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アメリカ帰りの富豪に依頼された人探しのために、金田一耕助は久しぶりに岡山県へ行く。そこで磯川警部と旧交を暖めたのも束の間、警部の話から探していた人物が怪死したらしいことを知る。
こういった物語が、上巻にあるような恐ろしく謎めいた言葉の書き出しで始まる。
こういう、今から恐ろしい物語が始まるよ、と自然に読者を横溝正史の世界に引きずりこむ盛り上げの上手さが横溝正史作品の魅力だと思う。
横溝正史の作品には「平家物語」や平家の落人といったものがよくあり、岡山県と平家は深く繋がっているのだなと感じる。「平家物語」も読むと更に愉しめるのだろうが、ちょっと読めそうにない。
この作品では、蒸発という出来事が頻発する。
蒸発という表現に時代を感じる。今なら失踪というところだが、昭和の時代では確かに蒸発とよく表現された。
こぼした湯が蒸発して姿を消す様と、人がある時忽然と姿を消す様が似ているために使われたのだと思うが、これも死語になるのだろうか。
また、シャム双生児という言葉も出てくる。
腰の部分で結合した双子。こういう気の毒な状況で生まれた子供を、恐ろしさを高めるために使うのは現代にはそぐわない気もするが、昭和の時代は障害のあるひとを差別語を用いて悪意なく呼ぶひとは普通にいた。横溝正史の作品を読むと時代の流れを感じる。
どの作品にも共通の殺人事件がドンドン起き、大概殺されたあと金田一耕助が推理という、もっと早く解決してよとツッコミたくなるところは同じであり、洞窟を探検するところなどの冒険のあるのも横溝作品には暫しある定番の面白さだ。
この作品の魅力は、金田一耕助シリーズにおいて金田一耕助と人気を二分するのではという磯川警部について多く描かれているところだ。わたし自身が金田一耕助よりも磯川警部がお気に入りだ。
「悪魔の手毬唄」においても磯川警部の切なさが印象に残ったが、金田一耕助も磯川警部も年を取り、老いが感じられるときに「悪霊島」で綴られる内容は、本当に辛く哀しい。磯川警部ファンには、益々磯川警部が好きにならざるを得ない。
若い頃の叶わぬ恋が忘れられず、富豪となって故郷へ帰ってくる男。これが金田一耕助の依頼人なのだが、まるっきりギャツビーではないか。
犯人は誰かなと推理小説本来の愉しみは勿論あり、そこに「平家物語」が絡んだり、昭和の時代を窺ったり、磯川警部の気持ちを読んで哀しくなったりと様々に愉しめる。
最後はまた金田一耕助が真相について沈黙するというわたしには異議ありな形であるけれど、今回は愉しめたので文句なしにしたい。
最近だらけ気味だった『ひとり横溝正史フェア』であったけれど、これだよ、こういうのを待ってたよと嬉しくなる作品だった。
おかげで最後まで『ひとり横溝正史フェア』を続けられそうだ。
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金田一耕助シリーズ終盤のまさに大作でしたね!刑部島を舞台にした連続殺人事件の謎を金田一耕助が見事解明する訳ですが、事件の背景に複雑な人間関係が絡んでいるところも見事でしたし、最後のオチもなかなか秀逸でした!
ビートルズの「Let it be」を主題歌にした「鵺の鳴く夜は恐ろしい!」というCMでも話題になった映画も観てみたくなりました!
さあ残すところ壮大だった金田一耕助シリーズも「病院坂の首縊りの家」を残すのみとなりました。心して読みたいと思います。
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下巻読了。
広大な洞窟内に作られた、おぞましい“骨細工”の前での緊迫したやりとりは、謎の解明への期待も伴い、手に汗しながら読みました。
結局は、全てが明らかになるわけではなく、真犯人は“雲隠れ”してしまい、片帆が殺された理由も謎のままでした。
そして、今回は磯川警部の過去も絡んできたのですが、“彼”との関係が判明したときは、思わずグッときました。
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探偵防御力が低いと言われる金田一だが、今回はけっこう被害を防いだのではないだろうか。犯人は…まあ順当な結末。
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金田一が挑むのは、二十二年前に引き裂かれた男女の悲劇を発端に島で起こる怪奇な失踪&殺人事件。
愛し合う相手との仲を裂かれ、待望の出産も精神的ショックに見舞われ、別れた恋人の体つきに似た若者を次々と誘惑し貪る巴御寮人には同情しかけたが、激しい魔性が暴走した挙句の殺しのエグさにドン引き。でも、一途に狂える女の性に密かに共鳴するのも否定できない。
吉太郎の男の嫉妬も加わった愛憎の嵐。
成仏して下さいと言わんばかりのこの決着は彼女に一番相応しかったな。内容のおどろおどろしさに比べて幕を引くべき人が引いた最後はすっきり。
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晩年の作品と聞く。双生児と孤島、洞窟などシリーズの世界観に悉く魅了された。警部の身の上話に踏み込むなど、人間描写も氏の集大成だったのではないか...真犯人は誰であれ、残された者の純朴さと溌剌とした生命力が本シリーズの核心と次世代への望みではなかったか...
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事件が錯綜して混乱しそうだったけど、最後、ついに綺麗に回収・収束されていった!
以下ネタバレ大有りです。
横溝正史の小説はミステリーなのに、ホラー感が強いのは何故だろう、といつも思っていたのだけれど、悪霊島は特にその雰囲気や場面がそれにぴったりだった。
終わり方も、大団円とか、全ての謎が詳らかになるのではなくて、もしかしてあなたは…という問いかけで終わったり、重要人物が全てを語る前に死亡したり、しかもなぜ死んだのかは不明だったり…そういう余韻というか、ある種の座りの悪さのようなものが世界観を不気味なままにしているのかも。
ゾッとした場面…鵺野なく夜に気を付けろ…の本当の意味を知った時。簑笠が生乾きだったという証言を得た時。紅蓮堂の双子を祀ってある場面。巴御寮人の無邪気さと狂気が同じものであったと思った時。
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「横溝正史」の最後の長篇推理小説『悪霊島』を読みました。
「横溝正史」作品は2008年9月に読んだ『本陣殺人事件』以来ですね。
-----story-------------
昭和42年。
「金田一耕助」は、瀬戸内海に浮かぶ刑部(おさかべ)島に再開発計画を持ち込んでいる島出身の億万長者「越智竜平」の依頼により人捜しをするため、島がある岡山県にやって来ていた。
しかし捜していた男は、海で瀕死の状態となって発見される。
「金田一」は友人である岡山県警の「磯川警部」から、男の最期の言葉を録音したテープを聴かされる。
そこには「あの島には恐ろしい悪霊が取り憑いている…腰と腰がくっついた双子…?の鳴く夜は気をつけろ……」という不気味なダイイング・メッセージが録音されていた……
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舞台となっている刑部(おさかべ)島は、岡山の水島沖にある島で、水島の他、倉敷や玉島、児島、井原、下津井、鷲羽山等も舞台となるし、登場人物が岡山弁を話しているので、場所が容易に想像でき、入り易い作品でした。
それにも関わらず、読んでいて、なんだか疲労感を感じる作品だったのも事実。
閉鎖された空間(本作品は島)での濃密な人間関係、
快楽を求めるが故のドロドロとした愛憎関係、
猟奇的な殺人事件、
戦中戦後のどさくさによる混乱、
等々、「横溝正史」作品の定番テーマが盛りだくさんというほど盛り込んである作品なのに、、、
なんでかなぁ… 推理要素が稀有だったことや、島の自然(洞穴や崖、谷等)や事件の背景が作り物っぽくてリアリティがないこと、それにドロドロした愛憎関係が濃すぎて、ちょっと嫌悪感を感じたのが原因かな。
映画では、シナリオが端折ってあったせいか、そこまでイヤな感じはしなかったんですけどね。
ということで、上下巻で700ページ近い作品でしたが、読後の充実感がなかったなぁ。残念。
「金田一耕助」シリーズの最後を飾る作品としては、ちょっと淋しかったですね。
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ミステリって読んでるうちに「こいつが怪しいな!」って目星をつけるじゃないですか。で、それがひっくり返されるのが楽しかったりするじゃないですか。でもこの話はそういうのがないのでそこは拍子抜けするかもしれないですね。ただ孤島のおどろおどろしい雰囲気はめちゃくちゃ好きです。
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一時期一気にシリーズを通して読んだが、唯一この悪霊島の上巻が手に入らず、下巻だけしばらく棚に積まれていた。
やっと上巻が再販されて、久々に横溝正史を読んだ。
やはり面白い。
金田一耕助シリーズは常に一定の面白さがあるが、長編ということもあり続きが気になる展開だった。
犯人はお決まりのパターンなので意外ではないが、蒸発した男たちの行方や誰の息子なのかとか色々な予想もできて面白かった。
せっかくなら犯人と竜平が話すシーンが欲しかった。裏で決着つけるのではなく。
それにしても磯川警部というか奥さんが悲しすぎる…
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面白かった。登場人物も個性豊かで特徴的で、言動が劇調で頭にみんなが動いている様子が浮かんでくる。本当に想像を刺激して、思い浮かばせるのがさすがと思う。その書き方が楽しい。
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出た!!!ショッキングな出来事が起こったと同時に気が狂ってのちにさつじんを犯す女だ!!!
数年後の磯川警部と三津木くんがどうなってるか見てみたい。幸せであって欲しい。