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衆議院議員をされている小林興起氏が最近書かれた本です、よく行っている本屋さんの新刊コーナーで紹介されていたので手に取ってみました。
彼は自分の信条を貫くために、自民党、民主党を渡り歩き、消費税増税法案の議決後に民主党も離れて新たな活動を始めるようです。この本では党の公認を得られないことはどれほど金銭的に苦しいことなのか、また党に所属していても、党が決めたことに反論することはいかに大変なことであるかが書かれています。
このようになった原因は、中選挙区制を現在の小選挙区制に変えてしまったことにも一因があるようです。10年間勤務すると議員年金がもらえるのでそれを目標にしている議員が多いように見える中で、小林氏の姿勢には尊敬すべき点が多くありました。
この本で初めて米韓FTAで問題となっている毒素条項を知りました、これが提案されてきたTPPにも含まれているのですね。とんでもない内容(p221)に驚きました。確かにこれが実現されれば、アメリカの景気は良くなると思いましたが。アメリカの戦略には脱帽ですね。
以下は気になったポイントです。
・消費税の怖さは、景気をさらに冷え込ませることにある、アメリカではフーバー大統領時代にデフレによる減収を消費税で補って、GDPが半分になって大変なことになった(p22)
・消費税法案では、2014.4には3→8%、2015.10には10%にする予定、これにより中小企業が壊滅的な打撃を受けるのは目に見えている、所得税・法人税は落ち込むだろう(p34)
・輸出が売り上げの多くを占めるような大企業は消費税をたいして負担していない、それどころか国内で仕入れた物やサービスにかかっている消費税を還付(輸出戻し税)されている(p38)
・輸出企業の還付金総額は消費税収入の28%の3.3兆円にのぼる(p39)
・郵政民営化法案は、衆議院では、賛成233、反対228で可決された、自民党で反対票を投じた議員は37人、100人の議員が集まれば80人はいた反対派は採決にあたっては実行されなかった(p53)
・議員にとって自分が所属する党の公認が得られないことは、強い地盤がある人以外は「殺すぞ」と言われるのと同じ(p56)
・三角合併は2007.5に施行されたが、問題が顕在化しないのは、サブプライムローン問題が2008.9に発生し、更に円高が続いていることが大きい(p61)
・衆議院の解散には閣僚の署名が必要だが、署名拒否した島村農水大臣を罷免して解散した(p64)
・日本の政治を迷走させている一番の原因が、小選挙区比例代表並立制と、政党助成金である(p68)
・当時、東京都連の会長は郵政民営化に反対した八代氏、政調会長であった小林氏とともに辞任した、それまで兵庫6区から出ていた小宮山女史を東京第10区の公認候補とした(p70)
・自民党の公認候補は、各小選挙区の支部長となる、自民党は合計35人の刺客を送り、比例復活も含めて27人当選した(p71)
・二世、タレント議員以外は、地盤(支持者)・看板(知名���)・鞄(選挙資金)が必要(p73)
・選挙区から一人しか議員が当選しないので、その一人に選ばれるかで当選するかが決まる、党幹部の覚えが世kない人は公認から外され、無所属で立候補するしかない(p88)
・2005.9及び2009.8の選挙では、自民党・民主党が、全体で4割しか得票していないのに、7割の議席を獲得した(p92)
・政治家個人への献金を禁止するとともに、政党助成金を導入したことで党独裁を容易にした、国会議員5人以上いるか得票率が2%ないと助成金の交付はない。2012年の交付金は民主党:165、自民党:101、公明党:22億円、新党きずな以下は1-2億円程度(p93)
・国会議員一人当たりでは、4000-5000万円だが、政党助成金の半分は交付を受ける政党の議員数で按分、あとは得票数で按分される(p95)
・鳩山首相の理念は素晴らしかったが、人事に過ちがあった、彼の周りには一緒に政策を実現していく人材がいなかった(p126)
・無認可共済は違法だったわけではなく、規制する法律と監督する役所がなかったから(p162)
・日本郵政グループの2011年度の税金(法人・住民・事業税)の合計は2157億円、公社時代は法人税はなかった、郵便貯金の残高は、2007の109.5兆円から、2010には45兆円に推移している(p181,182)
・アメリカが要求していた「年次改革要望書」は「日米経済調和対話」に衣替えした(p191)
・アメリカが日本にTPPで認めさせようとしている項目には、アメリカがカナダ・メキシコと締結したNAFTAにおいて彼らが拒否した項目が含まれている(p192)
・米韓FTAに含まれている毒素条項として、「投資家国家紛争解決条項」がある、韓国の政策によって韓国に投資したアメリカ企業が損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲介センターに提訴できる、これは韓国だけに適用される規定(p221)
・他の毒素条項として、ネガティブリスト・ラチェット条項(いったん規制緩和したら元に戻せない)・将来の最恵国待遇・非違反告訴(韓国がFTAに違反していなくても、韓国に投資した企業が予定通りの利益をあげられなかったら企業に代わって政府が国際機関に提訴可能)等(p221)
・城山三郎氏の書いた「官僚たちの夏」は、1966年頃の佐藤通産次官を主人公としている(p283)
2012年8月26日作成