その解釈もまぁ納得できる部分もあるね
綿矢りさは歳を取るごとに相対的な評価が低くなるなぁ
「インストール」と「蹴りたい背中」は年齢以上の作品だけど、それ以降の「勝手にふるえてろ」は全く成長してないし、「ひらいて」はまぁまぁ新鮮さを感じたものの、今回の「大地のゲーム」でまた浅さを感じてしまったかな
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そういや少し前に有名になった人だ!けど忘れてたけど、読んでみたら、なんというか想像と違ってた。
ある意味で読む前のハードル上げてたから、ちょっと斜に構えて読んだかもだけど、イマイチと言えばその通りで、どこらへんで盛り上がればよいのか、誰に感情移入すれば良いのかも分からないまま終わった感じ。みんなして中途半端じゃないか!というか。
と言いつつも、大学の中の妙な高揚感とか緊張感が、それなりに面白くもあり、雑然とした感じが大学っぽいというか、60年代っぽくもあり。
そういうゴチャゴチャした話だったわけですよ。
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近未来の日本。未曾有の大地震が起こり、大きな被害を受けたのち、さらにまた同規模かそれ以上の大地震が一年以内に起こると警告されている時代。大地震以来、被災地の大学内で暮らす学生たちのひとりである女性の主人公と、その混乱に乗じて頭角を現してきたリーダーと呼ばれる男性の学生。リーダーは彼独自の思想をもって学生らを魅了していく。主人公もいつしか、その一派に属するようになっている。
90%の確率で訪れるとされる二度目の大地震に怯えながら暮らす学生たちは、まず一度目の地震と、それに派生したある事件などによって、大きなカルチャーショックを受け、生き方が危ういほうへと変容している。それでも行われる学祭に向け、リーダーは渾身の演説を段取りながら、自らの台頭を目論んでいる。破局へ向けた残酷な猶予期間に蝕まれながら、主人公を含め、半壊したような生活と精神性をなんとか保ちつつ、それぞれがそれぞれの極限の生のなかにいる様子を読むような小説でした。
以下、ネタバレがあります。ご注意を。
学生たちは早い話、制御がきかなくなってきているのです。大学生という年代の人たちは、子どもでもないし、大人としてもまだまだ経験が足りないのだけれど、頭は回るわけです。浅薄だったり、考える範囲が狭かったりしながらも、それでも固定観念や先入観がないぶん、大人たち以上にすぐれた新しい考え方や発見が出来たりもしますし、高い「安定性」よりもアンバランスな「突破力」を持っていると考えたほうがしっくりきたりします。
そんな年代の彼らに襲いかかった大地震。その災厄によって、かれらは身体や環境、生活などとともに、心までも根本から揺さぶられている。幼さだってまだまだ色濃く残る彼らに、その衝撃が背中を押すことで、自暴自棄のような行動と衝動を発現させている。そこには、先ほども書いたように、自分たちの頭が回ることからくる過信も大きくあるでしょう。そんな賢い自分たちが考えても答えが出ない状況への絶望。それは人生の経験値が低いからこその早計な絶望でもあるのですが、そこはまあ若者に「ダメ」と叱るのは酷というものかもしれない。また、その自暴自棄の出口はなにか、と考えると、変化や変革なのかなという気がします。スマートに、理性的に変化や変革を創っていくということが、傑物でもなければ若者にはうまくできないのかもしれない。そこを、リーダーは成そうとしているようなところがあります。
リーダーの説く持論は、自助と共助ですが、まあ僕もそこは頷ける部類の話でした。それ以上に、ミステリアスで蠱惑的なのに可憐な感じのあるキャラクター・マリがその少ないセリフの中で発した言葉のほうに、共感するところがありました。
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「受け止めがたい辛いことは、生きているうちに何度か起こるよ。でも起っちゃったあと、どれだけ元の自分を保てるかで、初めてその人間の本当の資質が見えてくるんじゃないの。なにも起こらなかったときは良い人なんて情報は、なんの役にも立たないよ」(p107)
「強くなんかない。でも予想外の不幸を、免罪符のように振り回す人間には、ちゃんと自分の考えを言いたくなる」(p108)
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そんなマリは、リーダーとくっつくのですが、主人公の世界からは彼らの世界にはほんのちょっとしか入ることはできない。この小説の文学的深みを握るのは、見方によってはリーダーとマリにあるというように考えられるのですが、そこは住まう世界が違う主人公のほうに、この物語の軸はあるのでした。ただ、それでこそ、よりマスに近い物語になったのだと思います。
小説を読みながら、その技術的な部分というか、緩急や抑揚みたいなところを気にしていました。激しさのあるシーケンスを多用する試みがなされているなあ、なんて思いました。表現の幅を広げるための想像力の使い方だと僕は考えますが、僕自身もそういうところを試したいと考えているところなので、なるほどなあ、とある部分ではちょっと冷静な自分としてこの小説を読みました。それでも、最終章のカタストロフィーの部分は引き込まれてしまって、分析だとかよりも物語自体の味わいのほうに気を取られてしまいました。ただまあ、それはそれで、真っ当な「物語の享受」なのだと思います。
震災の記憶が生々しい方にはつらいかもしれませんが、そうじゃなければ、読むことで読者が自分なりに物語から引き出すことができるなにかが宿っている小説だといえる作品でした。
久しぶりの綿矢りささんの作品でしたが、またそう遠くないうちに別の作品を手に取ろうという気になりました。
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p112
ふうん、とますます彼が覗きこみ、頭を寄せると、どきどきしすぎてほとんど苦痛だった。
p116
拒絶されて激しく怒る切なげな彼を、一度でいいから見てみたい。
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「こういう作家だったっけ?」が読み始めの素直な第一印象(良い意味で!)。生きるとはどういうことか‥‥新しい気づきをいただきました。