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武吉はうつむき、しばらくの間、黙った。だが、やがてその肩を揺らすと、痛快と言わんばかりの哄笑を放った。
「俺の子だなあ」
ほどなく乱世は終わる。海賊の栄華も終焉を迎えるはずだ。それを分かっていながら自家の存続に汲々として戦するなど、空しい限りだと思っていた。
なのになぜ戦うのか。
その答えを目の前の娘が持っていた。他愛(たわい)もない、限りなく浮世離れした答えだったが、武吉の心は動かされた。それどころか、その青臭い言葉にうなずいている己自身を、どこか見直すような気分になっていた。(244p)
映画でいうと、ちょうど90分経った頃の話がこの巻である。観客はここで「何か」を持って帰らないと、何のためにお金を払って二時間使ったのか、ということになってしまう。
何かとは、「何のために戦うのか」ということだ。
景は、己の現実離れした考えに、とことん嫌になる。なるほど、戦国時代の戦は、何よりも「自家存続」云うなれば「自分の利益」のためである。そのためには忠義もない。単なる情に流されてはならぬのである。
しかし、海賊とは何なのか。もともと武士ではなかった。農民でもない。彼らは自由だった。もともと自由を求めて、生きてきたのではなかったか。そんなことは、この小説には一言も書いてはいない。そして、私は武吉の気持ちが良くわかる。景の気持ちも。
次巻、和田竜による小説版映画作品、果たしてどう決着つけるのか。期待に応えてくれよな。
2016年8月読了
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3巻目はまさしく起承転結の転の巻。
本物の戦を目の当たりにした景は戦に対する憧れを打ち砕かれてしおらしくなって島の帰った。
そのままおとなしく嫁に行く……なわけないよな!
いやまあ、予想はしていたよ。
前半の景が萎れている間は海戦も睨み合いだけで、なんとも物語全体が全体に沈んでいた。
だけど、親父に戦の真実を明かされて自らの為すべきことを見出した景が走り出した瞬間から、物語は俄然熱を帯び高揚しだした。
うん、やっぱり主人公が元気じゃなきゃ面白くないよな。
なすべき事を成すために権謀術数をも使いながらそれでも真っ向勝負しに行く景の姿はもう、ワガママ娘のそれではなく、なんとも清々しい。
そしてラスト、景が一人戦いに赴いた事を知らされた海賊達の熱狂が本巻のハイライト!
そうか鬼手ってそういう事だったんだ。
なんと単純な。
でもそれ女なら誰でもいいわけじゃないと思うなあ。
まさしく景だからこそ、こぞって海賊達は助けに参戦するのだ。
景を助けに行く男達の心意気になんだかグッときてしまった。
さあ舞台は整った。
あとはド派手な対決を待つばかり。
次巻へ
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源爺が‥‥ 意気消沈した景。 本願寺に届けた門徒たちの逃れられぬ飢えを感じた時、彼女は息を吹き返す。信じる道を歩き出す。
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次、景が何をしてくれるんだろう?という続きの気になるワクワク感がサクサクと読むのを進めてくれる!単行本で4部作にしているのも、起承転結がはっきりしてていい構成だなーと素人ながら感じた。
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怒涛の第三巻。二巻終盤で心を折られ、自軍へと引き返す主人公の景。一度は安泰な道を選び、化粧もしていなかったその容姿が、大人しく綺麗な嫁になろうとしていた。しかし、男たちのそれぞれの思惑を知る中で、残された本願寺の人々のことを思い再び立ち上がる。かつて、海賊たちが鬼手と呼び、その作戦を遂行してきたが、本人は知らぬまま、一人戦地へと乗り込み、かねて親睦のあった敵陣へと勇姿を振るう。その姫君に加勢するため、男たちは向かい立つ。戦闘必至な四巻、終着点がどこになるか楽しみである。主人公の景が亡くなるというラストだけは嫌だな。
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戦の華やかさに憧れていたが戦の非情さを目の当たりにし傷心の景。戦国時代の駆け引きに翻弄される景に同情する。
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本願寺の門徒を前に様々な思惑が重なる。
どんどんタイムリミットが迫るなか、主人公が動く。最後はかなり熱い展開の中、クライマックスへ。
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第二巻で泉州海賊の活躍がメインだったところから、再び村上海賊の話に戻った。3巻まで読んでくると、たくさんいる登場人物それぞれの性格や特徴がわかってくるので、場面場面の駆け引きの様子や、行動の様子をイメージしやすくなってくる。戦国ものでも海賊の話は初めてなので、とても面白い。
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井の中の蛙が積極的に外の世界に臨む.精神的な成長を勝ち取り,大決戦に臨む.現代と異なる濃く短い一生の中で,圧縮されたドラマが展開する.
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ようやく、話が動き出したという感。
主人公の青臭さが鼻につきますが、盛り上がりを見せ始めた物語の結末が一体如何様なものとなるか。最終巻を読むのが楽しみだ。
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またまた面白くなってきたー!
歴史わかんないからほぼキャラ読みですが…
それでも充分おもしろい!
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二巻と打って変わって、視点は村上海賊に戻る。村上海賊と泉州海賊が各々の思惑をなり巡らせた結果、睨み合い状態に。その事実を知った景が門徒を想って一点して戦いに。自分の家のために戦うとはどういうことなのか、しめも武吉も悩みながら幼き子や娘の真っ直ぐさに気付かされる。結局孫市を連れて戦いに出る景に奮い立たされ、村上海賊は泉州海賊との戦いを決める。
景や武吉、景親といった村上海賊側の葛藤と男らしい決心がうまく描写されている。現代社会においてもこのままではよくないと思いながらも社会や人間関係の流れから本来の気持ちとは異なる選択をするケースが多いがそこと各々のパーソナリティが一致し、共感する。形は違えど、今も昔も人は多くの葛藤の中で決心しているのだ。ただここにおいてはその決心がいかにも海賊らしい清々しさと華やかさを持っているため、共感しながらもなんだか憧れ、熱中してしまう。この辺の描き方のうまさが和田竜の凄さなんだと思う。
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木津砦の丘戦から、瀬戸内の海上戦へ。
村上海賊の真骨頂が!
毛利家の扱いが軽い。
さあ、いよいよ一向宗の門徒を救いに。
#読了
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景が引きこもってしまったが、
物語の展開は変わらず小気味いいペースで進む。
ただ、景がまた動き出すと一気に物語のペースが上がる。
完読した時に偶然、手元に4巻も持ってよかったと
思うほどに、次がすぐに読みたくなった。
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ぐるぐると引き回されているような急展開の巻。
ごくまっとうな、人間的な考え方であるはずのことを、青くさい、理想に過ぎないと否定され、やはり女である自分は戦に出るべきではなかったのかと打ちのめされる景の姿が痛々しい。
能島に帰り、太刀も矢も捨ててしおらしく縁組を進めてくれという景・・・。
しかしまだ3巻。これで終わりではない。
海上で、男たちの葛藤だらけのにらみ合いが続く中へ、激情にかられた景がやってくる。
そのモチベーションは、自家の存続という男の理由ではない。戦わなくてもいいはずの者が戦わされているという現実に憤りを感じた、人間的な理由からだ。禁じられているはずの、女の軍船乗り。何が起こるのか・・・。
景親がかなりいい役になってきた。
それにしても家の存続がなによりも優先という、戦国時代の常識の恐ろしさよ。人を斬りつけることにためらいのない、戦が日常にあった時代の感覚の恐ろしさよ。戦を題材にしながら女が戦いの場におどり出ることで、いっそう、そういう現代との違いが浮き彫りになっている気がする。