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紙の本
そろそろ私も卒業かな、名探偵夢水清志郎の世界から。どうもはやみねが笑いを取りに来るところに共感できなくなってきた。亜衣とレーチの行動も鼻についてきた、卒業っていうか分かれ時かなって。ミステリ部分は好きでも、小説としては相変わらず児童書のままじゃね・・・
2011/07/08 19:46
4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、殆ど読むことのなくなった はやみねかおる ですが、理由は単純で、好きな『名探偵夢水清志郎事件ノート』については全部読み終わった気になっていたからです。ま、厳密にチェックしているわけではなくて雰囲気での判断。ですから、よく調べると読み落しが見つかるわけです。とはいえ、読んでみると再読、なんていうこともよくあるのですが。ちなみに、今回も装画・挿絵担当は村田四郎です。
カバー折り返しの言葉は
*
龍神殺神事件、鵺伝説、持ち帰るなの石……。
不思議の宝庫、洛名録へとバスは走る。
謎の人物「鵺」が心配だけど、
修学旅行は楽しむっきゃない!
*
カバー後ろの内容紹介は
*
虹北学園の修学旅行先が決まった。
目的地はO県T市。そこには、龍神
や鵺の伝説と不思議な石の話が残っ
ていて、楽しい旅になるはずだった。
ところが、「修学旅行を中止せよ 鵺」
という手紙が学校にとどき、なんだ
かあやしい雲行きに……。
校長の代理で同行することになった
夢水だが、修学旅行から無事に帰っ
てこれるのだろうか?
お待ちかねの、シリーズ第11作!
*
です。相変わらず、清志郎が修学旅行に紛れ込むまでの経緯は、可笑しいというよりは悪夢のようなもので、こういうゴリ押しを認めてしまう日本人て、やだなあ、と私などは思ってしまうんです。こればかりは、はやみねと私の考え方の違いでしかないのですが、同じ笑いでも、なんでJ・K・ジェロームの『ボートの三人男』みたいな、上品なユーモアにならないんだろう、人間が薄汚く見えるんだろう、って思うんです。
特に、私が嫌いなのは三つ子の長女の岩崎亜衣です。読書が好きで文芸部に所属、まではいいんですが、はっきり言って、性格がいやです。言動に裏表があって、結局は自分が可愛いだけの、ある意味、ごくあたり前の女の子。行動だけを見れば、まさに清志郎、レーチと同レベル、似た者同士なわけです。むしろ、私としては二女・真衣がかわいい。スポーツ万能で陸上部に所属。流石、運クラ、性格も明るくさっぱりしています。末っ子の美衣にしても、新聞好きは引きますが、あっけらかんとした性格で、男女のことに疎く、それも含めて一ノ瀬くんが好きになるのも当然だと思います。
亜衣同様、嫌いなのが通称レーチこと中井麗一です。亜衣の彼氏で、クラブも同じ。清志郎、亜衣と同じく自己中です。結果がよければ何をやってもいい、と考える人間で、他人の感情や迷惑を考えたことがありません。大人になれば、試験前に他人のノートを借りまくり、授業では代返を頼む大学生になること確実です。モンスターペアレント予備軍ともいえるでしょう。なぜ、こんな男に、水野千秋のような美少女が惚れるんだろう、なんて思いますが、こればかりは世によくあるパターン。ヤクザに惚れるお嬢様パターンではありますが、彼女の健気な思いこそ、中学生女子という気がします。
正直、以上のレギュラーには少しも魅力を感じません。そこで新手を紹介しましょう。まず修学旅行実行委員会委員長の、陣内仁がいます。温厚で世話好きという、女の子が手玉に取りやすい男の子です。そして、仁を思うように操るのが修学旅行実行委員会副委員長で、生徒の目付け役の玉井雅子です。陣内のガールフレンド、ということになっていますがまるで鑿の夫婦みたいではあります。
はやみねが推すキャラでありながら、私が否定したのが歌枕真一です。まくら投げ協会会長で、野球やバスケも得意で、爽やかな印象でしたが、ラストで自分の力を見せつける姿は、嫌味としかいいようがありません。こんな人間が先々、官僚となって、笑って国民を死地に追いやるといってもいいのではないでしょうか。将来のクレイマーといい、国民無視の官僚といい、どうもはやみねの理想とする人間は、私が好む人間とは正反対。いやはや、です。
未確認動物捕獲隊の隊長で、将来の夢は冒険家という川口敏弘。川口探検隊などは、UFOの矢追と同じく、2003年の時点で既に死語に近い存在で、やはり感覚のズレを感じます。そういう意味で、私が唯一気に入ったのが、虹北学園の校長先生である土屋正です。清志郎を修学旅行に参加させたあたりのいい加減さはともかく、侍のような風格のある教職ひとすじ三十四年の人間というのは、いい意味で存在感があります。
と散々、登場人物を貶しましたが、ミステリ部分は相変わらずお見事。誰が何故、というあたりも納得です。はやみねの作風には限界を感じますが、新しい読者がきちんとついて世代交代している様は、立派。作家としては、成功しているといえるでしょう。ただ、卒業していく読者も多いはずで、いいか悪いかはともかく、小学生にミステリのなんたるかを教える貴重な作家であるとだけは言えそうです。そろそろ、私は卒業しますが・・・
参考までに、もくじを写しておきます。
おもな登場人物
第一幕 修学旅行事前説明会
経過説明の一
レーチの細腕繁盛記
経過説明の二
虹北学園修学旅行実行委員会
経過説明の三
文芸部の陰謀:一ノ瀬匠くんの初体験
その他 霊子(仮名)の場合
M太郎(仮名)の場合
鵺(仮名)の場合
修学旅行のしおり
第二幕 鵺のなく夜
修学旅行初日
修学旅行二日め――前半
レーチの文学的苦悩:修学旅行スペシャル
修学旅行二日め――後半
修学旅行三日め
修学旅行反省会――鵺が笑う
ENDING――教授の修学旅行日記
あとがき
はやみねかおる作品リスト