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第1章 南極・北極に関する素朴な疑問
1-1 地図ではいつも北極が上になるように描かれているのはなぜですか?
1-2 北極と南極は地球上のどこでしょうか?
1-3 南極と北極は極地と呼ばれますが、その範囲はどこでしょうか?
1-4 陸氷と海氷はどう違うのですか?
1-5 南極と北極は同じ極地ですがなにか違いはありますか?
1-6 南極は北極よりなぜ寒いのですか?
1-7 北極と南極はどんな姿をしていて、どんな生物が棲んでいるのですか?
1-8 南極、北極にある3つの極とはなんですか?
Column コケ坊主
第2章 南極大陸と北極海に関する疑問
2-1 南極大陸は実際にはどのような大陸ですか?
2-2 南極大陸の氷床下の地形はどのようになっているのですか?
2-3 寒い南極にある火山とはどんな火山ですか?
2-4 北極海とその周辺はどのようになっているのですか?
2-5 プレートテクトニクス論から極地を見るとどうなりますか?
Column 家族との連絡
第3章 氷に関する疑問
3-1 氷の一生とはどのようなものですか?
3-2 南極氷床とはどのようなものですか?
3-3 グリーンランド氷床とはどのようなものですか?
3-4 氷床掘削とはなんですか?
3-5 氷床掘削はどのように行われてきたのですか?
3-6 氷河作用とはなんですか?
3-7 氷河地形にはどのような特徴がありますか?
3-8 氷底湖はどこにあって、どのような形をしているのですか?
Column 基地の水事情
第4章 自然現象に関する疑問
4-1 極地では太陽が沈まない季節でも寒いのはなぜですか?
4-2 南極が世界最強風帯ってホント?
4-3 ブリザードとはどれほどスゴイのですか?
4-4 オゾンホールはどのようにして発見されたのですか?
4-5 オゾンホールとはどういう現象のことですか?
4-6 オゾンホールはどのようにしてできるのですか?
4-7 オーロラはなぜあれほど色彩が豊かになるのですか?
4-8 オーロラが太陽風の痕跡と呼ばれるのはなぜですか?
4-9 極光帯とオーロラオーバルとはどういう現象ですか?
4-10 南極隕石とふつうの隕石とはなにが違うのですか?
4-11 なぜ氷床上に隕石が集まるのですか?
Column 南極観測史上の三大発見
第5章 生物に関する疑問
5-1 地球の歴史と生命現象はどうなっているのですか?
5-2 南極で見つかった恐竜の祖先とはどんな動物ですか?
5-3 南極ではほかにどのような恐竜の化石が見つかっているのですか?
5-4 北極と南極の植物相はどうなっていますか?
5-5 北極と南極の動物相はどうなっていますか?
5-6 ホッキョクグマとアザラシはどのように暮らしていますか?
5-7 南極には何種類のペンギンがいますか?
Column 南極での国政選挙
第6章 基地に関する疑問
6-1 南極観測はどうして始まったのですか?
6-2 昭和基地はいつごろ建設されたのですか?
6-3 南極条約とスバールバル条約とはどういう条約ですか?
6-4 南極研究科学委員会と国際北極科学委員会はなぜ設置されたのですか?
6-5 日本の南極の基地はどういう役割を担っていますか?
6-6 昭和基地の生活はどのようなものですか?
6-7 北極の基地はなぜないのですか?
6-8 定期船・南極観測船とはどういう船ですか?
6-9 南極が青少年の訓練の場とはどういうことですか?
6-10 南極が「政治的パラダイス」ってどういう意味ですか?
6-11 南極や北極にはどうすれば行けるのですか?
Column 南極・北極科学館
Dr.南極」の手による者だけ合って、「南極・北極」とあっても主な内容は南極に関するものであるが、両極をあわせて紹介することで、南極の凄さがより引き立っている。同じ高緯度でもこの二つ、ここまで対象的かというほど違うのだ。
方やホッキョクグマやホッキョクギツネの住処で、方や陸生哺乳類ゼロ。方や緯度80度以上でもシダ植物や顕花植物があり、方や顕花植物はわずか二種。方や有史以前から人が行き交い、方や18世紀まで存在すら知られず…。
これらの違いは、すべて方や海で、方や大陸だということに由来する。北極は北極点を中心とする面積約1400万平方kmの北極海からなり、そして南極は南極点を中心とする面積約1400万平方kmの南極大陸からなっている。なんという偶然の一致だろう。
海の方が気候がおだやかであるというのは小学生で学ぶ事実であるが、それが最も極端がなのが南北両極だというのも実に自然ではある。北極の年平均気温は-18℃、最低が-30℃。シベリアの内陸の方が寒いぐらいであるが、南極のそれは平均で-50℃、最低は-90℃に近い。ドライアイスよりも冷たくなるのだ。
その南極は、世界で最も乾いた大陸で、年間降水量は沿岸部でも200mmに満たず、内陸部ではさらに少ない。大陸全体が定義上は砂漠であるのに、地球上の淡水の実に9割がそこにある。平均標高2300mは世界最高。しかし大地は氷の下にアリ、その平均標高は-160m。なんと氷の重さで大陸全体がそれだけ沈んでしまっているのだ。
最も近い南米大陸からも1,000km離れた極絶の地は、だからこそ本書のオビにあるとおり「地球と宇宙の真実が見えてくる」場所でもある。オーロラというのはまさに天体現象だし、地表では滅多に見つからない隕石も氷のおかげでざくざく見つかる。CFC(フロン)によるオゾン層破壊が見つかったのもこの地である。
かつて南極大陸に足を踏み入れることが許されたのは、著者のような極地のプロだけだった。ほんのわずかな不注意と不用意で命を落とした人々は、スコット隊だけではない。トイレからのわずか数mの道程をブリザードにはばまれて命を落とした者さえいるのだ。しかし彼らの労苦もかいあって、今や屋内はTシャツ一枚ですごせるし、トイレも水洗。昭和基地のそれにはウォシュレットまで装備しているそうだ。もちろんインターネットもある。
20世紀中は「極地のプロのみ入れよ」と著書で主張していた著者も、これらの設備の完備と「素人のための南極観光ルール」がほぼ確立されたことをもって、本書では「ルールを守れる人であれば誰でも行ってみるべし」と主張を変えている。本書の最終節がまさにそれにあてられている。
そんな南極大陸は、人類最後の秘宝と呼ぶにふさわしい。いや、地球の気候の要石である以上、地���生物にとっても秘宝である。この地がどの国にも属していないのは、科学技術を持たぬ人類など寄せ付けぬ気候と文明圏から最も離れた立地条件を勘案しても、なお奇跡と呼ぶにふさわしい。
いや、人類の叡智か。
オーストラリア大陸よりずっと大きな南極大陸が地下資源の宝庫であることは間違いない。実際石炭も石油も見つかっている。しかし今のところ人類はあえてこれらに全く手をつけず、誰のものでもないことを選んだ。南極は、地政学的にも白い大陸なのだ。
今後も白いままでいることを願わずにはいられない。
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著者は昭和41年の第八次南極観測隊員で地震や火山噴火予知の研究者(極地研の名誉教授)。
南極は陸,北極は海であるため,両者は同じ局地とはいえ対照的。もちろんどちらも寒いが,南極の方がずっと寒い。北極海の海水は-1.9℃と高いのに,南極は大陸で分厚い氷床に覆われているから。これは巨大な冷源になり,地球全体の気候にも影響を及ぼしている。
南極では地表より上空の気温が高いために,強烈な風も吹く。そんな厳しい気候のために,南極には生物が極めて少ない。ペンギンは南極海を棲息地にしているのであって,陸地だけでは生きられない。南極には木はなく,草も二種類。あとは苔とか。北極圏にはシダ植物や顕花植物が豊富。植物があれば草食動物がいて,さらに肉食動物もいる。北極にはカリブー(家畜化するとトナカイ),アザラシ,シロクマなどの大型哺乳類がいるが,南極にはダニとかトビムシしかいない。人間も,北極ではイヌイットやラップなど千年以上も前から住んでいたが,南極はずっと無人だった。
とはいえ南極が重要でないわけではなく,様々な観測・研究がなされている。氷床コアから地球が経験した過去何万年間の気候変動がわかるし,「超高層物理学(オーロラ研究)」も盛ん。著者は三大発見としてオゾンホール,南極隕石,氷底湖を挙げている。
氷底湖とは,分厚い氷床の下にある巨大な水たまり。ロシアのボストーク基地の下に初めて発見された。未知の生物がいるかもしれない。氷床は年間十メートルほど動いていて,南極点に旗を立ててもずれていってしまうので毎年新しいのを立てる。地盤の地形によって流れが速くなると氷流→氷河となる。氷床はグリーンランドにもある。氷床が流れてそのまま海に浮かんだのが棚氷。南極のロス棚氷はフランスと同じ面積!百年も前に日本人として初めて南極を探検した白瀬は,一片の岩石も持ち帰れず悔しい思いをしたが,ロス棚氷を出られなかったので無理もなかった。
南極で恐竜の化石が見つかっているのは意外。南極大陸は昔から南極にあったのではなく,ゴンドワナ大陸の一部で,中緯度にあった。それが分裂して南下し,五千万年前くらいに氷の大陸になったらしい。
南極基地の話もあった。これは去年だったかに読んだ「南極料理人」シリーズでもっと詳しく面白く紹介されていた。五十年以上も連綿と続いているのはすごい。その間に基地の居住性,通信環境は格段の進歩を遂げた。
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読書マラソン感想カードより:
赤道から極域に行くにつれて、北半球では陸の割合が増加し、70°以下でいきなり陸の割合が減少、南極ではその真逆だというのはちょっと不思議だと思った。プラネタリウムでオーロラを見ることができる科学館があるらしいので行ってみたい!
さめさん
所蔵情報:
品川図書館 402.9/Ka37