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金の価格が6倍(米ドル表示)になる、資産運用に「金」を加えるべきです、というメッセージが込められた本です。しかし購入するのは、個人の金融資産の10%までという制限つきとなっています。
以前はこの手の本を読んでいたら、「早速、金を購入しよう!」と意気込んでいましたが、この本にも書いてあるように、金本来の価値は不変であることから、今後予想されることは、1)ドルの価値がかなり下がる、2)私達が未来永劫使えると思っている、「従来の通貨」が使われなくなる可能性がある、の様です。
昨年(2016)に、遅ればせながら日本でも、仮想通貨を通貨として認めると閣議決定されたように、今後、新しい形の通貨が登場してくることになることでしょう。その中で、金の位置づけはどのようになるのでしょうか、この本の著者が金投資を薦めつつも、全体の10%以下に抑えるべき、というところに鍵があるように思いました。
以下は気になったポイントです。
・ニューヨークのモルガン商会は、ドイツやオーストリア(金本位制を廃棄)には全く融資しなかったが、金本位制を維持したイギリスに対しては巨額の融資をした。この融資のおかげで1917年にアメリカ参戦まで持ちこたえられた(p11)
・ケインズの案(通貨制度の中で金に重要な役割を与える)は退けられて、アメリカが唱えた、ドル・金本位制が勝利して、1944-1971年まで続いた(p12)
・アメリカとユーロ圏・中国が、M1(現金+要求払い預金)をマネーサプライとして、裏付けの金を40%とする金本位制で合意したとすると、金のインプライド価格(同党の条件を織り込んだモデルによって算出された価格)は、1オンス約1万ドルとなる。M2(M1+定期性預金)、100%とした場合は5万ドルとなる(p14)
・インフレは、富める者から貧しい者に、貯蓄者から債務者に、市民から政府に富を移転する。(p18)
・1925年に自国通貨を金に対して切り下げたフランスの利益は、イギリスを犠牲に、1931年のイギリスの利益はアメリカを犠牲にして、1933年のアメリカの利益は、イギリスとフランスを犠牲にして得たもの(p19)
・金本位制が機能するには、1925年のイギリスや今日の世界のように、金が過小評価されてはならない。金が過小評価されると、中央銀行の通貨が過大評価されて、その結果はデフレとなる(p21)
・FRBのバランスシートでは、金は約110億ドルとしか計上されていない(金証券は1971年に42.2222ドルで時価評価されたのが最後=8000トン強)ので、評価益は3000億ドルとなる。これを考慮にいれるとFRBは支払い不能にならない(p39、40)
・アメリカ政府は1980年以降、公式の金の売却は殆ど行っていない(p39)
・ユーロ圏では、2013年にキプロスで、2015年にギリシアで銀行閉鎖となったので、この保険として実物の金をもっておくべき(p58)
・諸国の影の金本位制を評価する最善の方法は、金の対GDP比を使うこと。アメリカの場合は約1.7%、ロシアは約2.7%、中国は公式の金準備高は2015年7月現在、1658トンであるが、鉱山生産量や輸入統計などか��、実際のストックは4000トンに近いことがわかっている(p72)
・マイナス実質金利の世界では、金に投資することで実際にプラスのリターンを得ることができる。(p104)
・2014年から2015年にかけてギリシア、ウクライナ、シリアの金融危機、中国の株式市場の暴落にもかかわらず、金のドル価格が下落したために金投資家は狼狽した、金の価格はなぜ上昇しなかったか?ではなく、適切な問いは、金の価格はなぜもっと下落しなかったかである。石油のドル価格は同時期に70%以上下落したが、金は殆ど下がらなかった(p110)
・インフレのときもデフレのときもパフォーマンスが良い数少ない資産クラスのひとつである「金」は、最良の保険である(p113)
・金に割り当てるのは、あなたの流動資産の10%までにすべき(p118)
・2013年12月、オバマ大統領は、イランをペルシア湾岸地域の覇権国と事実上認定して、イランが原子炉と濃縮プログラムを保持することを容認した。それはイランを主要地域大国と認めたことに等しい、これをサウジアラビアは裏切りと見做した(p160)
・ロシアがイランの石油を買うことに同意した、ロシアは世界有数の石油輸出国であるが、ロシアが買うことで中国やほかの国々に輸出できる(p163)
・中国は最近、スイスと通貨スワップ協定を結んだので、人民元と引きかえに、スイスフランを入手できる。イランはロシアに石油を売り、ロシアはその石油を中国に売る。中国はロシアにスイスフランで支払うことができ、ロシアははBRICS銀行を通じてスイスフランをイランへ送金できる。この連鎖においてかけているのは「ドル」である(p165)
・現在、1933年に金の所有が違法とされるのと同じプロセスが進行している。人々は紙幣の代用となるデジタル通貨を、そのほうが便利だと思って受け入れつつある。政府がデジタル資産を接収しはじめるのは、紙幣が完全に流通しなくなったころ。そのときには現金に換える手立てはなくなっている(p183)
・非上場の金保管会社を使うことがよい、銀行は厳しい規制を受けているので、国家が簡単に接収できる(p194)
・テキサス州は、銀行システムの外側に、州の地金保管所を建設している。テキサスは州の主権と合衆国憲法修正第10条を根拠に、連邦政府の金接収の動きに抵抗するだろう(p197)
2017年2月18日作成
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いつでも頭のいい人に接することができる。これが読書の利点である。もちろん読んだだけで自分の頭がよくなることはない。大事なことは思考の構造をトレースできるところにある。自分の頭の枠組みを広げるまではいかなくとも歪めるくらいはできる。
https://sessendo.blogspot.com/2018/11/6.html
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通貨になれてしまった日常の世界を見つめるには良い書籍だった。ただ、4割、勉強不足のため頭にはいってこなかった。力不足。
信任という単一の依存リスクを認識するだけでも良い勉強になった。
GOLDから世界経済を読むことは常識。
通貨、株、国債いずれもよくわからないものの信用リスクの上に形成される価値基準とは何か?それにいままで何も疑いを持たなかった自分。
ロシア、中国、イラン等の新興国が次々とGOLDを買い漁る今の状況の中で、日本円だけもつリスクを考える必要がある。
とりあえず金のETFで積立投資を行うのが今、できる自分の最善策。