紙の本
村山聖をとりまく人たちの優しさに打たれた
2002/08/24 13:53
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菅野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もちろん村山聖を主人公に据えているのだから彼を魅力的に描くのは当然なのだが、そんなことを割り引いても、彼の生き様の凄まじさにページを繰る指にも力が入り、集中して一気に読んでしまった。
読者の立場では、この小説が夭逝した棋士の話であることは分かっていたので、彼が死んでしまうことなどあらかじめ分かっていたのに、彼らをとりまく家族や師匠、友人、ライバルたちがそうであったろう悲しみの何分の一かを読後に感じてしまうのだった。
村山はヘンなヤツである。汚かったり、臭かったりもしたのだろう。感情の起伏も矯しかったのだろう。ワガママで頑固だったのだろう。しかし、そんな欠点ともいえない部分をも笑い話にできてしまうぐらいに魅力的な人物だったに違いない。将棋に対する真摯さがライバルたちを、彼の他人には一見分かりにくい優しさに家族も師匠も友人たちを魅入らせていたのだろう。そして、著者もその一人であったのだと納得した。
哀しいと思ったことがある。そんな彼の生き様も時代の流れとともに忘れ去られていくのだろうな、と思うと、今の大量生産、大量消費の時代が疎ましい。
紙の本
一度だけ彼を見た
2002/07/21 18:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
村山聖(さとし)。将棋界の最高峰であるA級に在籍したまま亡くなった。この物語は「わずか二九歳で他界した稀有な天才棋士村山聖の青春の物語である」。将棋をまったく知らない僕でさえ、村山の短い生涯に感動した。それは、云ってみれば青春という言葉が持っている、恥ずかしいほどの純粋さに胸が震えたといえる。
村山は幼い頃に大病を患い、以後闘病生活を余儀なくされた。その入院時代に将棋を覚えた。そして、名人になるのだという、そのことだけを支えに生き急いだ。目標に向かってひたすらになることこそ青春時代の特権であるとしたら、村山の生涯はそのことだけについやされたといえる。しかし、彼が仕合わせだったというのは生き残った者たちの驕りだろう。なぜなら、村山自身がもっともっと生きつづけることを願ったはずだから。
平成一〇年の夏、彼はその生涯を閉じるのだが、僕は多分たった一度その姿を見ているかもしれない。NHKの将棋番組でぷっくらと太った棋士の姿。あれが村山だったに違いない。それは僕が見た、たった一度の彼だった。
電子書籍
盤上の旅人
2022/03/23 22:47
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
命をかけて将棋を指す、村山聖の生きざまが壮絶です。「将棋の世界は深い海」という言葉を信じるなら、今でも何処かを漂っていることでしょう。
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「知ってるつもり?!」でその存在を初めて知った異形の天才棋士・村山聖。竹本健治の牧場智久シリーズに登場する桃井雅美は彼がモデルだと判明し、もっと詳しく調べようと思い購入。最後の数ページは涙で視界がぼやけてしまいまともに読めなかった。
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これはかなりの良書でした。まぢ泣ける。色々考えるさせられた。生き方についてね!幼いときから難病を患いながらも必死に夢に向かってがんばってる様、死が近いとわかっても諦めずに将棋を指す様は感動の嵐でした。
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小説の内容は勿論面白かったけど、残された棋譜を辿る作業に没頭してしまった。
高校の全国大会に行ったとき(確か奈良大会)、小説にも登場する広島の先生がいらっしゃっていて、涙を流しながら彼のことを話していた。そんなことも思い出したりして、泣いた。
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村山聖、享年29歳。思い病気を抱えながら執念で将棋盤の前に座り続けた怪童の短くも純真な一生を描いたノンフィクション。幼い頃から難病におかされ、腎臓病、癌も発病しながらも聖は名人を夢見て将棋をさし続ける。それを支える家族や師匠、仲間たち。短くも濃い、壮絶な聖の一生です。//名人への執念には圧巻されます。私が唯一読めたノンフィクション。読み始めたらとまりません。村山聖の勢いに流されてしまう感じがします。
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平成10年に1人の天才棋士がこの世を去った。
彼の名は村山聖。享年29歳。
小さい頃からネフローゼという難病に苦しめられるも、
将棋の名人を目指して闘う日々を過ごされました。
凄まじい台詞が多いです。
たとえば、
「20歳になれて、嬉しいんです。
20歳になれるなんて思って
思っていませんでしたから。」
などです。
彼の生き方そのものが、
いわば最高の棋譜だったんじゃないか、と思います。
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ここまで強い人を、やっぱり知らない。若くして夭折した彼が、最後まで捧げられるものがあったことがとても羨ましかった。師匠や家族の絆が温かかった。何でもない文で泣いたのは久々だった。
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難病を抱えながらも、最期まで輝ききった天才棋士の鬼気迫る生き様を、私的な想いを多分に込めながら、優しい目線で描ききったノンフィクションの大傑作。好きですっ!
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村山聖という人そのものが伝説。ただ名人になるためだけに命を燃やしたその半生、涙なくして読めましょうか。あまりにも稀有な将棋の才能と脆すぎる体のアンバランス。今でも目に浮かぶ、スライムベホマズンのような愛嬌のあるお顔。
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ゲーム全般に、弱い。オセロしかり、テトリスもぷよぷよも、七ならべも駄目だ。
もってのほかの部類に入るのが、麻雀と囲碁と、それから将棋。けれど、この手の勝負に打ち込む人々のドラマを見るのは好きなのだ。永遠に手の届かない世界だと思うからだろうか。
病魔に侵されながら、ただひたすらに将棋を愛し、将棋に賭けた短い人生の、光芒が書き留められている。
涙が出る。その厳しさに、その美しさに。
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大崎善生 著 大崎善生のノンフィクション第二段。短い生涯の全てを将棋に捧げた村山聖の壮絶な悲しい人生の物語。村山は幼い時にネフローゼを患い入退院を繰り返す。そんな時に父親から教えてもらった将棋が彼の人生を大きく変える。
大崎自身が実際村山に関わっていたため、その内容はリアリティに溢れた内容になっている。
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ネフローゼ関連の物語を書くために参考に読もうと思ったノンフィクション。身近にネフローゼを持つ人がいる立場にとっては、読んでいて辛いものがある。だからこそ、そんな病気を持つ中でここまでのことを出来る彼に感服してしまう。将棋のことを知らなくても読めるのが良い。
3月のライオンが好きな人は必読。二階堂のモデルになった方。
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いま、私のこの歳で、この世を去った村山聖。
ネフローゼと将棋と、天秤にはかれるものではないのだけれど、でも聖にとって将棋に勝るものは、なんにもなかったんだ。
知らなかった、こんな人がいたなんて。
当時の羽生はあれほどまでに印象に残っているのに、
知らなかった。
悔やまれる。
将棋なんてこれっぽっちもわかんないけれど、
その世界で生きることの壮絶さは、聖の人生を通して、痛々しいほどわかった。