電子書籍
パラレルワールドもの
2018/09/14 22:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かんけつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史のIFはちょっとしたことが原因で大きな変化をもたらすこともあるかもしれない。ヒロインの決断次第で大きな歴史の変化が起こる。風が吹けば桶屋が儲かる、今ならバタフライエフェクトか。歴史の結果が変わろうが純愛は変わらないという、勝者が変わっても庶民は生きていくしかないということ。
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この方の小説を読むのは2作目です。前読んだ本の後書きに(星新一さんだったと思うのですが)この方は本のタイトルの付け方が悪い、とありました。…確かに。もっと良いタイトルあると思うんですけどね…
もし、過去のあの時違う行動を取っていたならば。今の自分は無いかも知れない。自分を取り巻く環境は変わっていたかもしれない。自分がすぐに思いつくのは大学以降からですね。もし違う大学に行っていたら。違う学部を選んでいたら。違う会社に就職したら。自分を取り巻く環境も変わっていたんだろうなあ。この本の主人公たちほどではないと思いますけれども。
最後のオチがすごく良かった!…でも自分はミッドウェー海戦の勝敗をきちんと知らなかったので軽く読み過ごし、『ん?』と思いネットで事後確認をいたしました…。恥ずかしい…。
前読んだ作品より面白かった。自分はこちらの方が好きだなあ、と思います。
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パラレルワールド・テーマの長編。
最後の1行が効いている。ただし、数ページ前に伏線あり。このパターンには見覚えがある。
乾くるみ『イニシエーションラブ』だ。
ただ、こちらの効果はSF的な眩暈であるところが異なる。
ただ、この仕掛けでは長編を支えるのには弱い。
広瀬正らしい戦前―東京の街、ラジオやテレビ、自動車…―の描写がこの作品を読むに値するものにしている。
「広瀬正君」や「カシラ」一家の登場にはニヤリ。
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<忘れもしない昭和九年九月二十日,私は映画を見に行きました。もしその日,映画を見に行かなかったら,私は歌手にならなかったでしょう。というのは,その映画が歌手の成功物語だったから,などというのではなく,映画を見終わって出たとき,ちょっとした事件が起こり,そのおかげで,私をレコード界に入れてくださった,恩人の柚木先生にめぐり会うことができたからなのです>
(本文p.14-15)
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おもしろかったです!!今まで読んだこの全集の中で一番!!
人は誰でも一度はおもうはず。あのとき違う選択をしていたら・・・。
でもそう考えるとき、選ばなかった道は今の道よりもうんとハッピーだったというのが前提なのです。
でも実際には、選ばなかった道を選んでいたら悲惨な人生になっていた可能性も大いにあるわけで・・・。
結局今の人生が自分にとってベストだと信じることがハッピーに生きる秘訣なのかもしれませんね(o^∇^o)
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もしもアノ時ああしていたら/していなかったら
周りのヒトとの関係、周りの人生も変えてしまう
という空想と現実を平行でなぞる物語
パラレルワールド
かと思いきやラスト数ページはネタバレ禁止
マイナス・ゼロとの微妙なクロスを
軽く読み流しそうになった。
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広瀬正の作品で、パラレルワールドものの傑作。重要な役どころを占める人に淡谷のり子を彷彿させる東北地方出身の女性が登場しており、そういうイメージで本を読み進めてしまいました。
戦前のテレビジョン開発の動向などはその時代を知りつくすほどよく調べていると思います。
そぷいうなかで最後の最後のどんでん返しはやはりSFだなという設定ですが、その時代に溶け込んでいくようないろいろな小道具の置き方はさすがだなと思います。
もう少し長生きして、もっとたくさんの作品を残してほしかった作家です。
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「エロス」なんて題名ですが、広瀬 正の小説に色っぽさを求めてはいけないのは、もう、学習済み(笑)
現在と、過去、それから、もう1つの過去。
もしあのとき、こちらではなくて、あちらを選択したら……。という、IFものです。
ただし、やっぱり(?)、広瀬 正なので、ものすごく地味です。そして、細かい。でも、それは、今のまでちょっと感じた、無駄な細かさというのではなくて、なかなか、活かされていたと思います。
でも、今まで読んだ「マイナス・ゼロ」、「ツィス」、「エロス」の3冊のなかでは、この本が1番おもしろかったです。
途中で、「もうひつとの過去」の方が、実は……。
というのは、わかってしまったのですが、それでも、最後までしっかりとよませる力があります。
あぁ、こっちの人が、影響していたのか……。
というのは、けっこう、最後、「やられた」という感じでした。
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「もしも…あの時…○○だったら…」ということを誰しも一度くらいは考えたことがあるだろう。とりわけ、積み重ねた人生の時間が長ければ長いだけ、「What if~」という疑問の入り込む余地は増える。それは取りも直さず、人生の岐路に立たされた経験が多いということであり、その転換点に能動的であれ受動的であれ、何らかの決定を施しながら、その人が一心に生きてきたということであるわけだ。
デビューから三十七年を迎える女流歌手・橘百合子も、そんな「What if~」の世界にふと迷い込んだ人間の一人であった。歌手生活三十七年記念リサイタルを企画する彼女は、坪川という女性記者から、自分のグラビア写真とアンケートの回答が掲載されている一冊の雑誌を受け取る。そこにはこうある。
<だれでも、自分のこれまでの生活をふり返ってみた場合、『あのとき、ああしていたら……』あるいは『あのとき、ああしなかったら……』と思うことが、いいにつけ、わるいにつけ、あるものです。あなたの場合、それはどんなことでしょう?>
十数人の歌手がそのアンケートに回答しており、橘百合子も回答もそこに載っているのである。
<忘れもしない昭和九年九月二十日、私は映画を見に行きました。もしその日、映画を見に行かなかったら、私は歌手にならなかったでしょう。というのは、その映画が歌手の成功物語だったから、などというのではなく、映画を見終わって出たとき、ちょっとした事件が起こり、そのおかげで、私をレコード界に入れてくださった、恩人の柚木先生にめぐり合うことができたからなのです>
女性記者・坪川は、橘百合子のこの回答に興味を抱き、「もし歌手にならなかったら、先生は今頃どんな人生を歩んでいたでしょう?」と百合子に問う。坪川の何気ないその一言から、橘百合子は自分の不思議な来し方を振り返り始める。彼女は若い頃、歌手としてレコード会社重役の柚木氏に見出されるその少し前、身を寄せていた叔父が市電運転手の職を失ったばかりに、叔父夫婦の家計を助ける為、ヌードモデルになる決心を固めていたところだったのだ。あの時、自分がヌードモデルになっていたら…と百合子の想像の翼は、少しづつ拡がっていく。
そして、坪川記者とひとしきり話をして自宅に着く間際、百合子が乗った車は一人の小汚い形(なり)をした中年男性を軽く撥ねてしまうのである。そのうらぶれた姿の中年男性は、橘百合子が叔父を頼り、岩手から上京して間もない頃、密かに恋心を抱いていた東京帝国大学工学部の学生・片桐慎一のなれの果てなのであった。
百合子にとってショッキングだったのは、その片桐慎一が二十代の内に失明してしていたことだった。お互いにほのかな好意を抱いていた若き頃。三十七年前の昭和九年―――。本名・赤井みつ子というごく普通の女の子が、シャンソン歌手・橘百合子として芸能界にデビューしたことで、みつ子(百合子)と慎一のささやかな交感はあっけなく終わった。みつ子(百合子)を失った片桐慎一は、ダンスホールやカフェーに頻繁に出入りするようになり、あるダンサーを巡ってのちょっとした誤解から、彼は友人の��坂に日本刀で斬り付けられる羽目に陥ったのである。斬撃は、慎一の眼に失明という致命的な後遺症を残した。中年となった片桐から、そういった過去の出来事を聞いて、百合子はますます、あの時、自分が歌手になっていなかったら、ヌードモデルの道を選んでいさえすれば、慎一が傷心からダンスホールやカフェーに入り浸ることもなく、失明もしなかったかもしれないと想像をめぐらす…。
(もしもあの時…)
百合子と慎一が、お互いのこれまでの人生をしみじみと語り合い始めた時、「もう一つの過去」という章が静かに立ち上がる。それは、みつ子(百合子)がヌードモデルになった場合の人生である。みつ子(百合子)と慎一、二人を取り巻く人々の、あり得たかもしれないもう一つの過去・もう一つの運命の歯車が、静かな音を立てて動き始める―――。
作者の広瀬正氏は「時に憑かれた作家」とも呼ばれ、タイムマシンやタイムパラドックスをテーマとした作品をいくつか上梓している。だが、本作品『エロス』は、そのタイムマシンが登場するわけでもなく、ましてやタイムパラドックスが生じるわけでもない。何か謎解きをしなければならない性質のものでもない。赤井みつ子という女性が歌手・橘百合子となって成功を収め、片桐慎一が失明して落ちぶれているという「確定した過去」と、赤井みつ子が平凡な主婦で、彼女と結婚した片桐慎一が失明もせずテレビジョン研究に打ち込んでいるという「あり得たかもしれない過去」とが、「確定している現在」とゆるやかに交錯するだけの物語である。
しかしながら、その「確定した過去」と「あり得たかもしれない過去」が、別個に存在する、交わらない、文字通りのパラレルワールドなのかというとそれも違う。「確定した過去」が「確定している現在」に影響を及ぼしながら繋がっているように、「あり得たかもしれない過去」も「確定している現在」を構成しよう、構成しようとしているのである。「あり得たかもしれない過去」は、あくまで「かもしれない」であり、百合子と慎一に、実際にそんな過去があったわけではないのに、「あり得たかもしれない過去」での出来事の数々は「確定している現在」に穏やかに浸潤し、溶け合っている。
この「確定した過去」「あり得たかもしれない過去」「確定している現在」を鮮やかに絡ませる手並みは、さすがというほかない。なおかつ『マイナス・ゼロ』でもそうだったのだが、本作品には、少年時代の広瀬氏本人が登場している。そしてさらに、その『マイナス・ゼロ』でイイ味を出していた「カシラ一家」が、この『エロス』にも顔を出しているのである。みつ子と慎一の新婚夫婦が間借りしていたのが、このカシラ一家の家で、借りていた一間は『マイナス・ゼロ』の登場人物・浜田俊夫(中河原伝蔵)が居候していた座敷。『マイナス・ゼロ』の浜田俊夫(中河原伝蔵)が出征している間だけという条件で住み込んだのが、『エロス』のみつ子と慎一という設定なのだ。広瀬氏は、自分自身の少年時代をこの『エロス』に溶け合わせ、自分が書いた別の作品をも融合させている。『エロス』という作品内で「確定した過去」と「あり得たかもしれない過去」が「確定している現在」に繋がっているだけではなく、作品外でも様々な���素が、そっとリンクしあうこの作品は、広瀬正という作家が、ただひたすらに面白い物語を考える匠(たくみ)であることを証明しているといえよう。
橘百合子と片桐慎一は、物語の最後に、ある場所へと向かっていく。その場所は、「あり得たかもしれないもう一つの過去」において、二人が果たせなかった約束に関わる地となっている。実際には存在しない「もう一つの過去」での、これも存在しない一つの約束を、百合子と慎一の二人の男女は、出会いから三十七年を経て、現実に存在する「確定している現在」で果たそうとしている。
人生というのは、たとえどういう過去を辿ってきても、必然的にそうなるように出来ているものなのだろうか。例えばパズルのピースをどういう手順で嵌め込んで行ったにせよ、最終的には素敵な絵画が完成するように。かくあれかし、と願うささやかな想いは、どんなに違う過去を経験してきても、考えられうる限りの枝分かれした別の過去を歩んできても、或いは人生の各分岐点で異なる選択をしていたとしても、最終的には叶えられるようになっているのではないか。そんなことを考えさせられたりもした。
だから、ひょっとすると(あの時、ああしていれば…)とか(何故、あんな選択をしてしまったんだろう…)とかいう風に、徒(いたずら)に悔いるようなことはしなくてもいいのかもしれない。縁のあった人や物や願いとは、どんなにまわり道をしているようでも、人生の時々に応じて出会い、絡み合い、影響し合い、成就していくに違いないのだから。悔いたり哀しんだりしなくてもいいんだよ、と広瀬氏が優しく慰めてくれるような、そんな作品だ。
タイトルの『エロス』が、どういう箇所で現れるかは実際に読んでみた上で発見して頂くとして、この物語の根底にも上品なエロティシズムが流れていることを併せて書いておきたい。
愛さずにはいられない。
触れてみたい気持ちが知らず知らず溢れてくる。
少女のような恥じらい。
相手の言動に一喜一憂したりして。
長年月を経ての再会に心の浮き立つような想いぞしつる。
歌手・橘百合子の歌声は、こののち、いよいよ円熟味を増していくことだろう。
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良かった。こういう話が好き。
選択しなかった選択肢。パラレルワールド。
どちらかが良くてどちらかが悪いとかないんだ、たぶん。
広瀬正の小説全集買っても良いかもと思えて来た。
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広瀬正のエロスを読みなおしました。もし、あのとき、二つの選択肢のうち別の選択肢を選んでいたら、運命はどうなっていたんだろう、という題材のSFでした。現在、過去、そしてもう一つの過去の3つの時間軸で昭和初期から戦争に至る暗い時代に出会った二人の物語が語られていきます。最後にちょっとしたどんでん返しがありますが、二人の生活していた二つの世界がいきいきと描かれていています。題名のエロスというのは、主人公の男性が作曲する曲の名前なのですが、片方の世界では曲が発表される前に主人公は徴兵されて帰らぬ人になってしまうのでした。いろいろあっても、いま私たちが生きている時代はいい時代なんだなあ、と考えてしまいます。
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SF的な要素やラストのインパクトが、個人的には少なめ。
その分、昭和初期の時代や人々、生活の様子がいつも以上に
鮮やかに感じられて面白かった。
その時代の人々が、何を見、何を聞き、何をし、何を感じていたか。
「時代のディティールを大切に見つめてもいいのではないか…」
という解説の言葉に納得。
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題名が題名だがちゃんとした?小説。
歌手として成功を収めた橘百合子が37年前の運命の日を振り返る。
もしもあのときもう一つの選択をしていたら・・・
「もう一つの過去」のストーリで、本当の過去では歌手にったためすぐに音信不通となってしまった片桐と再会し、恋愛、結婚生活を、昭和初期の描写を交えて進んでいく。
この昭和初期の事件や出来事、自動車、テレビジョン技術、風俗、生活環境の細かな描写がすごく、昭和初期を克明に記録しているような感じも受ける。
ただ、最後のオチがいまいちピンとこなかった。
http://booklook.jp
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大歌手・橘百合子はふとしたきっかけで自分の過去に思いを馳せる。あの時、もしも違う選択をしていたら……。
「現在」、「過去」、ありえたかもしれない「もう一つの過去」の3つの時系列を行きつ戻りつしつつ、昭和初期の風俗を細かいディテールまで綿密に描き込む筆致が素晴らしく、まさにその時代に生きているかのような感覚が味わえる。
ありがちなネタのような気もするけど、ラストのドンデン返しには見事に一本くらいましたよw。
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初めて読んだ広瀬正の作品は「マイナス・ゼロ」。
あの作品の衝撃に比べると、この作品の「驚きのラスト」はさほどではなかったかな。
しかしそういうSF的な部分は関係なく、生き生きと描かれている昭和初期の雰囲気がとても魅力的だった。
「マイナス・ゼロ」を久々に読み返したくなった。