紙の本
淡々と静かな語り口で鮮明になる孤独
2016/06/06 16:46
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投稿者:タンポポ旦那 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、シリーズ物が多かった樋口有介。シリーズも熱狂的ファンではあるが、腰巻に“原点に戻って”とあるのに一層期待してページを開いた。
確かに「風少女」の頃の雰囲気を感じさせつつも、より淡々と静かな語り口で紡がれる物語に、作家としての熟成・時間の過ごし方を感じた。柚木草平シリーズでは、なかなか得がたい感覚を味あわせてもらった。
それにしても、樋口有介という人、ストーリーも構成も一級なだけでなく、いつまでも新鮮な少女や少年を描けるうえに、年相応?の人物造形もうまいなあ。
ちなみに、今作では最終ページにちょっとしたミステリーを配して不安感を抱かせつつ、主人公・涼子の愛と孤独を浮き彫りにするラストが秀逸。
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樋口有介は中央公論だと純文学を書くのだろうか、現代的で乾燥質で、品があるんだかないんだか微妙だが、お洒落な小説。
いつも通り、諦観にまみれながらも思いやりとユーモアに溢れる主人公を、今回は女子高生が担っている。普段は中年か、大人びた青年が多いものだがら最初少し違和感があったが、徐々に愛着が沸いていき、そのうちに真打ちともいうべき助演役のオジサンの魅力にやられる。
著者が贔屓であるから読後感がよいのかもしれないが、終盤は静かで尊い哀しさが際立っている。今夜も口紅をつけているあなたは努力家だ、と孫ほど離れた少女を口説くジイサンは、しかし本当にたまらない。
4+
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すらっと読めたが、何が言いたいのがよくわからない。これから涼子は幸せになれるだろうか。生きてきたように死ぬ。自転車を洗うところが怖い。
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+++
ホテルの清掃員として働きながら夜間高校に通う涼子、16歳。家には、怪我で働けなくなった父、鬱病になった母がいて、生活保護を受けている。
ある日、クラスメイトからセレブばかりが集う「クラブ」に行かないかと誘われる。
守らねばならないものなど何もなく、家にも帰りたくない。
ちょっとだけ人生を変えてみようと足を踏み入れた「クラブ」には、小説家だという初老の男がいた。
生きることを放棄しかけている親を受け入れ、人と関わらず生きる日々を夢見てきた涼子は、自らの人生に希望を見出すことができるのだろうか――。
+++
涼子の境遇には、同情すべき点がありすぎて、その健気さには胸が痛む。もし現実にこんなことがあったとしたら、絶対に平穏ではいられないだろうとは思うし、涼子にとってはさらに苦難が待ち受けることになるだろうとは容易に想像できるが、物語のなかでは、スズコではなくリョウコのままで、心穏やかに暮らしてくれたらいいのに、と願わずにいられない。流れる空気は、薄暗く湿ったものだが、胸のなかにはあたたかな思いが満ちているように思われる。大切にすること、されることの意味を考えさせられる一冊でもある。
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哀しい愛情に満ちた小説。
表現は露骨でストレート、しかもブラック。なのに漂う品の良さ。どんな評価いただこうとも私は好きです。
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この作家にしては珍しい話。この手の暗めの話にはついていけない。
2017.1.24
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自身の辛い境遇を、嘆かず、受け入れ、
「仕方ないことは仕方ないよ
人生って 本当はなにもかも 自分の責任ではないの でも自分の責任ではない人生を 自分の責任として生きるのが人生だと思うの」と言えるスズコ。
沖縄での、心が穢れない、リョウコとしての暮らしがあまりに幸せそうで、幸せすぎて怖いくらいであろう日々が1日でも長く続くことを思わず願った。
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思っていた感じと違って衝撃だった。
衝撃なんだけど、なんでもないことのようにやり過ごしていく涼子が痛々しくて、でも読まずにいられなくて。
南馬先生もよかった。
現実に62歳と16歳は危ういけどなぜか応援したくなる二人…。ラスト、こうなるしかないか。
一気読み。
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図書館の本 読了
内容(「BOOK」データベースより)
純愛か、背徳か。ホテルの清掃員をしながら夜間高校に通う涼子は、ある日、小説家の南馬と出会う。「ヘンな人」でしかなかったその存在が、涼子の人生を静かに、そして大きく動かしていく―。青春ミステリの奇才が原点に戻って描き上げた傑作長篇。
樋口有介は好きな作家さんだったのに、放置していたら、たくさん作品がでてて、あわてて手にした1冊。
相変わらず、独特の世界観で、みんなおじさんがかっこいい。切なく、危うい終わり方だった気がする。
タイトル、なぞだわ、と思ったんですが、読んだら、そっか、とすぐわかるものでそこはちょっと安心して先を読みました。
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十代の頃読んでいたら、嫌悪感を抱いていたかもしれない。
年経た今では、南馬と一緒になれて涼子は良かったと思う。
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生活保護の両親と暮らす、夜間高校に通うすずこ
妙に普通でおとなしい性格
そのすずこが 変わっていく様を
僕が思うに純文学風に書いた1冊
惹かれつつも楽しめなかった残念
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『涼子(すずこ)』の家は生活保護を受給している。怪我で失業し家から出ない父と、鬱でパチンコ通いの母の世話をしながら、お金を貯めて家を出ることを目標にバイトをしている。そんなある日、夜間高校のクラスメートに誘われた不思議なクラブで、年配の作家だという男性と出会う。
女子高生の悲壮感の乏しい口調で語られる現実はハードだ。信じられないけど、実際にもあんなろくでもない親もいるんだろうな。確かに公金で生活するのだから、好き勝手はすべきではないとは思うが、親の犠牲にはならないようにできるとよいのだが・・・。
先生と涼子の関係については、当人同士が納得しているのなら外野がとやかく言うことではないかもしれないが、やはり60も過ぎた男性と女子高生と言うのは気持ちが悪い。
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自分とは遠い世界の話に思えたが、世の中にはきっと、こんな16歳がいるんだろうな。目を逸らしたくても、現実は確かにそこにある。淡々として、どうにも救われないような感覚がしんどかった。努力をしていないという主人公よりもさらに努力をしていないわたしの、遥かなる平凡な日々に感謝しなければならない。
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樋口有介さんの作品を読むのは初めてだったのだけど、ストーリーは衝撃的なのに、終始淡々とした空気感の不思議な小説だった。
主人公は16歳の涼子(すずこ)。昼間ホテルのベッドメイキングのアルバイトをしながら、夜は定時制高校に通っている。
涼子の父親は怪我から職を失い朝から晩まで家でダラダラと過ごし、母親は父の失職が原因で鬱病になり(と、本人が言い張っているが恐らく仮病)毎日パチンコ屋通いをしていて、涼子がほとんど家の中のことをしている。
鬱屈とした日々を送っていた涼子は、学校の友人に誘われて行ったデートクラブ様のパーティーで、60代の作家である南馬と出会う。
本来なら楽しい女子高生ライフを謳歌しているはずの年齢の涼子は、いわゆる毒親のせいで壮絶な暮らしをしているのに、悲観することなく冷静に自分の境遇を受け入れている。
だけどいつかは脱け出すことを目標にしていて、そんな時に彼女の人生をがらりと変える出会いを果たした。それが南馬という親以上に歳の離れた作家だった。
ジャンルとしてはミステリではないと思うけどそういう要素も多少あったり、変化球すぎる恋愛要素も含まれている。だからあまり多くは書けないし、胸糞悪くて気持ちも悪い物語という受け止め方もできそうな小説だけど、なんだかすごく好きだと思った。
涼子は10代のまま物語は終わるけれど、きっとこの先も彼女は、強く生きていくのだろうと想像ができた。
個人的にタイトルに惹かれて選んだのだけど、「亀」と「観覧車」は象徴的のような、そうでもないような温度感で登場する。憧れて乗った観覧車はそうでもなかった、そういうことは人生において、多く起こると考えたりした。
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読むのがしんどかった。スズコの感情や、街の様子がたらたらつづいて斜め読みになってしまった部分もある。私にはスズコがこわい。