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岡本綺堂の文庫初収録作品、全7編。
時代小説文庫なので、すべて時代劇かと思っていたが、
そうではなかった。
『青蛙堂鬼談』の愛読者ゆえ、
ゾッとする怪異譚を期待していたけれども、
意外に薄味、アッサリしていた。
■うす雪(1918年)
雑誌編集長・須郷匡三の妹・貞子は女学校の教諭で、
自宅に数人の生徒を寄宿させていたが、そのうちの一人、
栗田男爵令嬢・雪子が姿を消したという。
捜索に力を貸そうとした匡三は意外な事実に行き当たった――。
携帯端末どころか固定電話すら普及率の低かった時代、
探偵ごっこも大変だったのだ(笑)。
■最後の舞台(1920年)
語り手「私」は六、七年前に一度会ったことのある女性と
偶然再会。
かつて女優志望の彼女に見込みはなさそうだから
諦めた方がいいとアドバイスした「私」だったが、
彼女はその後、ほどほどに活躍しているらしかった。
ところが……。
■姉妹(1921年)
タイトルの読みは「きょうだい」。
某男爵家に仕えていた女性「わたくし」の回想。
男爵令嬢姉妹の姉・常子について。
■眼科病院の話(1920年)
梶沢医師が近所の眼科医院で起きた一件に巻き込まれる話。
院長・津幡の女性関係と、
それに付け込んで悪事を目論んだ者たちについて。
■勇士伝(1924年)
天正十年四月、豊臣秀吉に攻め込まれた備中高松城。
城主・清水長左衛門宗治に仕える矢坂次郎兵衛光近は
河童と狸の助力で様々な手柄を立てたが……。
■明智左馬助(1923年)
近江国の若侍・入江小七郎十七歳が狐に取り憑かれ、
禰宜がお祓いをしようと申し出たが、
後から訪ねてきた父・長兵衛の知人・三宅弥平次が疑義を……。
■狐武者(1924年)
元弘三年、
肥後の菊池から大宰府へ向かった入道寂阿の配下、
十八歳の若侍・真木小次郎重治の記憶。
彼は父が母と結婚する前に契った狐の化身に
見守られ続けていた。